高血圧治療におけるアダラートとジェネリック医薬品に差はありますか?(後向き多施設共同コホート研究; J Clin Hypertens (Greenwich). 2022)

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アダラート(長時間作用型)のジェネリック医薬品は、先発品と同様の効果が得られるのか?

先発医薬品と同じ有効成分を含むジェネリック医薬品は、患者や支払者にとってより低コストで同様の治療を提供する機会を提供し、医療政策や経済に大きな影響を与えます。ジェネリック医薬品は、世界中で日常的に使用されるようになってきており、米国では全処方箋の80%以上を占めています(PMID: 24991338)。

規制当局に製造販売承認を申請するためには、ジェネリック医薬品メーカーは、ブランド医薬品(先発品、先行品)との同等性および生物学的同等性を科学的に証明する必要がありますが、米国食品医薬品局による「略式」承認のためには、通常、24〜36例の健常人を対象とする生物学的同等性試験で十分な結果が得られることが必要です(FDA Bioequivalence Standards)。 ジェネリック医薬品の承認には、安全性と有効性を証明する前臨床試験や臨床試験のデータが必須ではないため、ブランド医薬品との医薬品としての同等性や生物学的同等性が、同等の臨床結果につながるかどうかは不明です。

そこで今回は、ジェネリック医薬品とブランド医薬品であるニフェジピンの血圧降下作用と臨床効果を比較検討することを目的とした台湾の後向きコホート研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

傾向スコアマッチング後、ニフェジピンのジェネリック群、ブランド(アダラート)群ともに2,102例の患者から構成されました。

平均3年の追跡調査において、診察室での収縮期血圧(交互作用p=0.791)および拡張期血圧(交互作用p=0.689)の変化は、ニフェジピンのジェネリック群とブランド群の患者で有意差を認めませんでした。

ハザード比(HR)
95%信頼区間(CI)
p値
複合アウトカム
(全死亡、急性心筋梗塞、脳卒中、冠動脈再灌流、心不全による入院)
HR 0.98
(95%CI 0.85〜1.13
p=0.774
全死亡HR 1.22
(95%CI 0.97〜1.54)
p=0.090
急性心筋梗塞HR 0.87
(95%CI 0.58〜1.32)
p=0.523
脳卒中HR 0.97
(95%CI 0.73〜1.28)
p=0.828
冠動脈再灌流HR 0.96
(95%CI 0.69〜1.33)
p=0.785
心不全による入院HR 0.81
(95%CI 0.62〜1.05)
p=0.112

全死亡、急性心筋梗塞、脳卒中、冠動脈再灌流、心不全による入院の複合疾患について、両群間に有意差はありませんでした(ハザード比 0.98、95%信頼区間 0.85〜1.13、p=0.774)。

コメント

ジェネリック医薬品は、バイオシミラーと異なり臨床試験の実施が必須ではないことから、実臨床における有効性・安全性に懸念が抱かれることがあります。ブランド医薬品(先発品、先行品)との同等性および生物学的同等性が示されれば、ジェネリック医薬品の有効性・安全性は担保されるというのが大前提ではありますが、依然として関心の高いところです。

さて、本試験結果によれば、台湾の長庚記念病院の長庚研究データベースから特定された4,204例において、平均3年の追跡調査における診察室での収縮期血圧および拡張期血圧の変化に差は認められませんでした。さらに、心血管複合アウトカムについても、群間差は認められませんでした。

後向きコホート研究の結果であることから、あくまでも相関関係が示されたに過ぎませんが、貴重な報告です。血圧などのソフトアウトカムだけでなく、ハードアウトカムである心血管イベントについても同様であったことからアダラートのジェネリック医薬品の使用は問題なさそうです。

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✅まとめ✅ ニフェジピンの後発品は、高血圧患者の治療において、診察室血圧の低下および複合心血管系アウトカムに関して先発品と同等であった。

根拠っとなった試験の抄録

目的:本レトロスペクティブ多施設間データベース解析は、高血圧管理におけるニフェジピン後発品と先発品の血圧降下効果および臨床転帰を評価することを目的としたものである。

方法:2011年1月1日から2018年12月31日の間にジェネリックまたはブランド名のニフェジピンを処方された合計12,693例の患者を、台湾の長庚記念病院の長庚研究データベースから特定した。そのうち、2,112例(21.4%)がジェネリックのニフェジピンを処方されていた。

結果:傾向スコアマッチング後、ジェネリック群、ブランド群ともに2,102例の患者から構成された。平均3年の追跡調査において、診察室での収縮期血圧(交互作用p=0.791)および拡張期血圧(交互作用p=0.689)の変化は、ニフェジピンの後発品を投与された患者とブランド品の患者で有意差を認めなかった。全死亡、急性心筋梗塞、脳卒中、冠動脈再灌流、心不全による入院の複合疾患について、両群間に有意差はなかった(ハザード比 0.98、95%信頼区間 0.85〜1.13、p=0.774)。

結論:ニフェジピンの後発品は、高血圧患者の治療において、診察室血圧の低下および複合心血管系アウトカムに関して先発品と同等であった。

キーワード:血圧、ジェネリック医薬品、ニフェジピン、転帰

引用文献

Comparative effectiveness of generic nifedipine versus Adalat long-acting nifedipine for hypertension treatment: A multi-institutional cohort study
Ying-Chang Tung et al. PMID: 35384251 DOI: 10.1111/jch.14478
J Clin Hypertens (Greenwich). 2022 Apr 6. doi: 10.1111/jch.14478. Online ahead of print.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35384251/

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