唾液中SARS-CoV-2ウイルス量におけるマウスウォッシュの影響は?(SR&MA; BMC Infect Dis. 2023)

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新型コロナウイルス感染症に対するマウスウォッシュの効果は?

COVID-19は、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(public health emergency of international concern, PHEIC)として長期にわたって取り上げられてきました。この新型コロナウイルスは主にエアロゾルを介して近距離で伝播し、感染者は会話や咳の際に大量のエアロゾルを放出します。しかし、COVID-19パンデミック時にマウスウォッシュが効果的にウイルス伝播を減少させ、医療従事者の感染予防をサポートできるかどうかについては未解決の問題です。

そこで今回は、Cochrane Library、PubMed、Web of Science、およびEmbaseの各データベースについて、COVID-19患者の口腔内の新型コロナウイルス量に対するマウスウォッシュの効果に関する現在利用可能なランダム化比較試験(RCT)を、各データベースの開始時点から2023年1月12日まで系統的に検索し解析したメタ解析の結果をご紹介します。

COVID-19患者を対象に、治療群には洗口用のマウスウォッシュを、対照群にはプラセボまたは蒸留水を投与した試験が対象となりました。

本試験の主要転帰はCT値とウイルス量でした。オッズ比(OR)はランダム効果モデルを用いて推定されました。バイアスと異質性の影響を最小化するために、サブグループ解析と感度解析が行われました。

試験結果から明らかになったことは?

13件のRCTが組み入れられました。新型コロナウイルスのCT値に対するマウスウォッシュの介入効果を報告した研究は7件でした。

マウスウォッシュ群 vs. 対照群
新型コロナウイルスのCT値への影響SMD 0.35
(95%CI 0.21〜0.50

解析の結果、マウスウォッシュ群は対照群と比較して、新型コロナウイルスのCT値に正の影響(ウイルス量の減少と相関)を与えました[標準化平均差 SMD 0.35、95%CI 0.21〜0.50]。さらに、サブグループ解析では、対照群と比較して治療群ではマウスウォッシュ液がCT値に有意な正の効果を示しました;マウスウォッシュ液の成分としてはクロルヘキシジン[SMD 0.33、95%CI 0.10〜0.56]、ポビドンヨード[SMD 0.61、95%CI 0.23〜0.99]、過酸化水素[SMD 1.04、95%CI 0.30〜1.78]が対象となりました。

ウイルス量に対するマウスウォッシュの介入効果を報告した研究は6件で、治療群263例、対照群164例でした。解析の結果、新型コロナウイルスのウイルス量において、マウスウォッシュ液投与群と対照群の間に統計学的な差は認められませんでした[SMD -0.06、95%CI -0.18 〜 0.05]。

測定時間によるサブグループ解析では、マウスウォッシュ後30分以内のCT値[SMD 0.52、95%CI 0.31〜0.72]およびウイルス量[SMD -0.32、95%CI -0.56 〜 -0.07]において、マウスウォッシュ群と対照群との間に統計学的有意差が認められました。

コメント

COVID-19流行に対してマウスウォッシュがウイルス伝播を減少させ、他者への感染を予防できるのかについては充分に検証されていません。

さて、システマティックレビュー・メタ解析の結果、マウスウォッシュは新型コロナウイルスのウイルス量を、特にマウスウォッシュ後30分以内に減少させる効果が示されました。一方、臨床症状を軽減させたり、感染拡大を予防したりできるのかについては充分に検証されておらず明らかとなっていません。追加の検証が求められます。

とはいえ、マウスウォッシュを実施することによるデメリットは限りなく小さいと考えられ、口腔内のウイルス量を減少させることができることはメリットがデメリットを上回ると考えられます。現時点において、基本的な感染予防対策の一つとまではいえないものの、マウスウォッシュ実施を否定できるほどのエビデンスはなさそうです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ システマティックレビュー・メタ解析の結果、マウスウォッシュは新型コロナウイルスのウイルス量を、特にマウスウォッシュ後30分以内に減少させる効果があるものの、臨床症状を軽減させられるのかについては不明であり、追加の検証が求められる。

根拠となった試験の抄録

背景:COVID-19は、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(public health emergency of international concern, PHEIC)として長期にわたって取り上げられてきた。この新型コロナウイルスは主にエアロゾルを介して近距離で伝播し、感染者は会話や咳の際に大量のエアロゾルを放出する。しかし、COVID-19パンデミック時にマウスウォッシュが効果的にウイルス伝播を減少させ、医療従事者の感染予防をサポートできるかどうかについては未解決の問題がある。

方法:Cochrane Library、PubMed、Web of Science、およびEmbaseの各データベースについて、COVID-19患者の口腔内の新型コロナウイルス量に対するマウスウォッシュの効果に関する現在利用可能なランダム化比較試験(RCT)を、各データベースの開始時点から2023年1月12日まで系統的に検索した。COVID-19患者を対象に、治療群には洗口用のマウスウォッシュを、対照群にはプラセボまたは蒸留水を投与した。
主要転帰はCT値とウイルス量であった。オッズ比(OR)はランダム効果モデルを用いて推定した。バイアスと異質性の影響を最小化するために、サブグループ解析と感度解析を行った。

結果:13件のRCTが組み入れられた。新型コロナウイルスのCT値に対するマウスウォッシュの介入効果を報告した研究は7件であった。解析の結果、マウスウォッシュ群は対照群と比較して、新型コロナウイルスのCT値に正の影響を与えた[SMD 0.35、95%CI 0.21〜0.50]。さらに、サブグループ解析では、対照群と比較して治療群ではマウスウォッシュ液がCT値に有意な正の効果を示した;マウスウォッシュ液の成分としてクロルヘキシジン[SMD 0.33、95%CI 0.10〜0.56]、ポビドンヨード[SMD 0.61、95%CI 0.23〜0.99]、過酸化水素[SMD 1.04、95%CI 0.30〜1.78]とした。ウイルス量に対するマウスウォッシュの介入効果を報告した研究は6件で、治療群263例、対照群164例であった。解析の結果、新型コロナウイルスのウイルス量において、マウスウォッシュ液投与群と対照群の間に統計学的な差は認められなかった[SMD -0.06、95%CI -0.18 〜 0.05]。測定時間によるサブグループ解析では、マウスウォッシュ後30分以内のCT値[SMD 0.52、95%CI 0.31〜0.72]およびウイルス量[SMD -0.32、95%CI -0.56 〜 -0.07]において、マウスウォッシュ群と対照群との間に統計学的有意差が認められた。

結論:要約すると、マウスウォッシュは新型コロナウイルスのウイルス量を、特にマウスウォッシュ後30分以内に減少させる効果がある。クロルヘキシジン、ポビドンヨード、過酸化水素を含む洗口液はいずれもCT値に対して有意な効果を示し、ポビドンヨードを含むマウスウォッシュ液は新型コロナウイルス感染を制御し、ウイルスに関連した症状を緩和する有望な選択肢となりうる。しかし、感染制御のためのマウスウォッシュ液の使用量や使用頻度に関する研究はまだ不足しており、マウスウォッシュ液の臨床応用が制限される可能性がある。

試験登録・プロトコール登録:本試験はPROSPERO(CRD42023401961)に登録された。

キーワード:COVID-19、マウスウオッシュ、ポビドンヨード、ランダム化比較試験、ウイルス伝播

引用文献

Efficacy of mouthwash on reducing salivary SARS-CoV-2 viral load and clinical symptoms: a systematic review and meta-analysis
Mingrui Zhang et al. PMID: 37821800 PMCID: PMC10568889 DOI: 10.1186/s12879-023-08669-z
BMC Infect Dis. 2023 Oct 11;23(1):678. doi: 10.1186/s12879-023-08669-z.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37821800/

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