高齢者における低用量アスピリンの使用は貧血リスクを増加させますか?(RCTの二次解析; ASPREE試験; Ann Intern Med. 2023)

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低用量アスピリンは貧血リスクを増加させるのか?

日常的な低用量アスピリンは大出血を増加させますが、鉄欠乏症や貧血に対する影響を検討した研究はほとんどありません。

そこで今回は、低用量アスピリンが貧血、ヘモグロビン、血清フェリチン濃度に及ぼす影響を検討した試験の結果をご紹介します。

本試験は、 ASPREE(ASPirin in Reducing Events in the Elderly)ランダム化比較試験の事後解析(ClinicalTrials.gov: NCT01038583)です。

対象となったのは、オーストラリアと米国のプライマリ/コミュニティケアであり、試験参加者は70歳以上の地域在住者(黒人およびヒスパニック系は65歳以上)でした。試験参加者は、1日100mgのアスピリンまたはプラセボにランダムに割り付けられました。

ヘモグロビン濃度は全参加者において毎年測定されました。フェリチンはベースライン時とランダム割り付け後3年目に大規模なサブセットで測定されました。

試験結果から明らかになったことは?

19,114例がランダムに割り付けられました。

アスピリン群
(1,000人・年)
プラセボ群
(1,000人・年)
ハザード比 HR
(95%CI)
貧血発生率51.2イベント42.9イベントHR 1.20
1.12~1.29

アスピリン群およびプラセボ群における貧血発生率は、それぞれ1,000人・年当たり51.2イベントおよび42.9イベントでした(ハザード比 1.20、95%CI 1.12~1.29)。

ヘモグロビン濃度は、プラセボ群で5年当たり3.6g/L低下し、アスピリン群では5年当たり0.6g/Lとより急減しました(CI 0.3~1.0g/L)。ベースライン時および3年目にフェリチンを測定した7,139例の参加者において、アスピリン群はプラセボ群に比べ、3年目のフェリチンレベルが45μg/L未満の有病率が高く(465例[13%] vs. 350例[9.8%])、フェリチンの全体的な減少がプラセボ群に比べ11.5%(CI 9.3%~13.7%)大きいことが示されました。

大出血がない場合のアスピリンの効果を定量化した感度分析においても同様の結果が得られました。

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低用量アスピリンは様々な疾患に使用されますが、出血リスクの増加など安全性に懸念があります。大出血までに至らずとも、出血リスクに伴う貧血のリスクが増加する可能性が考えられますが、充分に検討されていませんでした。

さて、ASPREE試験の二次解析の結果によれば、低用量アスピリンは大出血とは無関係に、健常高齢者における貧血の発生およびフェリチンの低下を増加させました。一方、ヘモグロビン濃度については、プラセボ群での低下が大きかったようです。

あくまでも相関関係が認められたに過ぎませんが、アスピリンの漫然投与について再考する機会を与えてくれる試験結果です。どのような患者でアスピリン使用による利益が最大化するのか検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 低用量アスピリンは、大出血とは無関係に、健常高齢者における貧血の発生およびフェリチンの低下を増加させた。

次のページに根拠となった論文情報を掲載しています。

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