COVID-19関連咳嗽に対するガバペンチンおよびガバペンチン+モンテルカスト vs. デキストロメトルファン(Open-RCT; Clin Respir J. 2022)

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COVID-19に関連する咳嗽に対するガバペンチンの効果とは?

咳が慢性化すると咳嗽反射の感度が増し、カプサイシンのような咳嗽刺激物質に対する過敏性が生じることが報告されています。一方で、慢性咳嗽患者には、咳嗽刺激物質ではないものに起因する咳も認められ、中枢神経の咳嗽反射亢進が形成されていること(中枢性感作)も報告されています。

中枢性感作の関与が知られている疾患の1つとして神経因性疼痛が挙げられ、その中でも、錯感覚、痛覚過敏、異痛症(アロディニア)などは慢性咳嗽と共通する臨床特性を示します。

これまで中枢性感作が関係する神経因性疼痛にはガバペンチンが有効であることが知られています。また、過去の報告では、難治性の慢性咳嗽に対するガバペンチンの有効性が示されています(PMID: 22951084)。しかし、COVID-19に関連する慢性咳嗽に対してガバペンチンが有効かどうかは不明です。

そこで今回は、ガバペンチン(GBT)単独およびモンテルカスト(MTL)との併用による咳嗽の改善効果を評価した非盲検ランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本試験の対象症例は中等度から重度のCOVID-19で入院中の患者で、Breathlessness, Cough, and Sputum Scale(BCSS)の咳サブスケールに基づいて2点以上の咳を有する患者でした。試験参加者は、2つの実験グループと1つの対照グループを含む3つのグループにランダムに割り当てられました。第1実験群にはGBT、第2実験群にはGBT/MTLが投与され、対照群にはデキストロメトルファン(DXM)が投与され増した。治療期間は全群で5日間でした。介入の前後で、咳の重症度をBCSSスケールとVisual Analog Scale(VAS)を用いて評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

GPT群76例、GPT/MTL群51例、DXM群53例、合計180例の患者が対象となりました。年齢、性別、併存疾患については、3群間に有意差はありませんでした(P>0.05)。

平均BCSS(SD)ガバペンチン群
(GPT群)
ガバペンチン
+モンテルカスト群
(GPT/MTL群)
デキストロメトルファン群
(DXM群)
ベースライン3.96 (0.85)3.29(0.50)3.23(0.46)
投与5日後2.49(1.03)1.33(0.86)0.34(0.62)
ベースラインからの変化1.47(0.81)1.96(0.69)2.89(0.32)
平均VAS(SD)ガバペンチン群
(GPT群)
ガバペンチン
+モンテルカスト群
(GPT/MTL群)
デキストロメトルファン群
(DXM群)
ベースライン3.12(1.08)2.75(0.99)2.62(0.92)
投与5日後1.68(0.59)0.94(0.75)0.25(0.58)
ベースラインからの変化1.43(1.13)1.80(1.11)2.37(0.82)

BCSSおよびVASスコアについては、全群でベースライン値から有意に低下し(P<0.0001)、その変化率はDXM群で有意に高いことが示されました。BCSSはGPT/MTL群がGPT群より有意に低下しましたが、VASスコアは両群間に有意差はありませんでした。入院期間はGPT/MTL群が最も短く、両群間に差がありましたが、その差はGPT群とGPT/MTL群の間でのみ統計的に有意でした(P<0.0001)。

コメント

咳はCOVID-19の最も一般的な症状の一つであり、数週間から数ヵ月間持続することが報告されています。難治性慢性咳嗽に対してガバペンチンが有効である可能性が示されていますが、COVID-19に関連する慢性咳嗽に対しても有効であるのかについては、充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、ガバペンチンは、COVID-19入院患者において、単独およびモンテルカストとの併用により咳嗽の頻度と重症度を改善しました。モンテルカストと併用すると、より効果的であることも示されました。咳サブスケールおよびVASスコアの低下はデキストロロメトルファンの方が大きかったことから、オピオイド系鎮咳薬に忍容性のない患者の慢性咳嗽に対してガバペンチンが治療選択肢の一つとなる可能性が示されました。

ただし、本試験はプラセボ群を設定していない非盲検のランダム化比較試験です。アウトカムとして疼痛や咳嗽の評価を設定する場合、他のアウトカムと比較してプラセボ効果が大きいことに留意する必要があります。また、評価においてバイアスが生じやすいことから、追試が求められます。

続報に期待。

ガバペンチンの効能又は効果(2022年7月現在)

現在、ガバペンチンの適応症は「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法」であり、慢性咳嗽に対しては適応外使用となります。

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✅まとめ✅ ガバペンチンは、COVID-19入院患者において、単独およびモンテルカストとの併用により咳嗽の頻度と重症度を改善し、併用がより効果的であった。咳サブスケールおよびVASスコアの低下はデキストロロメトルファンの方が大きかったことから、ガバペンチンはオピオイド系鎮咳薬に不耐の患者に対する治療選択肢の一つとなる可能性があるものの、非盲検試験であるため追試が求められる。

根拠となった試験の抄録

はじめに:咳はCOVID-19の最も一般的な症状の一つであり、数週間から数ヵ月間持続することがある。

目的:本研究の目的は、ガバペンチン(GBT)単独およびモンテルカスト(MTL)との併用による咳嗽の改善効果を評価することであった。

方法:この非盲検ランダム化比較臨床試験において、対象症例は中等度から重度のCOVID-19で入院中の患者で、Breathlessness, Cough, and Sputum Scale(BCSS)の咳サブスケールに基づいて2点以上の咳を有する患者であった。参加者は、2つの実験グループと1つの対照グループを含む3つのグループにランダムに割り当てられた。第1実験群にはGBT、第2実験群にはGBT/MTLが投与され、対照群にはデキストロメトルファン(DXM)が投与された。治療期間は全群で5日間であった。介入の前後で、咳の重症度をBCSSスケールとVisual Analog Scale(VAS)を用いて評価した。

結果:GPT群76例、GPT/MTL群51例、DXM群53例、合計180例の患者を対象とした。年齢、性別、併存疾患については、3群間に有意差はなかった(P>0.05)。BCSSおよびVASスコアについては、全群でベースライン値から有意に低下し(P<0.0001)、その変化率はDXM群で有意に高かった。BCSSはGPT/MTL群がGPT群より有意に低下したが、VASスコアは両群間に有意差はなかった。入院期間はGPT/MTL群が最も短く、両群間に差があったが、その差はGPT群とGPT/MTL群の間でのみ統計的に有意であった(P<0.0001)。

結論:GPTは、COVID-19の入院患者において、単独およびMTLとの併用により咳嗽の頻度と重症度を改善し、併用がより効果的であった。本療法は、オピオイドに耐えられない患者に対して有用であると思われる。

キーワード:SARS-CoV-2、アレルギー、鎮咳剤、咳嗽、過敏症、肺炎

引用文献

The effectiveness of gabapentin and gabapentin/montelukast combination compared with dextromethorphan in the improvement of COVID-19- related cough: A randomized, controlled clinical trial
Rasool Soltani et al. PMID: 35908849 PMCID: PMC9353294 DOI: 10.1111/crj.13529
Clin Respir J. 2022 Jul 31;10.1111/crj.13529. doi: 10.1111/crj.13529. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35908849/

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