出血性消化性潰瘍患者における内視鏡治療後のプロトンポンプ阻害薬の高用量投与と非高用量投与、どちらが良さそうですか?(RCTのSR&MA; Arch Intern Med. 2010)

question mark on paper crafts 04_消化器系
Photo by Leeloo Thefirst on Pexels.com
この記事は約4分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

高用量PPIは出血性消化性潰瘍患者における内視鏡治療後の再出血、外科的介入、死亡率を減らせるのか?

出血性消化潰瘍に対する内視鏡治療は、病勢の持続・再出血を予防し、緊急手術への移行や死亡リスクを低減させるために有用であることが報告されています。また、再出血予防のために内視鏡治療後に高用量プロトンポンプ阻害薬(PPI)(80mgボーラス投与後、8mg/hを72時間持続点滴)が行われます。

高用量PPIについては、広く研究され使用されてきたものの、高用量PPIが非高用量PPIよりも有効であるという具体的なエビデンスはありません。そこで今回は、出血性消化性潰瘍患者における高用量PPIと非高用量PPIの使用を比較し、再出血、外科的介入、死亡率への影響を判断したランダム化対照試験を対象にメタ解析を行った研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

7件の高品質なランダム化試験から、合計1,157例の患者がメタ解析に組み入れられました。

高用量PPI vs. 非高用量PPI
再出血率OR 1.30
(95%CI 0.88~1.91
7試験、1,157例
外科的介入OR 1.49
(95%CI 0.66~3.37
6試験、1,052例
死亡率OR 0.89
(95%CI 0.37~2.13
6試験、1,052例

高用量PPIと非高用量PPIは、再出血率(7試験、1,157例、OR 1.30、95%CI 0.88~1.91)、外科的介入(6試験、1,052例、OR 1.49、95%CI 0.66~3.37)、死亡率(6試験、1,052例、OR 0.89、95%CI 0.37~2.13)についての効果に差がありませんでした。

事後のサブグループ解析により、初回内視鏡検査時の最近の出血の兆候の重症度、PPI投与経路、PPI用量は、要約アウトカム指標に影響を及ぼさないことが明らかとなりました。

コメント

出血性消化性潰瘍患者における内視鏡治療後の再出血予防のために高用量PPI(80mgボーラス投与後、8mg/hを72時間持続点滴)が使用されることがありますが、エビデンスは充分ではありません。

さて、本試験結果によれば、高用量PPIは非高用量PPIと比較して、出血性消化性潰瘍患者の内視鏡治療後の再出血、外科的手術、死亡リスクをさらに低減できませんでした。解析に組み入れられた試験数は7件であり、症例数は1,000例ほどです。そのため区間推定値がやや広いですが、異質性が低い(I2=0%)ことから結果が覆る可能性は低いと考えられます。また、本メタ解析の報告は2010年時点のものであり、以降は目新しい報告がなさそうであるため、エビデンスがアップデートされる可能性は低いと考えられます。

出血性消化性潰瘍患者における内視鏡治療後の予防的PPI投与は標準用量で良さそうです。

crop doctor with stethoscope in hospital

☑まとめ☑ 高用量PPIは非高用量PPIと比較して、出血性消化性潰瘍患者の内視鏡治療後の再出血、外科的手術、死亡率をさらに低下させることはない。

根拠となった試験の抄録

背景:高用量プロトンポンプ阻害薬(PPI)(80mgボーラス投与後、8mg/hを72時間持続点滴)が広く研究され使用されてきた。しかし、現在までのところ、高用量PPIが非高用量PPIよりも有効であるという具体的なエビデンスはない。

方法:出血性消化性潰瘍患者における高用量PPIと非高用量PPIの使用を比較し、再出血、外科的介入、死亡率への影響を判断したランダム化対照試験の文献検索を行った。アウトカムデータはメタ解析で統合され、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)として報告された。

結果:7件の高品質なランダム化試験から、合計1,157例の患者がこのメタ解析に組み入れられた。高用量PPIと非高用量PPIは、再出血率(7試験、1,157例、OR 1.30、95%CI 0.88~1.91)、外科的介入(6試験、1,052例、OR 1.49、95%CI 0.66~3.37)、死亡率(6試験、1,052例、OR 0.89、95%CI 0.37~2.13)についての効果には差がなかった。事後のサブグループ解析により、初回内視鏡検査時の最近の出血の兆候の重症度、PPI投与経路、PPI用量は、要約アウトカム指標に影響を及ぼさないことが明らかとなった。

結論:高用量PPIは非高用量PPIと比較して、出血性消化性潰瘍患者の内視鏡治療後の再出血、外科的手術、死亡率をさらに低下させることはない。

引用文献

High-dose vs non-high-dose proton pump inhibitors after endoscopic treatment in patients with bleeding peptic ulcer: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
Chih-Hung Wang et al. PMID: 20458081 DOI: 10.1001/archinternmed.2010.100
Arch Intern Med. 2010 May 10;170(9):751-8. doi: 10.1001/archinternmed.2010.100.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20458081/

コメント

タイトルとURLをコピーしました