根拠となった試験の抄録
背景:非ビタミンK系経口抗凝固薬は、腎機能による用量調節が必要である。臨床で採用されている腎機能の推定値は、推定糸球体濾過量(eGFR)が最も一般的であるが、製品モノグラフでは、用量調節にCockcroft-Gault推定クレアチニンクリアランス(eCrCl)を使用することが推奨されている。
方法:ORBIT-AF II(Outcomes Registry for Better Informed Treatment of Atrial Fibrillation AF II)試験に登録された患者を対象とした。eGFRを用いた結果、eCrClで推奨される用量よりも低い用量(undertreatment)または高い用量(overtreatment)となった場合、投与は不適切と判断した。主要な有害心血管系および神経系イベントは、心血管死、脳卒中または全身性塞栓症、新規発症の心不全、心筋梗塞の複合であった。
結果:全コホートの8,727例のうち、eCrClとeGFRの一致は93.5%〜93.8%の患者で観察された。慢性腎臓病(CKD)患者2,184例では、eCrClとeGFRの一致率は79.9%〜80.7%であった。CKD患者では投与量の誤分類がより頻繁に見られた(リバーロキサバン使用者で41.9%、ダビガトラン使用者で5.7%、アピキサバン使用者で4.6%)。1年後、CKD群の治療不足の患者は、非ビタミンK経口抗凝固薬を適切に投与した群と比較して、主要な有害心血管系および神経系イベント(調整ハザード比 2.93、95%CI 1.08〜7.92)が著しく大きかった(P=0.03)。
結論:eGFRを用いた場合、特にCKD患者において、非ビタミンK経口抗凝固薬投与量の誤分類の有病率は高かった。CKD患者では、不適切で適応外の腎臓の処方による治療不足の可能性があり、その結果、臨床転帰が悪化する可能性がある。これらの結果から、非ビタミンK系経口抗凝固薬を投与されているすべての心房細動患者において、用量調整にeGFRではなくeCrClを使用することの重要性が浮き彫りになった。
キーワード:ORBIT-AF II、心房細動、非ビタミンK系経口抗凝固薬、腎性用量調整
引用文献
Variability in Nonvitamin K Oral Anticoagulant Dose Eligibility and Adjustment According to Renal Formulae and Clinical Outcomes in Patients With Atrial Fibrillation With and Without Chronic Kidney Disease: Insights From ORBIT-AF II
Ren Jie Robert Yao et al. PMID: 36892077 DOI: 10.1161/JAHA.122.026605
J Am Heart Assoc. 2023 Mar 21;12(6):e026605. doi: 10.1161/JAHA.122.026605. Epub 2023 Mar 9.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36892077/
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