降圧薬による降圧効果の差はどの程度なのか?
高血圧は、世界的に早期死亡の主要な危険因子です。高血圧患者における予後への影響は、降圧の程度に左右されることが示されています。これまで様々な薬剤クラス(薬効群)が販売されていますが、薬効群間の優劣については結論が得られていません。薬剤クラスの個別化された標的によって利益を最大化する可能性は未知数であることから、検証が求められています。
そこで今回は、血圧に対する効果を最大化するために、特定の薬剤を特定の個人にターゲティングする可能性を調査し、定量化することを目的に実施されたクロスオーバー二重盲検ランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本試験は、スウェーデンの外来研究クリニックで、心血管イベントのリスクが低いグレード1の高血圧の男女を対象としました。混合効果モデルを用いて、ある治療が他の治療よりもどの程度効果的であるかを評価し、個別化治療によって達成可能な追加の血圧低下量が推定されました。
各参加者は、4種の異なるクラスの血圧低下薬(リシノプリル[アンジオテンシン変換酵素阻害薬]、カンデサルタン[アンジオテンシン受容体遮断薬]、ヒドロクロロチアジド[チアジド系薬]、アムロジピン[カルシウムチャンネル遮断薬])の治療をランダムに受け、2クラスについては繰り返し治療することとしました。1剤の投与期間は7~9週で、6期間の治療が実施されました。
本試験の主要アウトカムは、外来日中収縮期血圧でした(各治療期間終了時に測定)。
試験結果から明らかになったことは?
ランダム化された参加者280例のうち270例(男性 54%、平均年齢 64歳)において、1,468回の治療期間(中央値 56日)が完了したことが記録されました。
異なる治療法に対する血圧反応は個人間でかなり異なり、特にリシノプリル vs. ヒドロクロロチアジド、リシノプリル vs. アムロジピン、カンデサルタン vs. ヒドロクロロチアジド、カンデサルタン vs. アムロジピンの選択で顕著でした(P<0.001)。
一方、リシノプリル vs. カンデサルタン、ヒドロクロロチアジド vs. アムロジピンについては、群間差が認められませんでした。
平均して、個別化治療は収縮期血圧をさらに4.4mmHg低下させる可能性を有していました。
コメント
降圧薬による反応性は個々人で異なります。より降圧できる薬剤を選択することで高血圧患者の転帰を向上できる可能性があります。
さて、本試験結果によれば、異なる治療法に対する血圧反応は個人間でかなり異なることが示されました。
ただし、本試験は単剤治療による降圧効果を検証したものです。したがって、二剤以上を併用した場合の効果については不明です。さらに、薬剤用量については抄録に記載されておらず、アウトカムの設定についても収縮期血圧のみです。脳卒中や死亡リスクなど、より臨床上重要なアウトカムの設定が求められます。
続報に期待。
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