亜鉛補給によりCOVID-19死亡リスクは低減するのか?
亜鉛の補給は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する潜在的な治療法と考えられています。しかし、充分に検討されておらず、また結果の一貫性は示されていません。
そこで今回は、COVID-19感染症の成人患者における亜鉛の有効性を検討した二重盲検ランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本試験は、前向きランダム化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験であり、末端臓器不全を伴わないCOVID-19陽性患者を、15日間亜鉛(n=231)またはマッチングプラセボ(n=239)を経口投与する群にランダムに割り付けました。本試験の主要複合転帰は、ランダム化後30日以内のCOVID-19による死亡または集中治療室(ICU)入室でした。副次的アウトカムは、入院患者の入院期間と、外来患者のCOVID-19関連入院を伴うCOVID-19症状の持続期間でした。
試験結果から明らかになったことは?
190例(40.4%)が外来、280例(59.6%)が入院患者でした。
亜鉛群 | プラセボ群 | オッズ比 OR (95%CI) | |
30日後の死亡率 | 6.5% | 9.2% | OR 0.68 (0.34~1.35) |
ICU入院率 | 5.2% | 11.3% | OR 0.43 (0.21~0.87) |
複合転帰 | – | – | OR 0.58 (0.33~0.99) |
30日後の死亡率は亜鉛群で6.5%、プラセボ群で9.2%(OR 0.68、95%CI 0.34~1.35)であり、ICU入院率はそれぞれ5.2%、11.3%(OR 0.43、95%CI 0.21~0.87)でした。複合転帰は、亜鉛群でプラセボ群に対して低いことが示されました(OR 0.58、95%CI 0.33~0.99)。
事前に特定した65歳未満の患者、合併症を有する患者、ベースライン時に酸素療法を必要とした患者のサブグループで一貫した結果が観察されました。
入院期間(亜鉛群 – プラセボ群) | |
入院患者群 | 差 3.5日 (95%CI 2.76〜4.23) |
COVID-19症状の持続期間(亜鉛群 – プラセボ群) | |
外来患者群 | 差 1.9日 (95%CI 0.62〜2.6) |
入院患者群において、亜鉛投与群では、プラセボ投与群よりも入院期間が短いことが示されました(差 3.5日、95%CI 2.76〜4.23)。外来患者群において、亜鉛投与によりCOVID-19症状の持続期間がプラセボよりも短縮しました(差 1.9日、95%CI 0.62〜2.6)。
なお、試験期間中に重篤な有害事象は認められなかった。
コメント
COVID-19治療における亜鉛投与の有用性については充分に検討されていません。
さて、本試験結果によれば、COVID-19患者において、亜鉛の経口投与は30日死亡率、ICU入室率を低下させ、症状の持続時間を短縮できることが示されました。
しかし、血中亜鉛濃度などベースラインの群間調整が不充分であり、結果の解釈に注意を要します。そもそもベースラインの血中亜鉛濃度を測定していないことから、ランダム化比較試験といえど、亜鉛の投与がアウトカム(30日死亡率やICU入室率)に及ぼす影響が直接的なものであったのか、間接的なものであったのか判断できません。
続報に期待。
✅まとめ✅ COVID-19患者において、亜鉛の経口投与は30日死亡率、ICU入室率を低下させ、症状の持続時間を短縮できることが示されたが、血中亜鉛濃度などベースラインの調整が不充分であり、結果の解釈に注意を要する。
根拠となった試験の抄録
背景:亜鉛の補給はコロナウイルス症2019(COVID-19)に対する潜在的な治療法と考えられている。我々は、COVID-19感染症の成人患者における亜鉛の有効性を検討することを目的とした。
方法:前向きランダム化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験を実施した。末端臓器不全を伴わないCOVID-19陽性患者を、15日間亜鉛(n=231)またはマッチングプラセボ(n=239)を経口投与する群にランダムに割り付けた。
主要複合転帰は、ランダム化後30日以内のCOVID-19による死亡または集中治療室(ICU)入室とした。副次的アウトカムは、入院患者の入院期間と、外来患者のCOVID-19関連入院を伴うCOVID-19症状の持続期間であった。
結果:190例(40.4%)が外来、280例(59.6%)が入院患者であった。30日後の死亡率は亜鉛群で6.5%、プラセボ群で9.2%(OR 0.68、95%CI 0.34~1.35)であり、ICU入院率はそれぞれ5.2%、11.3%(OR 0.43、95%CI 0.21~0.87)であった。複合的な転帰は、亜鉛群でプラセボ群に対して低かった(OR 0.58、95%CI 0.33~0.99)。事前に特定した65歳未満の患者、合併症を有する患者、ベースライン時に酸素療法を必要とした患者のサブグループで一貫した結果が観察された。入院患者群では、亜鉛投与群がプラセボ投与群よりも入院期間が短かった(差 3.5日、95%CI 2.76〜4.23)。外来患者群では、亜鉛投与によりCOVID-19症状の持続期間がプラセボよりも短縮した(差 1.9日、95%CI 0.62〜2.6)。なお、試験期間中に重篤な有害事象は認められなかった。
結論:COVID-19患者において、亜鉛の経口投与は30日死亡率、ICU入室率を低下させ、症状の持続時間を短縮できることが示された。
臨床試験登録:ClinicalTrials.gov, NCT05212480
キーワード:COVID-19、SARS-CoV-2、転帰、亜鉛
引用文献
Twice-Daily Oral Zinc in the Treatment of Patients With Coronavirus Disease 2019: A Randomized Double-Blind Controlled Trial
Saoussen Ben Abdallah et al. PMID: 36367144 DOI: 10.1093/cid/ciac807
Clin Infect Dis. 2022 Nov 4;ciac807. doi: 10.1093/cid/ciac807. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36367144/
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