男性虚血性心疾患患者におけるホスホジエステラーゼ5阻害剤と硝酸薬の併用投与による有害事象の発生はどのくらい?(デンマーク人口ベース研究; 症例クロスオーバー試験; Ann Intern Med. 2022)

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硝酸薬とPDE5阻害薬の併用は禁忌だが、、、

勃起不全に対してホスホジエステラーゼ5阻害薬であるシルデナフィル(商品名:バイアグラ)等が使用されています。日本だけでなく、海外においても経口有機硝酸薬(硝酸薬)とPDE5阻害薬の併用は禁忌とされています。この根拠は、両薬剤を併用すると降圧作用が増強されるためです(PMID: 10898408)。しかし、併用による予後への影響を検討したデータは充分ではありません。

そこで今回は、硝酸薬とPDE5阻害薬の併用の時間的傾向を測定し、心血管予後と硝酸薬とPDE5阻害薬の併用の関連性を測定したケースクロスオーバーデザインを用いた試験結果をご紹介します。本試験は2000年から2018年までのデンマーク人患者を対象とした全国規模の研究であり、対象は虚血性心疾患(IHD)の国際疾病分類第10版(ICD-10)コードを有する男性患者(硝酸薬の継続処方とPDE5阻害薬の新規処方を有する患者を含む)でした。本試験の評価項目は、1)心停止、ショック、心筋梗塞、虚血性脳卒中、急性冠動脈造影、2)失神、狭心症、薬物関連有害事象、の2つの複合アウトカムでした。

試験結果から明らかになったことは?

2000年から2018年まで、IHDの男性患者249,541例が確認されました。このうち、硝酸薬の処方が継続している患者は42,073例でした。

この期間中に、硝酸薬を服用しているIHD患者におけるPDE5阻害薬の処方率は、2000年には年間100人あたり平均0.9処方(95%CI 0.5~1.2)でしたが、2018年には19.5処方(CI 18.0~21.1)へ増加しました。

オッズ比 [OR]
(95%CI)
複合アウトカム1)
(心停止、ショック、心筋梗塞、虚血性脳卒中、急性冠動脈造影)
OR 0.58
0.28~1.13
複合アウトカム2)
(失神、狭心症、薬物関連有害事象)
OR 0.73
0.40~1.32

硝酸薬とPDE5阻害薬の共処方と、いずれの複合転帰のリスクにも統計的に有意な関連は認められませんでした(オッズ比 [OR] :最初の転帰で0.58 [CI 0.28~1.13]、2番目の転帰でOR 0.73 [CI 0.40~1.32] )。

コメント

降圧作用が増強されることから、経口有機硝酸薬(硝酸薬)とPDE5阻害薬の併用は禁忌とされていますが、実臨床では併用されているケースがあると考えられます。降圧作用の増強が、心血管イベントを含め予後にどのような影響を及ぼすのかについては充分に検証されていません。

さて、本試験結果によれば、2000年から2018年にかけて、硝酸塩を服用しているデンマークの虚血性患者において、PDE5阻害薬の使用は20倍に増加していました。これらの薬剤の併用と心血管有害事象との間に統計的に有意な関連は示されませんでした。ただし、本試験結果のみをもって安全性が示されたわけではありません。また本試験では、あくまでもデータベース上、硝酸薬とPDE5阻害剤の処方が同時に満たされていることを併用とみなしていますので、実際に併用したのか、使用回数や期間がどのくらいであったのかについて考慮されているか不明です。また降圧作用がどの程度増強され、これに関連した事象がどの程度発生したのかについても不明です。したがって、両薬剤併用による安全性が担保されたわけではありません。ただし、PDE5阻害薬の半減期、体内からの消失時間を考慮すると、そこまで予後に影響しないのかもしれません。いずれにせよ追試が求められるところであると考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 2000年から2018年にかけて、硝酸塩を服用しているデンマークの虚血性患者において、PDE5阻害薬の使用は20倍に増加した。これらの薬剤の併用と心血管有害事象との間に統計的に有意な関連は確認できなかったが、安全性が示されたわけではないことから追試が求められる。

根拠となった試験の抄録

背景:経口有機硝酸薬(硝酸薬)とホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害薬の併用は禁忌である。

目的:硝酸薬とPDE5阻害薬の併用の時間的傾向を測定し、心血管予後と硝酸薬とPDE5阻害薬の併用の関連性を測定する。

試験デザイン:ケースクロスオーバーデザイン

試験設定:2000年から2018年までのデンマーク人患者を対象とした全国規模の研究

対象患者:虚血性心疾患(IHD)の国際疾病分類第10版(ICD-10)コードを有する男性患者(硝酸薬の継続処方とPDE5阻害薬の新規処方を有する患者を含む)。

測定方法:1)心停止、ショック、心筋梗塞、虚血性脳卒中、急性冠動脈造影、2)失神、狭心症、薬物関連有害事象、の2つの複合アウトカムが測定された。

結果:2000年から2018年まで、IHDの男性患者249,541例が確認された。このうち、硝酸薬の処方が継続している患者は42,073例であった。この期間、硝酸薬を服用しているIHD患者におけるPDE5阻害薬の処方率は、2000年には年間100人あたり平均0.9処方(95%CI 0.5~1.2)だったが、2018年には19.5処方(CI 18.0~21.1)へ増加した。硝酸薬とPDE5阻害薬の共処方と、いずれの複合転帰のリスクにも統計的に有意な関連は認められなかった(オッズ比 [OR] :最初の転帰で0.58 [CI 0.28~1.13]、2番目の転帰でOR 0.73 [CI 0.40~1.32] )。

試験の限界:硝酸塩とPDE5阻害剤の処方が同時に満たされていることは、併用と同じであるという仮定がなされた。

結論:2000年から2018年にかけて、硝酸薬を服用しているデンマークのIHD患者において、PDE5阻害薬の使用は20倍に増加した。これらの薬剤の併用と心血管有害事象との間に統計的に有意な関連は確認できなかった。

主な資金源:Ib Mogens Kristiansens Almene FondおよびHelsefonden

引用文献

Adverse Events Associated With Coprescription of Phosphodiesterase Type 5 Inhibitors and Oral Organic Nitrates in Male Patients With Ischemic Heart Disease : A Case-Crossover Study
Anders Holt et al. PMID: 35436155 DOI: 10.7326/M21-3445
Ann Intern Med. 2022 Apr 19. doi: 10.7326/M21-3445. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35436155/

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