高齢者におけるハイパーポリファーマシー減処方は通常ケアと比較して薬剤数や老年症候群の発生を減少できますか?(RCT; JAMA Netw Open. 2023)

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ハイパーポリファーマシーを減らすことで得られる益は?

多くの処方薬(ハイパーポリファーマシー)を使用している高齢患者は、薬物有害作用のリスクが高い可能性があります。使用している薬剤数が多いことは、単なる状況に過ぎませんが、ポリファーマシーは潜在的な不適切処方(Potential Inappropriate Medicines, PIMs)の発生と正の相関関係にあることが報告されています。したがって、ハイパーポリファーマシーを是正することで、PIMs減少を介して患者予後が改善する可能性がありますが、充分に検討されていません。

そこで今回は、ハイパーポリファーマシーを減らすことを目的とした質の高い介入の有効性と安全性を検証することを目的に実施されたランダム化比較試験の結果をご紹介します。

ランダム化比較試験では、複数の既存減処方ワークフローを有する統合医療システムにおいて、10種類以上の処方薬を使用する76歳以上の患者が減処方介入または通常ケア(1:1)に割り付けられました(データ収集期間:2020年10月15日~2022年7月29日)。

本試験では、医師と薬剤師による共同薬物療法管理、標準治療の実践推奨、共同意思決定、および減処方プロトコルについて、割り付け後最大180日間、複数サイクルで電話により実施しました。

本試験の主要評価項目は、ランダム化前と比較した割り付け後181~365日の薬剤数および老年症候群(転倒、認知、尿失禁、疼痛)の有病率の変化でした。副次的評価項目は、医療サービスの利用および薬物離脱による副作用でした。

試験結果から明らかになったことは?

登録の可能性がある患者2,860例のランダム標本のうち、2,470例(86.4%)が医師の承認後も適格であり、1,237例が介入に、1,233例が通常ケアに割り付けられました。合計1,062例(85.9%)の介入患者が登録に同意しました。人口統計学的変数はバランスがとれており、2,470例の患者の年齢中央値は80歳(範囲 76~104歳)で、1,273例(51.5%)が女性でした。人種および民族に関しては、185例(7.5%)がアフリカ系米国人、234例(9.5%)がアジア系または太平洋諸島系、220例(8.9%)がヒスパニック系、1,574例(63.7%)が白人、257例(10.4%)がその他(アメリカンインディアンまたはアラスカ先住民、ネイティブハワイアン、1つ以上の人種または民族を含む)または人種または民族不明でした。

調剤された薬剤の数介入群通常ケア群
ベースライン13.6
(95%CI 13.4〜13.8)
13.6
(95%CI 13.4〜13.8)
平均変化-0.4
(95%CI -0.6 ~ -0.2
-0.4
(95%CI -0.6 ~ -0.3

追跡期間中、介入群および通常ケア群ともに、調剤された薬剤の数がわずかに減少しました(平均変化:それぞれ-0.4、95%CI -0.6 ~ -0.2および-0.4、95%CI -0.6 ~ -0.3)。

老年症候群の有病率介入群通常ケア群
ベースライン42.9%
(95%CI 40.1%〜45.7%
47.7%
(95%CI 44.9%〜50.5%
平均変化2.9
(95%CI -0.3 〜 6.1)
1.9
(95%CI -1.4 〜 5.1)

通常ケア群と介入群では、追跡終了時に老年症候群の有病率に有意な変化はなく、群間差もありませんでした(ベースラインの有病率:それぞれ47.7%、95%CI 44.9%〜50.5% vs. 42.9%、95%CI 40.1%〜45.7%;差分 1.0、95%CI -3.5 ~ 5.6、P=0.65)。

医療サービスの利用や薬物離脱の有害作用に差は認められませんでした

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ハイパーポリファーマシー、すなわち10種類以上の処方薬を使用することは、虚弱、身体的・認知的機能障害、薬物相互作用、好ましくないベネフィットとリスクのトレードオフ、医療費の増加と関連していることが報告されています(PMID: 30747997)。近年、医療システムは複数の薬物クラスのDeprescription(脱処方、減処方)を単一の介入にバンドルし始めています。しかし、研究設定、試験された介入のデザイン、およびアウトカムの定義が不均一であるため、これらのプログラムの安全性と有効性は不明です。

さて、さまざまな既存の減処方ワークフローを有する統合ケア設定によるこのランダム化臨床試験では、バンドルされたハイパーポリファーマシーの減処方介入は、調剤数の減少、老年症候群の有病率、医療サービスの利用、または有害な薬物離脱影響と関連しませんでした。

本試験の対象は10種類以上の薬剤を使用している患者でしたが、減処方に適切な薬剤を使用していると薬剤師によって確認された患者はほとんどいませんでした。これらの制限が減処方プログラムの潜在的な有益性を低減させた可能性があります。このような理由から、介入を受けた患者に限定した解析と、介入によって減処方が行われた患者(脱処方を受け入れた患者)に限定した2回目の解析が行われましたが、この解析でも介入の有益性は示されませんでした。

より統合度の低い環境およびより対象を絞った集団においては異なる結果が得られるかもしれませんが、現時点においてはハイパーポリファーマシーへの介入(医師と薬剤師による共同薬物療法管理、標準治療の実践推奨、共同意思決定、および減処方プロトコル)効果は不明です。

本試験も含め、これまでの研究結果を踏まえると、単純に薬剤の薬を減らせば解決する課題ではないようです。どのような介入、そして継続的なフォローアップが患者予後に影響するのか検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ さまざまな既存の減処方ワークフローを有する統合ケア設定によるこのランダム化臨床試験では、バンドルされたハイパーポリファーマシーの減処方介入は、調剤数の減少、老年症候群の有病率、医療サービスの利用、または有害な薬物離脱影響と関連しなかった。より統合度の低い環境およびより対象を絞った集団における追加研究が必要である。

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