閉経後女性の骨折リスクを低減するために優れている薬剤は?
骨粗鬆症に対する基本的治療薬としてビスホスホネート系薬が使用されており、診療ガイドラインにおいても第一選択薬とされています。
比較的新しい治療薬として骨同化薬であるアバロパラチドやロモソズマブが挙げられますが、閉経後女性の骨折リスク低減に対する比較効果については充分に検証されていません。ベースラインのリスク因子に応じて、抗骨粗鬆症薬治療が骨折リスクに及ぼす影響を特徴付けるために実施されたネットワークメタ解析の結果をご紹介します。
本試験のデザインはランダム化比較試験のシステマティックレビュー、ネットワークメタ解析、メタ回帰分析でした。
本試験ではMedline、Embase、Cochrane Libraryにおいて1996年1月1日から2021年11月24日までに発表された、ビスホスホネート、デノスマブ、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、副甲状腺ホルモン受容体アゴニスト、ロモソズマブの効果をプラセボまたは実薬と比較検証するランダム化対照試験が特定されました。非アジア人の閉経後女性を対象とした年齢制限のないランダム化対照試験で、介入は広い視野で骨の質を検討した試験でした。
主要アウトカムは臨床的骨折であり、副次的アウトカムは椎体骨折、非椎体骨折、股関節骨折、主要骨粗鬆症性骨折、全死因死亡、有害事象、重篤な心血管有害事象でした。
試験結果から明らかになったことは?
結果は69試験(8万人以上)に基づくものでした。臨床的骨折については、プラセボと比較してビスホスホネート系薬、副甲状腺ホルモン受容体作動薬、ロモソズマブの予防効果が示されました。
臨床的骨折のオッズ比 (95%CI) | |
ビスホスホネート系薬 vs. 副甲状腺ホルモン受容体作動薬 | オッズ比1.49 (1.12~2.00) |
デノスマブ vs. 副甲状腺ホルモン受容体作動薬 | オッズ比 1.85 (1.18~2.92) |
デノスマブ vs. ロモソズマブ | 1.56 (1.02~2.39) |
副甲状腺ホルモン受容体作動薬と比較して、ビスホスホネート系薬は臨床的骨折の減少効果が低いことが示されました(オッズ比1.49、95%信頼区間 1.12~2.00)。副甲状腺ホルモン受容体作動薬およびロモソズマブと比較して、デノスマブの臨床的骨折の減少効果は低いことが認められました(デノスマブ vs. 副甲状腺ホルモン受容体作動薬:オッズ比 1.85、1.18~2.92;デノスマブ vs. ロモソズマブ:1.56、1.02~2.39)。プラセボと比較した椎体骨折に対する全治療の効果が確認されました。
積極的治療比較では、デノスマブ、副甲状腺ホルモン受容体作動薬、ロモソズマブは、経口ビスホスホネート系薬よりも椎体骨折の予防効果が高かいことが示されました。すべての治療法の効果はベースラインのリスク指標に影響されませんでしたが、平均年齢が高くなるにつれてプラセボと比較して臨床的骨折の減少が大きくなった抗骨吸収治療を除いては、その効果は見られませんでした。
害のあるアウトカムは見られませんでした(研究数=17、β=0.98、95%信頼区間 0.96~0.99)。
効果推定値の確実性は、主に報告の限界から、すべての個別アウトカムで低〜中程度であり、名目上、バイアスと不正確さの深刻なリスクを示しました。
コメント
閉経後女性における骨粗鬆症治療薬には、多くの薬剤が使用されており、特にビスホスホネート系薬が使用されています。日本の2015年の診療ガイドラインにおいて、使用実績、治療効果、安全性、経済性の観点からビスホスホネート系薬が治療薬として推奨されていますが、エビデンスの更新が求められています。
さて、ネットワークメタ解析の結果、閉経後女性における骨折リスク低減において、副甲状腺ホルモン受容体作動薬やロモソズマブはビスホスホネート系薬やデノスマブよりも高かいことが示されました。ただし、効果推定値の確実性は低〜中程度であり、バイアスリスクと不確実性が示されています。これまでに報告されているランダム化比較試験の結果から、治療効果が副甲状腺ホルモン受容体作動薬やロモソズマブの骨折リスク低減効果が高いことは疑いようのない事実ではあります。一方で、ロモソズマブは虚血性心疾患や脳血管障害などの心血管系事象の発症可能性に注意を要します。治療コストも踏まえると優先して使用する必要性は低いと考えられます。
したがって、現時点における治療推奨薬はビスホスホネート系薬であることに変わりはなく、より骨折リスクの高い患者においては、併存疾患を踏まえ治療代替薬を選択する必要があると考えられます。
コメント