虚血性左心室機能障害に対する経皮的血行再建術(PCI)の効果はどのくらいですか?(Open-RCT; REVIVED-BCIS2試験; N Engl J Med. 2022)

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至適療法中の虚血性左心室機能障害を有する冠動脈疾患に対する経皮的血行再建術(PCI)の効果はどのくらいですか?

冠動脈疾患は世界的に最も一般的な心不全の原因です。重度の左室収縮機能障害をもつ患者の一部が冠動脈バイパス術(CABG)後に収縮機能を回復したという観察から、心筋の冬眠(冬眠心筋, myocardial hibernation)という概念が生まれました(PMID: 2783527)。冠動脈再灌流による冬眠の回復は、何十年もの間、関心が高いテーマでしたが、証明されていない展望でした(PMID: 11923039)。虚血性心不全の外科的治療(STICH)試験において、5年後のあらゆる原因による死亡(主要評価項目)の発生率は、CABGを受ける群、内科的治療のみを受ける群で同等であり、このことは、これらの患者においてCABGが早期に危険であったことが一因でした(PMID: 21463150)。しかし、時間の経過とともに生存率の向上が認められ、CABGによる再灌流を受けた患者は、内科的治療のみを受けた患者よりも10年後に生存している可能性が高くなりました(PMID: 27040723)。

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、別の血行再建術であるが、慢性冠症候群患者におけるCABGとPCIのランダム化比較試験のほとんどは、重度の左室収縮機能不全の患者を除外しています(PMID: 19228612PMID: 27797291)。虚血性左室機能障害を有する患者において、PCIがCABGに伴う早期の危険性を伴わずに再灌流の利益を実現することができるかどうかは不明です。

そこで今回は、重症の虚血性左室収縮機能障害と心筋の生存が証明された患者において、至適療法(心不全に対して個別に調整した薬物療法やデバイス療法)のみと比較して、心不全の至適療法に加えてPCIによる血行再建を行うことによりイベントフリー生存率が改善するか検討したREVIVED-BCIS2試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

合計700例の患者がランダム化され、347例がPCI群に、353例が至適療法群に割り付けられました。

至適療法+PCI群至適療法群ハザード比
(95%CI)
一次アウトカムイベント
総死亡または心不全による入院
129例(37.2%)134例(38.0%)0.99
0.78~1.27
P=0.96

中央値41ヵ月の間に、PCI群では129例(37.2%)、至適療法群では134例(38.0%)に一次アウトカムイベントが発生しました(ハザード比 0.99、95%信頼区間[CI] 0.78~1.27;P=0.96)。

左室駆出率の平均差
(95%CI)
6ヵ月後-1.6%
-3.7~0.5
12ヵ月後0.9%
-1.7~3.4

左室駆出率は、6ヵ月後(平均差 -1.6%、95%CI -3.7~0.5)と 12ヵ月後(平均差 0.9%、95%CI -1.7~3.4)において両群で同等でした。

6ヵ月と12ヵ月のQOLスコアはPCI群に有利であることが示されましたが、24ヵ月ではその差は減少していました。

コメント

虚血性左室機能障害を有する患者における経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の効果は不明です。これまでの試験結果から、虚血性心不全に対する早期のCABG実施は、薬剤などによる至適療法を上回るベネフィットを示せませんでした。そのため、虚血性左室機能障害患者に対する早期のPCI実施に期待がかかります。

さて、本試験結果によれば、至適療法を受けた重症虚血性左室収縮機能障害患者において、PCIによる血行再建は、中央値41ヵ月における総死亡や心不全による入院の発生率を低下させませんでした。至適療法と比較して、PCIの実施は侵襲性が高いことから、重症虚血性左室収縮機能障害患者に対する早期のPCI実施は推奨できないようです。

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✅まとめ✅ 至適療法を受けた重症虚血性左室収縮機能障害患者において、PCIによる血行再建は、総死亡や心不全による入院の発生率を低下させなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:重症虚血性左室収縮機能障害患者において、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による血行再建術が、至適療法(心不全に対して個別に調整した薬物療法やデバイス療法)単独と比較してイベントフリー生存率と左室機能を改善できるかどうかは不明である。

方法:左室駆出率が35%以下で、PCIが可能な広範な冠動脈疾患を有し、心筋の生存が証明された患者を、PCI+至適療法(PCI群)または至適療法単独(至適医療療法群)のいずれかにランダムに割り付けた。
主要複合転帰は、あらゆる原因による死亡または心不全による入院とした。主な副次的転帰は6ヵ月および12ヵ月時の左室駆出率およびQOLスコアであった。

結果:合計700例の患者がランダム化され、347例がPCI群に、353例が至適療法群に割り付けられた。中央値41ヵ月の間に、PCI群では129例(37.2%)、至適療法群では134例(38.0%)に一次アウトカムイベントが発生した(ハザード比 0.99、95%信頼区間[CI] 0.78~1.27;P=0.96)。左室駆出率は、6ヵ月後(平均差 -1.6%、95%CI -3.7~0.5)と 12ヵ月後(平均差 0.9%、95%CI -1.7~3.4)では両群で同等であった。6ヵ月と12ヵ月のQOLスコアはPCI群に有利であったが、24ヵ月ではその差は減少していた。

結論:至適療法を受けた重症虚血性左室収縮機能障害患者において、PCIによる血行再建は、総死亡や心不全による入院の発生率を低下させなかった。

資金提供:National Institute for Health and Care Research Health Technology Assessment Program

ClinicalTrials.gov番号:NCT01920048

引用文献

Percutaneous Revascularization for Ischemic Left Ventricular Dysfunction
Divaka Perera et al. PMID: 36027563 DOI: 10.1056/NEJMoa2206606
N Engl J Med. 2022 Aug 27. doi: 10.1056/NEJMoa2206606. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36027563/

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