救急部での急性片頭痛発作におけるイブプロフェンとバルプロ酸ナトリウム、どちらが優れていますか?(小規模DB-RCT; Am J Emerg Med. 2022)

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急性片頭痛発作におけるイブプロフェン vs. バルプロ酸ナトリウム

バルプロ酸ナトリウムとイブプロフェンは、急性片頭痛発作に伴う頭痛に有効な薬剤として知られていますが、どちらの薬剤が優れているのかについては充分に検討されていません。

そこで今回は、救急外来における急性片頭痛発作に対して、これら2剤を単回静脈内投与した際の有効性を比較検討した前向きランダム化比較二重盲検試験の結果をご紹介します。

本試験では、急性頭痛で救急部を受診し、国際頭痛分類による「前兆のない片頭痛」の基準を満たした18歳から65歳の患者が対象とされました。患者を2群をランダムに分け、バルプロ酸ナトリウム800mgまたはイブプロフェン800mgを150mLの通常食塩水で5分以上かけて単回点滴静注しました。痛みの数値評価尺度(NRS)を用いて、2時間にわたる痛みレベルの変化が評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

バルプロ酸ナトリウム群49例、イブプロフェン群50例の計99例が試験を終了し、そのデータを統計解析に含みました。治療後のΔNRS値の平均減少量は、バルプロ酸ナトリウム群の方がイブプロフェン群より統計的に有意に高く、その平均差は1.69[信頼区間(CI) 1.02〜2.37、p<0.001]、N0とN2間の平均差は3.61(CI 2.96〜4.26、p<0.001)、N0とN3間の平均差は4.11(CI 3.54〜4.67、p<0.001)、N0とN4間の平均差は3.92(CI 3.67〜4.46、p<0.001)でした。

主要評価項目である疼痛緩和を達成した患者数は、バルプロ酸ナトリウム群の方がイブプロフェン群より有意に多いことが示されました(p<0.001)。目標としたエンドポイントに到達した率を示すKaplan-Meier解析によると、2つの治療群の有効性に有意差が認められました(χ2=79.98、CI 80.35〜99.65; p=0.000)。

コメント

慢性頭痛の診療ガイドライン2013によれば「片頭痛急性期の治療は,薬物療法が中心である.治療薬として①アセトアミノフェン,②非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs),③エルゴタミン,④トリプタン,⑤制吐薬があり,片頭痛の重症度に応じた層別治療が推奨される.軽度~中等度の頭痛にはアスピリン,ナプロキセンなどのNSAIDsを使用する.次に中等度~重度の頭痛,または軽度~中等度の頭痛でも過去にNSAIDsの効果がなかった場合にはトリプタンが推奨される.(グレードA)」と記載されています。一方、片頭痛重症発作、発作重積の急性期治療においてバルプロ酸が用いられることがありますが、NSAIDsとの比較は充分になされていません。

さて、本試験結果によれば、急性頭痛で救急部を受診し、国際頭痛分類による「前兆のない片頭痛」の基準を満たした18歳から65歳の患者において、疼痛緩和を達成した患者数は、バルプロ酸ナトリウム群の方がイブプロフェン群より有意に多いことが示されました。やや小規模な検討結果ではありますが、二重盲検のランダム化比較試験であることから貴重な研究結果です。ただし日本において、バルプロ酸の注射製剤は販売されておらず、また片頭痛へのイブプロフェン静注製剤の使用は適応外です。

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✅まとめ✅ 急性頭痛で救急部を受診し、国際頭痛分類による「前兆のない片頭痛」の基準を満たした18歳から65歳の患者において、疼痛緩和を達成した患者数は、バルプロ酸ナトリウム群の方がイブプロフェン群より有意に多かった。

根拠となった試験の抄録

目的:バルプロ酸ナトリウムとイブプロフェンは、急性片頭痛発作に伴う頭痛に有効な薬剤として知られている。今回、救急外来における急性片頭痛発作に対して、これら2剤を単回静脈内投与した際の有効性を比較検討することを目的とした。

材料と方法:本研究は、前向きランダム化比較二重盲検試験として計画され、急性頭痛で救急部を受診し、国際頭痛分類による「前兆のない片頭痛」の基準を満たした18歳から65歳の患者を対象とした。患者を2群をランダムに分け、バルプロ酸ナトリウム800mgまたはイブプロフェン800mgを150mLの通常食塩水で5分以上かけて単回点滴静注した。痛みの数値評価尺度(NRS)を用いて、2時間にわたる痛みレベルの変化を評価した。

結果:バルプロ酸ナトリウム群49例、イブプロフェン群50例の計99例が試験を終了し、そのデータを統計解析に含めた。治療後のΔNRS値の平均減少量は、バルプロ酸ナトリウム群の方がイブプロフェン群より統計的に有意に高かった。その平均差は1.69[信頼区間(CI) 1.02〜2.37、p<0.001]、N0とN2間の平均差は3.61(CI 2.96〜4.26、p<0.001)、N0とN3間の平均差は4.11(CI 3.54〜4.67、p<0.001)、N0とN4間の平均差は3.92(CI 3.674.46、p<0.001)であった。主要評価項目である疼痛緩和を達成した患者数は、バルプロ酸ナトリウム群の方がイブプロフェン群より有意に多かった(p<0.001)。目標としたエンドポイントに到達した率を示すKaplan-Meier解析によると、2つの治療群の有効性に有意差が認められた(χ2=79.98、CI 80.35〜99.65; p=0.000)。

キーワード:イブプロフェン、片頭痛、前兆のない片頭痛、バルプロ酸ナトリウム

引用文献

Intravenous ibuprofen versus sodium valproate in acute migraine attacks in the emergency department: A randomized clinical trial
Sinem Dogruyol et al. PMID: 35313227 DOI: 10.1016/j.ajem.2022.02.046
Am J Emerg Med. 2022 Mar 4;55:126-132. doi: 10.1016/j.ajem.2022.02.046. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35313227/

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