家庭血圧は非弁膜症性心房細動を有する高齢患者において脳卒中/出血イベントのリスクを予測できますか?(日本のコホート試験; ANAFIE試験; Hypertension. 2022)

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家庭血圧は高齢者の非弁膜症性心房細動患者における脳卒中/出血イベントのリスクとなるのか?

心房細動(AF)は虚血性脳卒中の主要な危険因子であり、高齢者の生命予後に影響を与えます(PMID: 31955707)。心房細動の発生率および有病率は、年齢とともに増加します(PMID: 24345399PMID: 31754085)。

ANAFIE (All Nippon AF in the Elderly) Registryは、75歳以上の非弁膜症性心房細動 (NVAF) を有する高齢者3万人以上の実際の臨床状態と予後を明らかにするために行われた前向き観察研究です(PMID: 33822030)。高血圧は、心房細動患者における脳卒中/全身性塞栓イベント(SEE)および出血性合併症の独立した危険因子です(PMID: 31690818)。また、高血圧と心房細動は同じ患者を苦しめることがります(PMID: 29348255)。

高血圧は、血行力学的および非血行力学的なメカニズムによって、心房細動の発生と血栓塞栓症のリスクを増幅すると考えられています(PMID: 28990508)。また高血圧は、CHADS2、CHA2DS2-VASc、HAS-BLEDスコアの修正可能な要素です(PMID: 32860505)。BAT研究(Bleeding With Anti thrombotic Therapy)では、血圧(BP)の上昇は頭蓋内出血(ICH)の高いリスクと関連することが示され(Stroke2010)、ガイドラインでは診察室血圧(O-BP)を130mmHg以下にコントロールすることを推奨しています。心房細動を有する超高齢者において、心血管系イベントのリスクと予後に及ぼす血圧の影響を評価する際には、いくつかの要因を考慮する必要があります。

収縮期血圧 (SBP) と拡張期血圧 (DBP) は、洞調律の患者と比較して、心房細動患者では著しく変動しています(PMID: 29415571)。現在の臨床で行われている限られた数のO-BP測定は、 心房細動患者の血圧リスクを正確に評価するためには不十分です。 血圧と心血管疾患リスクとの関連の強さは、年齢層によって著しく異なります。超高齢者(75〜89歳)では、BP上昇が心血管疾患リスクに与える影響は充分に検討されていません(PMID: 22739419)。

そこで今回は、H-BPが脳卒中/SEE、大出血、ICH、全死亡、純心血管転帰(脳卒中/SEEと大出血の複合)のリスクに与える影響を評価したANAFIEレジストリのH-BPサブコホート研究(PMID: 33822030PMID: 29625717)の結果をご紹介します。

本研究では、家庭血圧(H-BP)はO-BPよりも心房細動患者の脳卒中・SEEおよび大出血のリスク予測に優れていると仮定されました。この方法は、測定回数が多いため、心房細動患者の変動を克服でき、白衣効果による変動も回避できると考えられているためです(PMID: 34431500PMID: 31132950)。

試験結果から明らかになったことは?

非弁膜症性心房細動を有する高齢者(75歳以上)4,933例が参加しました。心血管系の正味の転帰、脳卒中/SEE、大出血、頭蓋内出血の発生率は、自宅収縮期血圧(H-SBP)の上昇に伴い有意に増加しました。最も患者数の多いH-SBPカテゴリーは125mmHg未満(n=2,030[41%])、次いで125~135mmHg(n=1,585[32%])、135~145mmHg(n=878[18%])、≧145mmHg(n=440[9%])です。

以上のことからH-SBP<125mmHgに比べ、≧145mmHgはこれらのイベントのリスク上昇と関連していました。また、H-SBPとイベントとの関連は、H-SBPを20回以上測定した患者においてのみ観察されました。

<125mmHg群
の発生率
(100人・年)
≧145mmHg群
の発生率
(100人・年)
ハザード比 HR
(vs. 125mmHg未満)
純心血管予後1.673.24HR 1.92
[95%CI 1.21〜3.06
P=0.006
脳卒中/脳血管障害1.032.10HR 1.88
[95%CI 1.05〜3.37
P=0.033
大出血0.742.10HR 2.92
[95%CI 1.58〜5.42
P<0.001
頭蓋内出血0.551.73HR 3.07
[95%CI 1.54〜6.15
P=0.002

125mmHg未満群と145mmHg以上群の患者において、100人・年当たりのそれぞれの発生率は、純心血管予後で1.67と3.24(P<0.05)、脳卒中/脳血管障害は1.03と2.10(P<0.05)、大出血は0.74と2.10(P<0.05)、頭蓋内出血は0.55と1.73(P<0.05)、全死因は3.67と4.39(P=0.337)でした。また、H-SBP<125mmHgと比較して、H-SBP≧145mmHgは純心血管予後(HR 1.92[95%CI 1.21〜3.06];P=0.006)。脳卒中/脳血管障害(HR 1.88[95%CI 1.05〜3.37];P=0.033)、大出血(HR 2.92[95%CI 1.58〜5.42];P<0.001)および頭蓋内出血(HR 3.07[95%CI 1.54〜6.15];P=0.002)の高い発生率と有意に関連していました。

他のH-SBPカテゴリー(≧125mmHg ~ <135mmHg、≧135mmHg ~ <145mmHg)では、これらの転帰に対する有意な関連は認められませんでした。

全死亡については、H-SBP 135~<145 mm HgはH-SBP <125 mm Hgと比較して有意に低い発生率と関連していました(HR 0.70 [95%CI 0.49〜1.00]; P=0.049)。

コメント

非弁膜症性心房細動を有する高齢患者における家庭血圧を測定することの意義は明確ではありません。

さて、日本で行われた本試験結果によれば、高齢の非弁膜症性心房細動において、家庭収縮期血圧の高値(≧145mmHg)は脳卒中・SEE、大出血、頭蓋内出血のリスクの有意な予測因子でした。これまでの呼応例者を対照とした臨床試験の結果も踏まえると、少なくとも収縮期血圧145mmHg以上の場合は降圧した方が予後は良いのかもしません。降圧目標をどこに置くのか?についてはここの患者背景によると考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 高齢の非弁膜症性心房細動において、家庭収縮期血圧の高値(≧145mmHg)は脳卒中・SEE、大出血、頭蓋内出血のリスクの有意な予測因子であった。

根拠となった試験の抄録

背景:心房細動患者では血圧が大きく変動する。心房細動患者のリスクを正確に評価するには、診察室での血圧測定では不十分であると思われる。我々は、心房細動患者の脳卒中/全身性塞栓イベント(SEE)および大出血のリスクを、家庭血圧が診察室血圧よりもよく予測できると仮定した。

方法:ANAFIE(All Nippon AF in the Elderly)レジストリの事前に特定したサブコホート研究において、家庭血圧が脳卒中/SEE、大出血、頭蓋内出血、全死亡、純心血管転帰(脳卒中/SEEと大出血の複合)のリスクに与える影響を評価した。登録時、家庭血圧を朝夕2回、7日間測定した。

結果:非弁膜症性心房細動を有する高齢者(75歳以上)4,933例が参加した。心血管系の正味の転帰、脳卒中/SEE、大出血、頭蓋内出血の発生率は、自宅収縮期血圧(H-SBP)の上昇に伴い有意に増加した。H-SBP<125mmHgに比べ、≧145mmHgはこれらのイベントのリスク上昇と関連していた。また、H-SBPとイベントとの関連は、H-SBPを20回以上測定した患者においてのみ観察された。

結論:高齢の非弁膜症性心房細動において、家庭収縮期血圧の高値(≧145mmHg)は脳卒中・SEE、大出血、頭蓋内出血のリスクの有意な予測因子であった。家庭血圧測定の増加に伴い、厳格な血圧管理を行うことで、正確な臨床転帰リスク評価が可能となる可能性がある。

試験登録: https://www.umin.ac.jp/ctr; Unique identifier: UMIN000024006.

キーワード:心房細動、血圧、高齢者、塞栓症;出血

引用文献

Home Blood Pressure Can Predict the Risk for Stroke/Bleeding Events in Elderly Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation From the ANAFIE Registry
Kazuomi Kario et al. PMID: 36259381 DOI: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.122.19810
Hypertension. 2022 Oct 19. doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.122.19810. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36259381/

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