幼児における早期食物介入あるいは保湿剤の使用は食物アレルギーを予防できますか?(RCT; PreventADALL試験; Lancet 2022)

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早期食物介入あるいは保湿剤の使用は食物アレルギーを予防できるのか?

食物アレルギーの一次予防において、アレルゲン食品の早期導入は有望と考えられています。しかし、食品の種類によって試験結果が異なるため、一貫した結果は得られていません。

そこで今回は、一般集団の乳児における早期の食物導入または通常の皮膚軟化(保湿)剤の塗布が食物アレルギーのリスクを低下させるかどうかについて検証したPreventADALL試験の結果をご紹介します。

本試験の対象は18週の定期超音波検査で出生前に募集した女性の乳児であり、出生時に以下の群にクラスターランダム化されました。
(1)非介入群
(2)皮膚介入群(皮膚エモリエント剤;入浴剤および顔面クリーム;生後2週から9ヵ月未満、いずれも週4回以上)
(3)食物介入群(生後3ヵ月からピーナッツ、牛乳、小麦および卵を早期に補完摂取)
(4)複合介入群(皮膚および食物介入群)

本試験の主要アウトカムは、生後36ヵ月の時点おける介入した食品に対するアレルギーでした。

試験結果から明らかになったことは?

2,701人を妊娠した女性2,697人を募集し、その中から2015年4月14日から2017年4月11日の間に2397例の新生児が登録されました。これらの乳児のうち、597例を未介入群に、575例を皮膚介入群に、642例を食物介入群に、583例を複合介入群にランダムに割り付けました。非介入群、食物介入群、皮膚介入群のそれぞれで1例が同意を取り下げたため、いずれの解析にも含まれませんでした。

非介入群皮膚介入群食物介入群複合介入群
例数597例575例642例583例
食物アレルギーの診断14/596例
(2.3%)
17/574例
(3.0%)
6/641例
(0.9%)
7/583例
(1.2%)

食物アレルギーと診断されたのは44例で、非介入群では596例中14例(2.3%)、皮膚介入群では574例中17例(3.0%)、食物介入群では641例中6例(0.9%)、複合介入群では583例中7例(1.2%)でした。

ピーナッツアレルギーは32例、卵アレルギーは12例、牛乳アレルギーは4例と診断されました(小麦アレルギーは認められませんでした)。

食物アレルギーの有病率
食物介入群 vs. 非介入群リスク差 -1.6%、95%CI -2.7 〜 -0.5
オッズ比 [OR] 0.4、95%CI 0.2 〜 0.8
食物介入群 vs. 皮膚介入群リスク差 0.4%、95%CI -0.6 〜 1.5
OR 1.3、95%CI 0.7 〜 2.3

食物アレルギーの有病率は、食物介入群では非介入群と比較して減少しましたが(リスク差 -1.6%、95%CI -2.7 〜 -0.5; オッズ比 [OR] 0.4、95%CI 0.2 〜 0.8)、皮膚介入群と比較して減少せず(0.4%、95%CI -0.6 〜 1.5; OR 1.3、95%CI 0.7 〜 2.3)、有意な交互作用は認められませんでした(p=1.0)。

小児1例の食物アレルギーを予防するためには、63例の小児でアレルゲン食品に早期に触れることが必要でした(NNT=63)。

重篤な有害事象は観察されませんでした。

コメント

さまざまな食品に対して、食物アレルギーの一次予防が求められます。一次予防のためには、アレルゲン食品の早期導入が行われ、生後3ヵ月を過ぎた頃から離乳食として提供されることが多いと考えられます。しかし、食品の種類によって試験結果が異なるため、一貫した結果は得られていません。

さて、本試験結果によれば、生後3ヵ月からアレルゲン食品(ピーナッツ、牛乳、小麦および卵)を摂取させることで、一般集団における36ヵ月後の食物アレルギーが減少しました。これらのアレルゲン成分を含む食品に対しては、やはり早期に摂取させることで食物アレルギーの発症を予防できるようです。

ただし、皮膚に接触させることは避けた方が良いと考えられます。アレルゲン食品が皮膚に頻回に接触することで、接触性皮膚炎などのアレルギー症状が引き起こされることが知られています。あくまでも経口摂取した場合の試験結果であることをおさえておきましょう。

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✅まとめ✅ 生後3ヵ月からアレルゲン食品(ピーナッツ、牛乳、小麦および卵)を摂取させることで、一般集団における36ヵ月後の食物アレルギーが減少した。

根拠となった試験の抄録

背景:アレルゲン食品の早期導入による食物アレルギーの一次予防は有望と思われる。我々は、一般集団の乳児における早期の食物導入または通常の皮膚軟化剤の塗布が食物アレルギーのリスクを低下させるかどうかを明らかにすることを目的とした。

方法:この2×2要因クラスターランダム化比較試験は、ノルウェーのオスロ大学病院とØstfold Hospital Trust(オスロ)、およびスウェーデンのカロリンスカ大学病院(ストックホルム)で実施された。18週の定期超音波検査で出生前に募集した女性の乳児を、出生時に以下の群にクラスターランダム化した:(1)介入なし群;(2)皮膚介入群(皮膚エモリエント剤;入浴剤および顔面クリーム;生後2週から9ヵ月未満、いずれも週4回以上);(3)食物介入群(生後3ヵ月からピーナッツ、牛乳、小麦および卵を早期に補完摂取);(4)複合介入群(皮膚および食物介入群)。
参加者は、92の地理的エリアと8つの3ヵ月の時間ブロックのクラスターに基づくコンピュータ生成のランダム化により、1:1:1:1にランダムに割り当てられた。臨床評価を行う研究担当者は、群割り付けをマスクされた。
主要アウトカムは、生後36ヵ月の時点おける介入した食品に対するアレルギーであった。主要な有効性の解析はintention-to-treat分析により行われ、同意を取り下げた3名を除き、ランダムに割り付けられたすべての参加者が含まれた。本試験は、ORAACLE(the Oslo Research Group of Asthma and Allergy in Childhood; the Lung and Environment)内で実施された試験である。この研究は、ClinicalTrials.gov: NCT02449850として登録されている。

調査結果:2,701人を妊娠した女性2,697人を募集し、その中から2015年4月14日から2017年4月11日の間に2397例の新生児が登録された。これらの乳児のうち、597例を介入なし群に、575例を皮膚介入群に、642例を食物介入群に、583例を複合介入群にランダムに割り付けた。無介入群、食物介入群、皮膚介入群のそれぞれで1例が同意を取り下げたため、いずれの解析にも含まれなかった。
食物アレルギーと診断されたのは44例で、非介入群では596例中14例(2.3%)、皮膚介入群では574例中17例(3.0%)、食物介入群では641例中6例(0.9%)、複合介入群では583例中7例(1.2%)であった。ピーナッツアレルギーは32例、卵アレルギーは12例、牛乳アレルギーは4例と診断された。小麦アレルギーはなかった。食物アレルギーの有病率は、食物介入群では食物介入なし群と比較して減少したが(リスク差 -1.6% [95%CI -2.7 〜 -0.5]; オッズ比 [OR] 0.4 [95%CI 0.2 〜 0.8])、皮膚介入群と比較して減少せず(0.4% [95%CI -0.6 〜 1.5]; OR 1.3 [95%CI 0.7 〜 2.3] )、有意な相互作用を認めなかった(p=1.0)。小児1例の食物アレルギーを予防するためには、63例の小児でアレルゲン食品に早期に触れることが必要であった。重篤な有害事象は観察されなかった。

解釈:生後3ヵ月からアレルゲン食品に接触させることで、一般集団における36ヵ月後の食物アレルギーを減少させることができた。我々の結果は、一般的なアレルゲン食品の早期導入が食物アレルギー予防のための安全かつ効果的な戦略であることを支持するものである。

引用文献

Early food intervention and skin emollients to prevent food allergy in young children (PreventADALL): a factorial, multicentre, cluster-randomised trial
Håvard Ove Skjerven et al. PMID: 35753340 DOI: 10.1016/S0140-6736(22)00687-0
Lancet. 2022 Jun 25;399(10344):2398-2411. doi: 10.1016/S0140-6736(22)00687-0.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35753340/

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