根拠となった試験の抄録
背景:COVID-19で入院した患者は、血栓塞栓症の発生率が高い。退院後の血栓予防の延長の役割は不明である。
目的:COVID-19入院後の退院患者において、死亡および血栓塞栓性合併症の減少において、抗凝固療法がプラセボよりも優れているかどうかを明らかにすること。
試験デザイン:前向きランダム化二重盲検プラセボ対照臨床試験(ClinicalTrials.gov: NCT04650087)。
試験設定:米国の127病院のうち、2021年から2022年にかけて行われたもの。
試験参加者:COVID-19で48時間以上入院し、退院可能な18歳以上の成人(抗凝固療法が必要な者、または禁忌の者を除く)。
介入:アピキサバン2.5mgあるいはプラセボを1日2回、30日間投与する。
測定方法:有効性の主要評価項目は、30日間の死亡、動脈血栓塞栓症、静脈血栓塞栓症の複合であった。安全性の主要評価項目は、30日間の大出血および臨床的に関連性のある非大出血であった。
結果:イベント発生率が予想より低く、COVID-19による入院率が低下したため、1,217例がランダムに割り付けられた後、登録は早期に打ち切られた。年齢中央値は54歳、女性50.4%、黒人26.5%、ヒスパニック16.7%、WHO重症度スコア5以上が30.7%、静脈血栓塞栓症に関する国際医療予防登録リスク予測スコアが4以上だったのは11.0%で、主要エンドポイントの発生率はアピキサバン群2.13%(95%CI 1.14~3.62)とプラセボ群2.31%(CI 1.27~ 3.84)だった。大出血はアピキサバン投与群2例(0.4%)、プラセボ投与群1例(0.2%)に、臨床的に関連性のない大出血はアピキサバン投与群3例(0.6%)、プラセボ投与群6例(1.1%)にそれぞれ発生した。30日目までに36例(3.0%)の参加者がフォローアップ不能となり、アピキサバン参加者の8.5%、プラセボ参加者の11.9%が試験薬治療を永久的に中止した。
制限事項:SARS-CoV-2ワクチンの導入により、入院および死亡のリスクは減少した。研究参加者は、米国におけるデルタ型とオミクロン型のピークにまたがっており、病気の重症度に影響を与えた。
結論:COVID-19による入院後に退院した患者集団では、死亡または血栓塞栓症の発生率は低かった。早期登録終了のため、結果は不正確であり、本研究は結論に至らなかった。
主要な資金源 米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)。
引用文献
Effect of Thromboprophylaxis on Clinical Outcomes After COVID-19 Hospitalization
Tracy Y Wang et al. PMID: 36940444 PMCID: PMC10064277 DOI: 10.7326/M22-3350
Ann Intern Med. 2023 Mar 21;M22-3350. doi: 10.7326/M22-3350. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36940444/
コメント