心血管疾患患者におけるクロピドグレル単独療法とアスピリン単独療法、どちらが優れていますか?(SR&MA; Thromb Haemost. 2022)

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心血管疾患の二次予防におけるアスピリン vs. クロピドグレル

心血管疾患の二次予防において、アスピリンがクロピドグレルより良い転帰を示すかどうか明確なコンセンサスは得られていません。

そこで今回は、心血管障害の既往を有する患者において、クロピドグレル単独療法とアスピリン単独療法の有効性・安全性を比較したシステマティックレビュー・メタ解析の結果をご紹介します。

本試験では、心血管障害の既往を有する患者において、クロピドグレルあるいはアスピリン単独療法を検討したランダム化比較試験(RCT)を対象に、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses)ステートメントに基づき、MEDLINE(PubMedによる)、ScopusおよびCochrane Library databasesを2021年8月28日まで検索し、ランダム効果メタ解析が実施されました。

試験結果から明らかになったことは?

患者26,855例(クロピドグレル13,426例、アスピリン13,429例)を含むRCT5件が対象となりました。

オッズ比 OR
[95%信頼区間, CI]
全原因死亡1.01
[0.91〜1.13]
p=0.83
虚血性脳卒中0.87
[0.71〜1.06]
p=0.16
大出血0.77
[0.56〜1.06]
p=0.11
MACE0.84
[0.71〜1.00]
p=0.05
非致死性心筋梗塞0.83
[0.71〜0.97]
p=0.02

全原因死亡(オッズ比 [OR] 1.01 [95%信頼区間, CI 0.91〜1.13]; p=0.83)、虚血性脳卒中(OR: 0.87 [95%CI 0.71〜1.06]; p=0.16)および大出血の割合(OR 0.77 [95%CI 0.56〜1.06]; p=0.11)に対してクロピドグレルおよびアスピリンの間に統計学的に有意な差は認められませんでした。クロピドグレル投与を受けた患者では、アスピリン投与を受けた患者と比較して、主要な有害心血管イベント(MACE)のリスクがボーダーラインより低く(OR 0.84 [95%CI 0.71〜1.00]; p=0.05)、非致死的心筋梗塞(OR 0.83 [95%CI 0.71〜0.97]; p=0.02、相対リスク減少16.9%、絶対リスク減少 0.5%、平均期間20ヵ月における治療必要数 NNT 217)の低リスクが示されました。

コメント

心血管疾患の二次予防において抗血小板薬が使用されますが、クロピドグレルとアスピリン、どちらが優れているのかについては明らかとなっていません。

さて、本試験結果によれば、心血管疾患の既往を有する患者において、クロピドグレルは、アスピリンと比較して、非致死的心筋梗塞リスクに対する17%減少、MACEリスクの16%減少と関連していました。一方、全原因死亡、虚血性脳卒中、大出血リスクについては差が認められませんでした。

これまでの報告でも、クロピドグレルの方が優れている結果が示されていることから、アスピリンよりもクロピドグレルを優先して使用した方が良いのかもしれません。どのような患者でクロピドグレルを優先した方が良いのか、検証する必要があります。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 心血管疾患の二次予防において、クロピドグレルは、アスピリンと比較して、非致死的心筋梗塞に対する17%の相対リスク減少、MACEリスクに対するボーダーライン減少と関連していた。

根拠となった試験の抄録

背景:心血管疾患の二次予防において、アスピリンがクロピドグレルより良い転帰を示すかどうか明確なコンセンサスは得られていない。

目的:本試験の目的は、心血管障害の既往を有する患者において、クロピドグレルとアスピリンの有効性・安全性を比較することである。

方法:心血管障害の既往を有する患者において、クロピドグレルあるいはアスピリン単独療法を検討したランダム化比較試験(RCT)を対象に、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses)ステートメントに基づき、MEDLINE(PubMedによる)、ScopusおよびCochrane Library databasesを2021年8月28日まで検索した。ランダム効果メタ解析が実施された。

結果:患者26,855例(クロピドグレル13,426例、アスピリン13,429例)を含むRCT5件が対象となった。全原因死亡(オッズ比 [OR] 1.01 [95%信頼区間, CI 0.91〜1.13]; p=0.83)、虚血性脳卒中(OR: 0.87 [95%CI 0.71〜1.06]; p=0.16)および大出血の割合(OR 0.77 [95%CI 0.56〜1.06]; p=0.11)に対してクロピドグレルおよびアスピリンの間に統計学的に有意な差は認められなかった。クロピドグレル投与を受けた患者では、アスピリン投与を受けた患者と比較して、主要な有害心血管イベント(MACE)のリスクがボーダーラインより低く(OR 0.84 [95%CI 0.71〜1.00]; p=0.05)、非致死的心筋梗塞(OR 0.83 [95%CI 0.71〜0.97]; p=0.02、相対リスク減少16.9%、絶対リスク減少 0.5%、平均期間20ヵ月における治療必要数 NNT 217)の低リスクが示された。

結論:心血管疾患の既往を有する患者において、クロピドグレルは、アスピリンと比較して、非致死的心筋梗塞に対する17%の相対リスク減少、MACEリスクに対するボーダーライン減少、そして全原因死亡、脳卒中、大出血リスクが同様であることと関連していた。

試験登録: PROSPERO CRD42021283866.

引用文献

Clopidogrel Monotherapy versus Aspirin Monotherapy in Patients with Established Cardiovascular Disease: Systematic Review and Meta-Analysis
Panagiotis T Tasoudis et al. PMID: 35577054 DOI: 10.1055/a-1853-2952
Thromb Haemost. 2022 May 16. doi: 10.1055/a-1853-2952. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35577054/

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