円形脱毛症に対するバリシチニブの安全性・有効性は?(RCT; BRAVE-AA1/BRAVE-AA2試験; N Engl J Med. 2022)

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自己免疫疾患である円形脱毛症に対する経口JAK阻害薬バリシチニブの効果は?

円形脱毛症は、頭皮、眉毛、まつ毛の急速な脱毛を特徴とする自己免疫疾患です。その治療法は限られています。バリシチニブは、経口の選択的なヤヌスキナーゼ1および2の可逆的阻害剤であり、円形脱毛症の発症に関与するサイトカインシグナルを阻害し、円形脱毛症に有効である可能性があります。

そこで今回は、SALT(Severity of Alopecia Tool)スコア50以上の重症円形脱毛症(範囲:0(頭皮脱毛なし)~100(完全頭皮脱毛))の成人を対象とした2件のランダム化プラセボ対照第3相試験(BRAVE-AA1およびBRAVE-AA2)の結果をご紹介します。患者は、1日1回投与のバリシチニブ4mg、バリシチニブ2mg、またはプラセボに3:2:2の割合でランダムに割り付けられました。
主要評価項目は、36週目のSALTスコアが20以下でした。

試験結果から明らかになったことは?

BRAVE-AA1試験には654例、BRAVE-AA2試験には546例の患者が登録されました。

バリシチニブ
4mg
バリシチニブ
2mg
プラセボ
(BRAVE-AA1試験)
36週目のSALTスコアが
20以下となった患者の推定割合
38.8%22.8%6.2%
プラセボとの差
(95%CI)
32.6%
25.6~39.5
P<0.001
16.6%
9.5~23.8
P<0.001
(BRAVE-AA2試験)
36週目のSALTスコアが
20以下となった患者の推定割合
35.9%19.4%3.3%
プラセボとの差
(95%CI)
32.6%
25.6~39.6
P<0.001
16.1%
9.1~23.2
P<0.001

36週目のSALTスコアが20以下となった患者の推定割合は、BRAVE-AA1ではバリシチニブ4mgで38.8%、2mgで22.8%、プラセボで6.2%、BRAVE-AA2ではそれぞれ、35.9%、19.4%、3.3%でした。
BRAVE-AA1では、4mgバリシチニブとプラセボの差は32.6%(95%信頼区間[CI] 25.6~39.5)、2mgバリシチニブとプラセボの差は16.6%(95%CI 9.5~23.8)でした(各用量のプラセボに対するP<0.001)。
BRAVE-AA2 では、対応する値は32.6%(95%CI 25.6~39.6)と16.1%(95%CI 9.1~23.2) でした(プラセボに対する各用量の P<0.001)。
バリシチニブ4mg投与時の副次的アウトカムは、概ねプラセボに対して有利でした。

ざ瘡、クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇、低・高密度リポ蛋白コレステロール値の上昇は、プラセボと比較してバリシチニブでより一般的でした。

コメント

JAKは様々な炎症性疾患に関与していることから、JAK阻害薬による有効性に期待が寄せられています。

さて、本試験結果によれば、重症円形脱毛症患者を対象とした2件の第3相試験において、経口バリシチニブは、36週時点の発毛に関してプラセボより優れていることが示されました。安全性においては、易感染性やCK上昇、LDL-C・HDL-Cの上昇が示されました。これまでの臨床試験の結果から「静脈血栓塞栓症」のリスク増加について報告されています。また一部のJAK阻害薬では発癌リスクの懸念も示されていますので、引き続きモニタリングが必要な項目であると考えられます。

ちなみにJAK阻害薬であるバリシチニブは2022年4月現在、以下の適応を有しており、円形脱毛症に対する適応は有していません。

○既存治療で効果不十分な下記疾患
・関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
・アトピー性皮膚炎 注)
〇SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)

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✅まとめ✅ 重症円形脱毛症患者を対象とした2件の第3相試験において、経口バリシチニブは、36週時点の発毛に関してプラセボより優れていた。

根拠となった試験の抄録

背景:円形脱毛症は、頭皮、眉毛、まつ毛の急速な脱毛を特徴とする自己免疫疾患で、その治療法は限られている。バリシチニブは、経口の選択的なヤヌスキナーゼ1および2の可逆的阻害剤であり、円形脱毛症の発症に関与するサイトカインシグナルを阻害する可能性がある。

方法:我々は、SALT(Severity of Alopecia Tool)スコア50以上の重症円形脱毛症(範囲:0(頭皮脱毛なし)~100(完全頭皮脱毛))の成人を対象とした2件のランダム化プラセボ対照第3相試験(BRAVE-AA1およびBRAVE-AA2)を実施した。患者は、1日1回投与のバリシチニブ4mg、バリシチニブ2mg、またはプラセボに3:2:2の割合でランダムに割り付けられた。
主要評価項目は、36週目のSALTスコア*が20以下であることとした。

*SALTスコア:頭皮を4分割(左側、右側、頭頂部、後頭部)して各区分の頭皮表面積(SSA) に占める脱毛面積の割合から全脱毛面積の割合を算出する「総合的重症度スコア」である。一区分あたりの脱毛割合を示した後、その値を各区分の毛髪の割合(各側頭部18%、頭頂部40%、後頭部24%)で乗じ、その値を合計して、頭皮の総脱毛割合又はSALTスコアを作成する。0~100点の範囲で頭皮全体の面積に占める脱毛面積の割合を示す(0=脱毛がみられない、100=全頭脱毛)。

結果:BRAVE-AA1試験には654例、BRAVE-AA2試験には546例の患者が登録された。36週目のSALTスコアが20以下となった患者の推定割合は、BRAVE-AA1ではバリシチニブ4mgで38.8%、2mgで22.8%、プラセボで6.2%、BRAVE-AA2ではそれぞれ、35.9%、19.4%、3.3%であった。
BRAVE-AA1では、4mgバリシチニブとプラセボの差は32.6%ポイント(95%信頼区間[CI] 25.6~39.5)、2mgバリシチニブとプラセボの差は16.6%ポイント(95%CI 9.5~23.8)となった(各用量のプラセボに対するP<0.001)。
BRAVE-AA2 では、対応する値は32.6%(95%CI 25.6~39.6)と16.1%(95%CI 9.1~23.2) でした(プラセボに対する各用量の P<0.001)。
バリシチニブ4mg投与時の副次的アウトカムは、概ねバリシチニブがプラセボに対して有利であった。ざ瘡、クレアチンキナーゼ値の上昇、低・高密度リポ蛋白コレステロール値の上昇は、プラセボと比較してバリシチニブでより一般的であった。

結論:重症円形脱毛症患者を対象とした2件の第3相試験において、経口バリシチニブは、36週時点の発毛に関してプラセボより優れていた。円形脱毛症に対するバリシチニブの有効性と安全性を評価するためには、より長期の臨床試験が必要である。

資金提供:Eli Lilly社
ライセンス元:Incyte社

ClinicalTrials.gov 番号:NCT03570749およびNCT03899259

引用文献

Two Phase 3 Trials of Baricitinib for Alopecia Areata
Brett King et al. PMID: 35334197 DOI: 10.1056/NEJMoa2110343
N Engl J Med. 2022 Mar 26. doi: 10.1056/NEJMoa2110343. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35334197/

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