低用量アスピリンは加重型妊娠高血圧腎症を予防できるのか?
妊娠はホルモンバランスの変化などにより、様々な疾患を合併することがあります。高血圧を発症する場合を妊娠高血圧症候群と呼びますが、これを放置すると母子ともに予後不良であるため、早期治療が求められます。
※妊娠中に高血圧になった場合を妊娠高血圧症候群と呼ぶ一方で、妊娠前から高血圧を有している場合、または妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠と言います。
一般的な妊娠高血圧症候群のリスク因子として、母体年齢 40歳以上、糖尿病合併妊娠、高血圧合併妊娠、腎疾患合併妊娠、甲状腺疾患の既往、多胎妊娠が挙げられます。一方、日本独自のリスク因子としては、母体年齢 35~39歳、初産婦、喫煙、女児妊娠が挙げられています(医学のあゆみ2014年)。
妊娠高血圧症候群は主に4つに分類されますが、なかでも加重型妊娠高血圧腎症(superimposed preeclampsia, SPE)は予後不良とされています。
低用量アスピリンは、実臨床における使用実績が豊富かつ安価であることから、様々なシーンに使用されています。しかし、慢性高血圧の女性が妊娠中に低用量アスピリンを使用することで、重積した子癇前症や周産期不良の確率が低下するかどうかについては充分に検証されていません。
そこで今回は、系統的レビューとメタ解析により、加重型妊娠高血圧腎症の予防戦略として低用量アスピリンが優れているか検証した試験の結果をご紹介します。
2021年9月までにEmbase、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.gov、World Health Organization International Clinical Trials Registry Platform、およびEU Clinical Trials Registerが検索されました。ヒトの研究のみを対象とし、時間や言語の制限はありませんでした。
単胎妊娠中の慢性高血圧の女性を報告したコホート研究、ケースコントロール(症例対照)研究、ランダム化比較研究が対象でした。妊娠中の低用量アスピリン使用を対照群と比較した研究が適格とされました。
試験結果から明らかになったことは?
慢性高血圧の女性2,150例を含む9件の研究(後向きコホート研究3件、ランダム化試験6件)が含まれました。
低用量アスピリンの予防投与 | 重積子癇発症のオッズ比 |
ランダム化比較試験のメタ解析結果 | オッズ比 0.83 (95%信頼区間 0.55〜1.25) (予測区間 0.27〜2.56) 確実性の低いエビデンス |
観察研究のメタ解析結果 | オッズ比 1.21 (95%信頼区間 0.78〜1.87) (予測区間 0.07〜20.80) 確実性が非常に低いエビデンス |
低用量アスピリンの予防投与は、ランダム化比較試験(オッズ比 0.83、95%信頼区間 0.55〜1.25、予測区間 0.27〜2.56、確実性の低いエビデンス)または観察研究(オッズ比 1.21、95%信頼区間 0.78〜1.87、予測区間 0.07〜20.80、確実性が非常に低いエビデンス)においても重積子癇の確率を著しく低下させることはありませんでした。
低用量アスピリンも早発性子癇のオッズを低下させず(オッズ比 1.17、95%信頼区間 0.74〜1.86)、アスピリンの早期開始は大きな影響を与えませんでした。
在胎不当過小や周産期死亡率に有意な影響はありませんでしたが、早産は有意に減少しました(オッズ比 0.63、95%信頼区間 0.45〜0.89、確実性が中程度のエビデンス)。
エビデンスの質は、異質性とバイアスのリスクによって制限されていることが示されました。
コメント
妊婦を対象とした臨床試験は限られていることから、試験結果の統合解析が求められます。
さて、システマティックレビュー・メタ解析の結果によれば、慢性高血圧の女性における低用量アスピリンの使用により、重積子癇前症、新生児の在胎不当過小、周産期死亡の確率に影響はありませんでした。一方で、早産が有意に減少しました。本試験結果をもって低用量アスピリンの使用を否定することはできないでしょう。
組み入れられた試験数は9件(慢性高血圧の女性2,150例)であり、試験数・症例数ともに限られています。また、重積子癇前症、新生児の在胎不当過小、周産期死亡の確率における95%信頼区間は広いことからも、今後の試験結果により今回とは異なる結果が得られる可能性があります。
続報に期待。
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