軽度認知機能障害(MCI)におけるコンピューターゲームとクロスワードトレーニング、どちらが良さそうですか?(単盲検RCT; NEJM Evid 2022)

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軽度認知障害(MCI)の進行抑制にはコンピューターゲームとクロスワードトレーニング、どちらが良いのか?

軽度認知障害(MCI)は、認知症のリスクを高める可能性が報告されています。仮にMCIが認知症リスクを増加させるとした場合、MCIの段階で認知機能の低下を抑えることができれば認知症の進行抑制につながります。しかし、認知機能の低下を抑えるための戦略は確立していません。また、MCI患者に対する認知トレーニングの有効性は不明です。

そこで今回は、MCI患者を対象に2種類の認知機能トレーニングの効果を比較したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本試験では2施設の単盲検78週間試験において、年齢、重症度(早期/後期MCI)、部位によって層別化したMCI患者を対象に、Webベースの認知ゲームまたはWebベースのクロスワードパズルを用いた12週間の集中在宅コンピュータトレーニングにランダムに割り付け、その後6回のブースターセッションが実施されました。本試験の主要アウトカムは、78週時点における11項目のアルツハイマー病評価尺度-認知(ADAS-Cog)スコア(スコアが高いほど認知障害が大きいことを示す70点スケール)のベースラインからの変化で、ベースラインで補正されました。副次的アウトカムとして、ベースライン調整後の78週時点における神経心理学的複合スコア、University of California San Diego Performance-Based Skills Assessment(機能的アウトカム)スコア、Functional Activities Questionnaire(機能的アウトカム)スコアのベースラインからの変化も評価しました。海馬体積と磁気共鳴画像における皮質厚の変化も評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

ゲーム群
(51例)
クロスワード群
(56例)
最小二乗[LS]平均差
78週目のADAS-Cogスコア
(ベースラインからの変化)
(9.53→9.93)(9.59→8.61)-1.44
(95%CI -2.83 ~ -0.06
P=0.04

107例の参加者(n=51[ゲーム群];n=56[クロスワード群])において、78週目のADAS-Cogスコアはゲーム群でわずかに悪化し、クロスワード群で改善しました(最小二乗[LS]平均差 -1.44、95%信頼区間[CI] -2.83 ~ -0.06;P=0.04)。ベースラインから78週目までのADAS-Cogスコアの平均は、ゲームで悪化し(9.53→9.93)、クロスワードで改善しました(9.59→8.61)。後期MCIサブグループにおいても同様の結果が得られました(LS平均差 -2.45、SE 0.89;95%CI -4.21 ~ -0.70)。

副次的転帰のうち、Functional Activities Questionnaireスコアは、78週目にクロスワードよりもゲームでより悪化しました(LS平均差 -1.08、95%CI -1.97 ~ -0.18)。その他の副次的アウトカムには差がみられませんでした。海馬体積と皮質厚の減少は、クロスワードよりもゲームで大きいことが示されました(LS平均差 34.07、SE 17.12;95%CI 0.51~67.63[海馬体積];LS平均差 0.02、SE 0.01;95%CI 0.00~0.04[皮質厚])。

コメント

加齢に伴い認知機能が低下していき、この低下が大きくなると認知症(と診断されること)になります。認知症の前段階は軽度認知障害(MCI)とされていますが、MCIに対する認知機能トレーニングの効果は充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、78週間にわたるADAS-Cogスコアのベースライン調整後の変化という主要アウトカムにおいて、クロスワードを用いた在宅コンピュータトレーニングは、ゲームよりも優れた効果を示しました。しかし、70点スケールのほんのわずかな差で有意さが示されたにすぎません。したがって、実臨床における差異はかなり小さいと考えられます。ちなみに過去の報告では、ADAS-Cog(37件のRCT、10,006例)のMCID(臨床的に意義のある最小差)は、ベースラインのSDを用いた場合、0.4SDで4、0.5SDで5のMCID、平均変化SDを用いた場合は、0.4SDで2.6、0.5SDで3.2と示されています。ただし、これは認知症患者を対象とした結果であるため、MCI患者におけるMCIDを算出する必要があることから、あくまでも参考程度の数値です。

気にかかるのは海馬体積と皮質厚という器質的な変化の結果がリンクしていたことです。器質的・機能的な変化において、コンピューターゲームよりもクロスワードの方が優れていた可能性があります。ただし、コンピューターゲームがどのようなタイプのゲームであったのかは抄録からは判断できません。ここは留意した方が良いと考えられます。

以上のことから、本試験結果をもって、コンピューターゲームよりもクロスワードの方が認知機能低下の抑制効果に優れているとは言えないと考えられます。

続報に期待。

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☑まとめ☑ 78週間にわたるADAS-Cogスコアのベースライン調整後の変化という主要アウトカムにおいて、クロスワードを用いた在宅コンピュータトレーニングは、ゲームよりも優れた効果を示したが、実臨床における効果は推定できない。

根拠となった試験の抄録

背景:軽度認知障害(MCI)は、認知症のリスクを高める。MCI患者に対する認知トレーニングの有効性は不明である。

方法:2施設の単盲検78週間試験において、年齢、重症度(早期/後期MCI)、部位によって層別化したMCI患者を、Webベースの認知ゲームまたはWebベースのクロスワードパズルを用いた12週間の集中在宅コンピュータトレーニングにランダムに割り付け、その後6回のブースターセッションを実施した。
混合モデル解析では、主要アウトカムは、78週時点における11項目のアルツハイマー病評価尺度-認知(ADAS-Cog)スコア(スコアが高いほど認知障害が大きいことを示す70点スケール)のベースラインからの変化で、ベースラインで補正されたものであった。副次的アウトカムとして、ベースライン調整後の78週時点における神経心理学的複合スコア、University of California San Diego Performance-Based Skills Assessment(機能的アウトカム)スコア、Functional Activities Questionnaire(機能的アウトカム)スコアのベースラインからの変化も評価した。海馬体積と磁気共鳴画像における皮質厚の変化も評価した。

結果:107例の参加者(n=51[ゲーム群];n=56[クロスワード群])において、78週目のADAS-Cogスコアはゲーム群でわずかに悪化し、クロスワード群で改善した(最小二乗[LS]平均差 -1.44、95%信頼区間[CI] -2.83 ~ -0.06;P=0.04)。ベースラインから78週目までのADAS-Cogスコアの平均は、ゲームで悪化し(9.53→9.93)、クロスワードで改善した(9.59→8.61)。後期MCIサブグループでも同様の結果が得られた(LS平均差 -2.45、SE 0.89;95%CI -4.21 ~ -0.70)。副次的転帰のうち、Functional Activities Questionnaireスコアは、78週目にクロスワードよりもゲームでより悪化した(LS平均差 -1.08、95%CI -1.97 ~ -0.18)。その他の副次的アウトカムには差がみられなかった。海馬体積と皮質厚の減少は、クロスワードよりもゲームで大きかった(LS平均差 34.07、SE 17.12;95%CI 0.51~67.63[海馬体積];LS平均差 0.02、SE 0.01;95%CI 0.00~0.04[皮質厚])。

結論:クロスワードを用いた在宅コンピュータトレーニングは、78週間にわたるADAS-Cogスコアのベースライン調整後の変化という主要アウトカムにおいて、ゲームよりも優れた効果を示した。

資金提供:米国国立衛生研究所、国立老化研究所

ClinicalTrials.gov番号:NCT03205709

引用文献

Computerized Games versus Crosswords Training in Mild Cognitive Impairment
D. P. Devanand et al. Published October 27, 2022
NEJM Evid 2022; 1 (12) DOI:https://doi.org/10.1056/EVIDoa2200121
— 読み進める evidence.nejm.org/doi/10.1056/EVIDoa2200121

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