高齢の関節リウマチ患者の心血管リスクにおけるヒドロキシクロロキン vs. メトトレキサート(PSマッチデータベース研究; J Am Coll Cardiol. 2022)

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高齢の関節リウマチ患者の心血管リスクにおけるヒドロキシクロロキン

ヒドロキシクロロキンは、心血管系リスクに関する限られたエビデンスにもかかわらず、関節リウマチの第一選択薬としてしばしば使用されています。したがって、他の薬剤と比較した場合のヒドロキシクロロキンの安全性検証が求められます。

そこで今回は、関節リウマチ患者を対象に、ヒドロキシクロロキンとメトトレキサートとの心血管系安全性比較を行ったデータベース研究の結果をご紹介します。

本試験では、メディケアのデータ(2008~2016年)を用いて、ヒドロキシクロロキンまたはメトトレキサートが開始された、傾向スコアをマッチさせた65歳以上の関節リウマチ患者54,462例が同定されました。本試験の主要アウトカムは、突然の心停止または心室性不整脈(SCA/VA)および主要有害心血管イベント(MACE)でした。副次的アウトカムは、心血管系死亡、全死亡、心筋梗塞、脳卒中、入院心不全(HF)であり、また、HF既往による治療効果の修飾についても検討されました。

試験結果から明らかになったことは?

【全体集団におけるリスク】ハザード比
(ヒドロキシクロロキン vs. メトトレキサート)
突然の心停止または心室性不整脈HR 1.03
(95%CI 0.79〜1.35
MACEHR 1.07
(95%CI 0.97〜1.18

ヒドロキシクロロキンはメトトレキサートと比較して、突然の心停止または心室性不整脈(SCA/VA)のリスク(HR 1.03、95%CI 0.79〜1.35)、MACE(HR 1.07、95%CI 0.97〜1.18)と関連はありませんでした。

【HF既往集団におけるリスク】ハザード比
(ヒドロキシクロロキン vs. メトトレキサート)
MACEHR 1.30
(95%CI 1.08〜1.56
心血管死亡HR 1.34
(95%CI 1.06〜1.70
全死亡HR 1.22
(95%CI 1.04〜1.43
心筋梗塞HR 1.74
(95%CI 1.25〜2.42
HFによる入院HR 1.29
(95%CI 1.07〜1.54

心不全(HF)の既往がある患者では、ヒドロキシクロロキン開始者はメトトレキサート開始者と比較し、MACE(HR 1.30、95%CI 1.08〜1.56)、心血管死亡(HR 1.34、95%CI 1.06〜1.70)、全死亡(HR 1.22、95%CI 1.04〜1.43)、心筋梗塞(HR 1.74、95%CI 1.25〜2.42) 、HFによる入院(HR 1.29、95%CI 1.07〜1.54) のリスクがより高いことが示されました。

ヒドロキシクロロキン投与開始者でHFによる入院リスク(HR 1.57、95%CI 1.30〜1.90)が上昇したことを除いて、心血管リスクはHFの既往がない患者でも同様でした。

コメント

日本において、ヒドロキシクロロキン(商品名:プラケニル)は皮膚エリテマトーデス、全身性エリテマトーデスに対して適応を有しています。一方、米国などでは関節リウマチに対しても使用されています。ヒドロキシクロロキンはQT延長や心筋症を引き起こすことが報告されていますが、そのリスクの程度については充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、高齢の関節リウマチ患者において、ヒドロキシクロロキンとメトトレキサートは突然の心停止または心室性不整脈(SCA/VA)およびMACEのリスクについて同等でした。一方、心不全(HF)の既往がある場合においては、ヒドロキシクロロキンの投与開始者でMACE、心血管死亡、全死亡、心筋梗塞のリスクが高くなることが示されました。HFの既往の有無にかかわらず、ヒドロキシクロロキン投与開始者ではHF入院リスクの上昇が認められました。

本試験はあくまでも相関関係を示したに過ぎませんが、メトトレキサートと比較して、ヒドロキシクロロキンを使用する場合に心血管リスクに注意した方が良いと考えられます。特に心不全の既往を有する患者においてはヒドロキシクロロキンの使用は可能な限り避けた方が良いかもしれません。エビデンスの集積が待たれるところです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 心不全の既往がある場合、ヒドロキシクロロキン使用によりMACE、心血管死亡、全死亡、心筋梗塞のリスクが高くなることが示された。また、心不全による入院については、既往の有無に関わらず

根拠となった試験の抄録

背景:ヒドロキシクロロキンは、心血管系リスクに関する限られたエビデンスにもかかわらず、関節リウマチの第一選択薬としてしばしば使用されている。

目的:関節リウマチ患者を対象に、ヒドロキシクロロキンとメトトレキサートとの心血管系安全性比較試験を実施した。

方法:メディケアのデータ(2008~2016年)を用いて、ヒドロキシクロロキンまたはメトトレキサートが開始された、傾向スコアをマッチさせた65歳以上の関節リウマチ患者54,462例を同定した。
主要アウトカムは、突然の心停止または心室性不整脈(SCA/VA)および主要有害心血管イベント(MACE)であった。副次的アウトカムは、心血管系死亡、全死亡、心筋梗塞、脳卒中、入院心不全(HF)であった。また、HFの既往による治療効果の修飾についても検討した。

結果:ヒドロキシクロロキンはメトトレキサートと比較して、SCA/VAのリスク(HR 1.03、95%CI 0.79〜1.35)、MACE(HR 1.07、95%CI 0.97〜1.18)と関連はなかった。HFの既往がある患者では、ヒドロキシクロロキン開始者はメトトレキサート開始者と比較し、MACE(HR 1.30、95%CI 1.08〜1.56)、心血管死亡(HR 1.34、95%CI 1.06〜1.70)、全死亡(HR 1.22、95%CI 1.04〜1.43)、心筋梗塞(HR 1.74、95%CI 1.25〜2.42) 、HFによる入院(HR 1.29、95%CI 1.07〜1.54) のリスクがより高かった。ヒドロキシクロロキン投与開始者でHFによる入院リスク(HR 1.57、95%CI 1.30〜1.90)が上昇したことを除いて、心血管リスクは、HFの既往がない患者でも差がなかった。

結論:高齢の関節リウマチ患者において、ヒドロキシクロロキンとメトトレキサートはSCA/VAおよびMACEのリスクが同等であったが、ヒドロキシクロロキンの投与開始者でHFの既往がある場合、MACE、心血管死亡、全死亡、心筋梗塞のリスクが高くなることが示された。HFの既往の有無にかかわらず、ヒドロキシクロロキン投与開始者ではHF入院リスクの上昇が認められた。

引用文献

Cardiovascular Risks of Hydroxychloroquine vs Methotrexate in Patients With Rheumatoid Arthritis
Elvira D’Andrea et al.
J Am Coll Cardiol. 2022 Jul, 80 (1) 36–46
ー 続きを読む https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2022.04.039

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