慢性腎臓病(CKD)患者における腎機能の変化パターンにより心血管リスクは異なるのか?
慢性腎臓病(CKD)患者における腎機能の縦断的な軌跡は、心血管イベントと関連していることが報告されています。しかし、CKDを有さない患者における腎機能の変化パターンは、まだ報告されていません。
そこで今回は、CKDを有さない集団における腎機能変化のパターンと、心血管アウトカムとの関連リスクを探索することを目的に実施された4件のプロスペクティブコホートのデータ解析の結果をご紹介します。本試験のデータ解析対象者は、ベースラインにCKDを有さない参加者に限定されていました。
本試験の主要アウトカムは、心筋梗塞、慢性心不全、脳卒中、心血管死亡の複合と定義される主要有害心血管イベントでした。
集団ベースの軌跡モデルを用いて潜在的なグループを特定し、Cox回帰モデルで関連リスクを分析しました。本研究の完了日は、2020年6月1日から2021年1月1日でした。
試験結果から明らかになったことは?
最終的なサンプルは、23,760例の参加者(平均年齢 58.63[9.12]歳、男性 10,618例、白人17,799例)で構成されました。20.56年の追跡期間中に、8,328例(35.05%)が主要な有害心血管イベントの初発が記録されました。
糸球体腎機能推定値の4つの軌跡とCKD進行の3つのパターンが同定されました:7.3%(n=1,734)が高~軽度のeGFRを経験(クラスI、高~軽度低下群)、51.1%(n=12,146)が正常~軽度低下を経験(クラスII、正常~軽度低下群)、33.5%(n=7,966)が正常~中程度のeGFR低下を経験(クラス III、正常~軽度低下群)、8.1%(n=1,914)が軽度低下~高度低下(クラス IV、軽度~高度低下群)。
クラスIの軌跡(高~軽度低下群)と比較して、クラスII(正常~軽度低下群)、クラスIII(正常~中等度低下群)、クラスIV(軽度~高度低下群)の主要有害心血管イベントの調整ハザード比はそれぞれ1.11(95%CI 1.01~1.23)、1.27(95%CI 1.14~1.40)および1.56(95%CI 1.38~1.77)となりました。
同様に、緩徐進行群および急速進行群の参加者は、安定群と比較して、主要な有害心血管イベントのHRが上昇しました(それぞれ1.75、95%CI 1.39〜2.21および2.19、95%CI 1.68〜2.86)。
層別解析でも所見は概ね一致していましたが、年齢と喫煙状態による有意な交互作用が検出されました。
コメント
CKDを有さない患者における腎機能の変化パターンと心血管イベントの発症リスクとの関連性については充分に検証されていません。
さて、前向きコホート研究のデータ解析の結果、CKDを有さない患者集団における腎機能の縦断的な軌跡パターンにより、心血管イベントのリスク増加と関連することが示されました。解析対象となった試験は1) the ARIC (Atherosclerosis Risk in Communities) study、2) the CHS (Cardiovascular Health Study)、3) the FHS (Framingham Heart Study)、4) the MESA (Multiethnic Study of Subclinical Atherosclerosis)でした。
本試験では、eGFRに基づく腎機能パターンが用いられており、ベースのeGFRが低くその後も傾きが緩やかな集団がreferenceに設定されています。このreference集団と比較して、eGFRの変化パターンとして傾きが大きい集団では主要有害心血管イベント(心筋梗塞、慢性心不全、脳卒中、心血管死亡の複合と定義)の発生リスク増加と関連していることが示されました。ただし、本試験はあくまでも相関関係が示されたに過ぎません。同様の傾向が認められるのかについては他の研究結果を参照する必要があります。
続報に期待。

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