成人骨粗鬆症患者の2型糖尿病発症リスクは骨粗鬆症治療薬で異なる?(RCT模倣研究; BMJ. 2023)

candies used in diabetes awareness campaign 06_骨代謝系
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2型糖尿病リスクにおけるデノスマブ vs. ビスホスホネート系薬

骨粗鬆症の治療法として最も広く用いられているのが抗骨吸収剤です。デノスマブは、核因子κB(eceptor activator of nuclear factor κ, RANK)リガンド(RANK ligand, RANKL)に対するヒト化モノクローナル抗体であり、骨吸収を抑制する強力な抗骨吸収薬です。

英国や米国の臨床ガイドラインでは、閉経後の女性、男性、および骨折のリスクが高いグルココルチコイドによる骨粗鬆症の患者に対してはデノスマブを推奨しています(PMID: 30907953PMID: 35378630PMID: 28585373)。

最近の研究では、RANKL/RANKシグナル伝達経路とエネルギー代謝の関連が示唆されています。
大規模な集団ベースの研究では、RANKLレベルが高いほど、5年間のフォローアップ期間中に2型糖尿病のリスクが4倍増加することと関連していることが報告されています(PMID: 15220202PMID: 23396210)。しかし、実臨床における抗骨吸収剤の使用と2型糖尿病の発症リスクとの関連性については充分に検討されていません。

そこで今回は、骨粗鬆症の成人患者における2型糖尿病のリスク低減に対する、ビスホスホネート系薬と比較したデノスマブの効果を推定することを目的に実施された英国のデータベース研究の結果をご紹介します。

本試験は電子カルテを用いたランダム化比較試験のターゲットエミュレーション(emulation of a randomized target trial)を含む集団ベースの研究であり、IQVIA Medical Research Dataの英国におけるプライマリケアデータベース(1995〜2021年)が用いられました。

本試験の対象は、骨粗鬆症でデノスマブまたはビスホスホネート経口薬を使用した45歳以上の成人でした。

本試験の主要アウトカムは、診断コードで定義される2型糖尿病の発症でした。Cox比例ハザードモデルを用いて、デノスマブと経口ビスホスホネートをas treatedアプローチ(per protocolアプローチ)で比較し、調整ハザード比と95%信頼区間を算出されました。

試験結果から明らかになったことは?

デノスマブの新規使用者4,301例を経口ビスホスホネートの使用者21,038例と傾向スコアでマッチさせ、平均2.2年間追跡調査しました。

デノスマブ使用者
(/1,000人・年)
経口ビスホスホネート使用者
(/1,000人・年)
ハザード比
(95%信頼区間)
2型糖尿病発症率5.7
(95%信頼区間 4.3~7.3
8.3
(95%信頼区間 7.4~9.2
0.68
0.52~0.89

デノスマブ使用者の2型糖尿病発症率は1,000人・年あたり5.7(95%信頼区間 4.3~7.3)、経口ビスホスホネート使用者は1,000人・年あたり8.3(7.4~9.2)でした。デノスマブの投与開始は、2型糖尿病のリスク低減と関連していました(ハザード比 0.68、95%信頼区間 0.52~0.89)。

糖尿病予備軍の参加者は、経口ビスホスホネートと比較してデノスマブの恩恵をより多く受けているようでした(ハザード比 0.54、0.35~0.82)。一方、BMI 30以上の参加者では、この恩恵は認められませんでした(0.65、0.40~1.06)。

コメント

抗骨吸収剤として抗RANKL抗体であるデノスマブにより、2型糖尿病リスクが低減する可能性が報告されていますが、充分に検討されていません。

さて、集団ベースの研究では、骨粗鬆症の成人において、デノスマブの使用は、経口ビスホスホネートの使用と比較して、2型糖尿病の発症リスクの低さと関連していました。

本試験は、英国の人口ベースコホートを用いたターゲットエミュレーション試験です。ランダム化比較試験を模倣する試験デザインではありますが、未知の交絡因子(調整しきれていない交絡因子を含む)、誤分類バイアスや適応症バイアスのリスクが残存していること、仮説生成的な結果であることからランダム化比較試験による追試が求められます。

続報に期待。

two people holding pineapple fruits against a multicolored wall

✅まとめ✅ 集団ベースの研究では、骨粗鬆症の成人において、デノスマブの使用は、経口ビスホスホネートの使用と比較して、2型糖尿病の発症リスクの低さと関連していた。

次のページに根拠となった論文情報を掲載しています。

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