軽症から中等症の血液悪性腫瘍患者のニューモシスチス・イロベチイ肺炎に対するトリメトプリム-スルファメトキサゾールの減量投与は有効ですか?(後向き研究; Clin Infect Dis. 2022)

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免疫機能が低下した血液悪性腫瘍患者のニューモシスチス肺炎に対するTMP-SMX減量投与は有効なのか?

悪性腫瘍患者など免疫機能が低下している集団においては、ニューモシスチス・イロベチイなどによる日和見感染が起こりやすく重症化しやすいことから、抗菌薬の投与が求められます。ニューモシスチス・イロベチイ肺炎(Pneumocystis jirovecii pneumonia, PJP)の治療には高用量(トリメトプリム換算で15~20mg/kg/日)のスルファメトキサゾール/トリメトプリム(SMX/TMP; ST)合剤が第一選択薬として使用されていますが、その副作用発現頻度は20〜85%と高く継続が困難となり他剤への変更を余儀なくされる症例も多いことが報告されています(clinicalinfo.hiv.gov)。

近年の研究により、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(TMP-SMX)の減量投与がPJPの治療に有効であることが報告されています。しかし、症例数の少ない血液腫瘍患者に対するデータは不足しています。

そこで今回は、スウェーデンの6つの大学病院で2013年から2017年の間にPJPを発症したすべての成人血液腫瘍患者を対象にTMP 7.5~15mg/kg/日(減量)投与とTMP 15~20mg/kg/日(標準量)投与を腎機能補正後に比較検討したレトロスペクティブ研究の結果をご紹介します。本試験の主要評価項目は、ベースラインから8日目までの呼吸機能(ΔPaO2/FiO2)の変化でした。副次的評価項目は、8日目における臨床的失敗および/または死亡、30日目における死亡でした。

試験結果から明らかになったことは?

対象患者113例のうち、80例が減量投与を受け、33例が標準投与を受けました。全コホートでの30日死亡率は14%でした。

TMP 7.5~15mg/kg/日
(減量群)
TMP 15~20mg/kg/日
(標準量群)
ベースラインから8日目までの
呼吸機能(ΔPaO2/FiO2)の変化
-13.6mmHg
(95%CI -56.7 〜 -29.5
-9.4mmHg
(95%CI -50.5 〜 -31.7
8日目における
臨床的失敗および/または死亡
18%21%
30日目における死亡14%15%

8日目のΔPaO2/FiO2には、調整回帰モデルで潜在的交絡因子の調整前後も、治療群間で臨床的に関連する差はありませんでした(それぞれ-13.6mmHg[95%CI -56.7 〜 -29.5]および -9.4mmHg[95%CI -50.5 〜 -31.7])。

8日目の臨床的失敗および/または死亡、30日死亡率は、それぞれ18% vs. 21%、14% vs. 15%で、両群間に有意差はありませんでした。

PaO2/FiO2>200mmHgと定義された軽症から中等症の肺炎患者において、減量投与を受けた44例全員が30日目に生存していました。

コメント

免疫機能低下集における日和見感染は一般的であり、予防・治療戦略の確率が求められます。現在のところ治療の第一選択薬はST合剤ですが、副作用の発現頻度が高いことから、実臨床における課題となっています。

さて、本試験結果によれば、血液腫瘍患者113例において、TMP-SMXの減量投与は軽症から中等症のニューモシスチス肺炎に対して有効であることが示されました。後向き研究かつ副次評価項目の結果ではありますが、死亡リスクに差がないことは非常に重要な結果です。論文の抄録からは副作用あるいは有害事象の発現頻度がどの程度であったのかはわかりませんが、減量群の方が低いことが推測されます。ただし、本試験はスウェーデンの大学病院6施設での後向き解析の結果です。追試が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 後向き研究の結果、血液腫瘍患者113例において、TMP-SMXの減量投与は軽症から中等症のニューモシスチス肺炎に対して有効であり、安全であった。

根拠となった試験の抄録

背景:近年の研究により、TMP-SMXの減量投与がニューモシスチス・イロベチイ肺炎(Pneumocystis jirovecii pneumonia, PJP)の治療に有効であることが報告されているが、血液腫瘍の患者に対するデータは不足している。

方法:このレトロスペクティブ研究は、スウェーデンの6つの大学病院で2013年から2017年の間にPJPを発症したすべての成人血液腫瘍患者を対象とした。トリメトプリム(TMP)7.5~15mg/kg/日(減量)投与とTMP 15~20mg/kg/日(標準量)投与を腎機能補正後に比較検討した。
主要評価項目は、ベースラインから8日目までの呼吸機能(ΔPaO2/FiO2)の変化とした。副次的評価項目は、8日目における臨床的失敗および/または死亡、30日目における死亡とした。

結果:対象患者113例のうち、80例が減量投与を受け、33例が標準投与を受けた。全コホートでの30日死亡率は14%であった。8日目のΔPaO2/FiO2には、調整回帰モデルで潜在的交絡因子の調整前後も、治療群間で臨床的に関連する差はなかった(それぞれ-13.6mmHg[95%CI -56.7 〜 -29.5]および -9.4mmHg[95%CI -50.5 〜 -31.7])。8日目の臨床的失敗および/または死亡、30日死亡率は、それぞれ18% vs. 21%、14% vs. 15%で、両群間に有意差はなかった。PaO2/FiO2>200mmHgと定義された軽症から中等症の肺炎患者において、減量投与を受けた44例全員が30日目に生存していた。

結論:血液腫瘍患者113例において、TMP-SMXの減量投与は軽症から中等症のPJPに対して有効であり、安全であった。

キーワード:ニューモシスチス肺炎、血液悪性腫瘍、治療成績、トリメトプリム・スルファメトキサゾール

引用文献

Treatment with reduced dose trimethoprim-sulfamethoxazole is effective in mild to moderate Pneumocystis jirovecii pneumonia in patients with hematologic malignancies
Helena Hammarström et al. PMID: 35594562 DOI: 10.1093/cid/ciac386
Clin Infect Dis. 2022 May 20;ciac386. doi: 10.1093/cid/ciac386. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35594562/

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