腰痛/頚部痛の急性期にオピオイド鎮痛薬は有効なのか?
オピオイド鎮痛薬は急性腰痛症や頚部痛によく使用されますが、有効性を裏付けるデータは充分ではありません。
そこで今回は、急性腰痛および頚部痛に対するオピオイド鎮痛薬の適切な短期コースの有効性と安全性を検討することを目的とした三重盲検プラセボ対照ランダム化試験(OPAL試験)の結果をご紹介します。
本試験は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州シドニーのプライマリケアまたは救急部157施設のいずれかを受診し、12週間以内に少なくとも中等度の疼痛重症度の腰痛または頚部痛(またはその両方)を呈した成人(18歳以上)が対象となりました。
試験参加者は、統計学的に作成されたランダムに並べ替えられたブロックを用いて、ガイドラインで推奨されるケアとオピオイド(オキシコドン-ナロキソン、最大20mg/日のオキシコドン経口投与)の併用群、またはガイドラインで推奨されるケアと同一のプラセボ群にランダムに割り付けられ(1:1)、最長6週間投与されました。
本試験の主要アウトカムは、Brief Pain Inventoryの疼痛重症度サブスケール(10点スケール)を用いて測定した6週時点の疼痛重症度で、ランダム化後の疼痛スコアを少なくとも1つ提供した適格な参加者全員を対象に、反復測定線形混合モデルを用いて解析されました。安全性は、ランダムに割り付けられた適格な参加者全員について分析されました。
試験結果から明らかになったことは?
2016年2月29日~2022年3月10日の間に347例の参加者を募集しました(オピオイド群 174例、プラセボ群 173例)。346例中170例(49%)が女性、176例(51%)が男性でした。オピオイド群174例中33例(19%)、プラセボ群172例中25例(15%)が、追跡不能や参加者の脱落により、6週目までに試験を中止しました。オピオイド群151例、プラセボ群159例が主要解析に組み入れられました。
オピオイド群 | プラセボ群 | 調整平均差 (95%CI) | |
6週時点の平均疼痛スコア | 2.78(SE 0.20) | 2.25(SE 0.19) | 調整平均差 0.53 (-0.00〜1.07) p=0.051 |
6週時点の平均疼痛スコアは、オピオイド群2.78(SE 0.20)に対してプラセボ群2.25(0.19)でした(調整平均差 0.53、95%CI -0.00〜1.07、p=0.051)。
オピオイド群174例中61例(35%)が少なくとも1つの有害事象を報告したのに対し、プラセボ群172例中51例(30%)が報告しました(p=0.30)。オピオイド群ではより多くの人がオピオイド関連の有害事象が報告しました(例:オピオイド群174例中13例[7.5%]が便秘を報告したのに対し、プラセボ群173例中6例[3.5%]が便秘を報告した)。
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疼痛は患者QOLを低下させることから、鎮痛薬や鎮静薬などが使用されます。NSAIDsや非麻薬性鎮痛薬、ベンゾジアゼピン薬の他、強い疼痛に対してはオピオイド系鎮痛薬が使用されています。しかし、急性痛に対するエビデンスは充分でなく、検証が求められています。
さて、三重盲検ランダム化比較試験の結果、オピオイド鎮痛薬は、急性非特異的腰痛症や頚部痛に対してプラセボと差がないことから、ルーティン使用について推奨できないことが明らかとなりました。
本試験は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州シドニーにおいて、12週間以内に少なくとも中等度の疼痛重症度の腰痛または頚部痛(またはその両方)を呈した成人(18歳以上)が対象であったことから、他の国や地域、原疾患、病態ステージによっては、本試験結果を外挿できません。
少なくとも急性腰痛症や頚部痛に対しては、オピオイドのルーティン使用を推奨できない結果です。どのような患者において、オピオイド系鎮痛薬の使用を推奨できるのか、検証が求められます。
続報に期待。
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