根拠となった試験の抄録
試験の重要性:プレ駆出率維持型心不全(pre-HFpEF)は一般的であり、心血管危険因子の管理以外に特定の治療法はない。
目的:pre-HFpEF患者において、サクビトリル/バルサルタンとバルサルタンの比較により、容積測定心臓磁気共鳴画像法を用いて左房容積指数が減少するという仮説を検討すること。
試験デザイン、設定、参加者:Personalized Prospective Comparison of ARNI [angiotensin receptor/neprilysin inhibitor] With ARB [angiotensin-receptor blocker] in Patients With Natriuretic Peptide Elevation (PARABLE) trialは、2015年4月から2021年6月の18カ月間に実施した前向き、二重盲検、ダブルダミー、ランダム化臨床試験です。本試験は、アイルランド・ダブリンの単一の外来循環器センターで実施された。STOP-HFプログラムまたは外来循環器科クリニックの患者1,460例のうち、461例が初期基準を満たし、組み入れの打診を受けた。このうち323例がスクリーニングを受け、高血圧または糖尿病、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)20pg/mL以上またはN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド100pg/mL以上の上昇、左房容積指数28mL/㎡以上、保存駆出率50%以上の40歳以上の無症状患者250例が対象となった。
介入:アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬であるサクビトリル/バルサルタンを1日2回200mgに漸増する群と、アンジオテンシン受容体遮断薬であるバルサルタンを1日2回160mgに漸増する群に患者を割り付けた。
主要アウトカムおよび指標:最大左房容積指数と左室拡張末期容積指数、外来脈圧、N末端プロBNP、有害心血管イベント。
結果:本研究に参加した250例のうち、年齢中央値は72.0(IQR 68.0〜77.0)歳、154例(61.6%)は男性、96例(38.4%)は女性であった。ほとんどの参加者(n=245 [98.0%])が高血圧を有し、60例(24.0%)が2型糖尿病を有していた。最大左房容積指数は、両群とも充満圧(filling pressure)マーカーが減少したにもかかわらず、サクビトリル/バルサルタン投与群(6.9 mL/m2、95%CI 0.0 〜 13.7)では増加した(vs. バルサルタン投与群:0.7 mL/m2、95%CI -6.3 〜 7.7、P<0.001)。脈圧とN末端pro-BNPの変化は、バルサルタン群(-1.2 mmHg、95%CI -4.1 〜 1.7; 9.4%、95%CI -15.6 〜 4.9; P<0.001)よりもサクビトリル/バルサルタン群(-4.2 mmHg、95%CI -7.2 ~ -1.21; -17.7%、95%CI -36.9 〜 7.4、P<0.001)で小さかった。主要な有害心血管イベントは、サクビトリル/バルサルタン投与群6例(4.9%)およびバルサルタン投与群17例(13.3%)で発生した(調整ハザード比 0.38、95%CI 0.17~0.89; 調整済みP=0.04)。
結論と関連性:HFpEF予備軍患者を対象とした本試験において、サクビトリル/バルサルタン投与は、バルサルタンに比べて左房容積指数の大きな上昇と心血管リスクマーカーの改善と関連していた。HFpEF予備軍患者において観察された心容積の増加やサクビトリル/バルサルタンの長期的効果を理解するためには、さらなる研究が必要である。
試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier. NCT04687111
引用文献
Effect of Sacubitril/Valsartan vs Valsartan on Left Atrial Volume in Patients With Pre-Heart Failure With Preserved Ejection Fraction: The PARABLE Randomized Clinical Trial
Mark Ledwidge et al. PMID: 36884247 PMCID: PMC9996460 DOI: 10.1001/jamacardio.2023.0065
JAMA Cardiol. 2023 Mar 8;e230065. doi: 10.1001/jamacardio.2023.0065. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36884247/
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