SARS-CoV-2感染と産科合併症による重篤な母体罹患率および死亡率との関連性は?(後向きコホート研究; JAMA. 2022)

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妊婦におけるSARS-CoV-2感染は母体死亡や産科合併症リスクとなる?

SARS-CoV-2感染が重篤な産科疾患のリスクを特異的に増加させるかどうかは依然として不明です。したがって、SARS-CoV-2感染と一般的な産科合併症による母体の重篤な罹患率または死亡率との関連を評価することが求められています。

そこで今回は、SARS-CoV-2感染と産科合併症による重篤な母体罹患率および死亡率との関連性について検証した米国の後向き研究の結果をご紹介します。

本試験では、Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human DevelopmentのGestational Research Assessments of COVID-19 (GRAVID) Studyに参加する米国の17病院で2020年3月1日から12月31日(最終フォローアップは2021年2月11日まで)に出産した妊婦および産後患者14,104例が対象となりました。SARS-CoV-2の全患者を対象とし、同期間にランダムに選定した日に出産したSARS-CoV-2検査結果が陽性でない患者が比較されました。

試験結果から明らかになったことは?

対象患者 14,104例(平均年齢 29.7歳)のうち、2,352例がSARS-CoV-2感染症、11,752例がSARS-CoV-2検査で陽性ではありませんでした。

SARS-CoV-2検査陽性の妊婦陽性ではない妊婦
主要アウトカム13.4%9.2%
群間差4.2%
(95%CI 2.8%〜5.6%
調整相対リスク(aRR) aRR 1.41
(95%CI 1.23〜1.61

SARS-CoV-2検査結果が陽性でない患者と比較して、SARS-CoV-2感染は主要アウトカム(母体死亡または妊娠高血圧症候群、産後出血、SARS-CoV-2以外の感染症に関連する重篤な病的状態の複合)と有意に関連していました(13.4% vs. 9.2%; 差は 4.2% [95%CI 2.8%〜5.6%]; 調整相対リスク [aRR] 1.41 [95%CI 1.23〜1.61])。

5例の妊産婦死亡はすべてSARS-CoV-2群でした。SARS-CoV-2感染は帝王切開出産と有意な関連は認められませんでした(34.7% vs. 32.4%; aRR 1.05 [95%CI 0.99〜1.11] )。

SARS-CoV-2検査陽性の妊婦陽性ではない妊婦
主要アウトカム26.1%9.2%
群間差16.9%
(95%CI 13.3%〜20.4%
調整相対リスク(aRR) aRR 2.06
(95%CI 1.73〜2.46

SARS-CoV-2検査結果が陽性でない妊婦と比較して、中等度以上のCOVID-19重症患者(n=586)は、主要アウトカム(26.1% vs. 9.2%; 差は 16.9% [95%CI 13.3%〜20.4%]; aRR 2.06 [95%CI 1.73〜2.46] )および主な副次的アウトカムの帝王切開分娩(45.4% vs. 32.4%; 差は 12.8% [95%CI 8.7%〜16.8%]; aRR 1.17 [95%CI 1.07〜1.28])が、軽度または無症状の感染(n=1,766)は主要アウトカムと有意な関連を示しませんでした(9.2% vs. 9.2%;差は 0%[95%CI -1.4%~1.4%]; aRR 1.11[95%CI 0.94~1.32])または帝王切開出産(31.2% vs. 32.4%; 差 -1.4%[95%CI -3.6%~0.8%];aRR 1.00[95%CI 0.93~1.07])とは、有意な関連を示しませんでした。

コメント

妊婦や授乳婦においては、倫理的な側面から臨床試験の実施が困難であり、レジストリを含むコホート研究の結果が求められます。

さて、米国の17病院で妊娠中および出産後の人を対象にした後向き研究の結果、SARS-CoV-2感染は、母体死亡または産科合併症による重篤な病的状態の複合転帰のリスク上昇と関連していることが示されました。後向き研究の結果であることから、あくまでも仮説生成的な結果ではありますが、これまでの報告と矛盾しません。やはり妊婦においてもSARS-CoV-2感染により、様々なリスクが増加することは疑いようがないと考えられます。

妊婦においては、SARS-CoV-2感染により特に重篤化しやすいことから、基本的な感染予防策の実施が求められます。

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✅まとめ✅ 米国の17病院で妊娠中および出産後の人を対象にした後向き研究の結果、SARS-CoV-2感染は、母体死亡または産科合併症による重篤な病的状態の複合転帰のリスク上昇と関連していた。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:SARS-CoV-2感染が重篤な産科疾患のリスクを特異的に増加させるかどうかは依然として不明である。

目的:SARS-CoV-2感染と一般的な産科合併症による母体の重篤な罹患率または死亡率との関連を評価すること。

試験デザイン、設定、参加者:Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human DevelopmentのGestational Research Assessments of COVID-19 (GRAVID) Studyに参加する米国の17病院で2020年3月1日から12月31日(最終フォローアップは2021年2月11日まで)に出産した妊婦および産後患者14,104例を対象としたレトロスペクティブ・コホート研究。SARS-CoV-2の全患者を対象とし、同期間に無作為に選んだ日に出産したSARS-CoV-2検査結果が陽性でない患者と比較した。

曝露:SARS-CoV-2感染は、核酸または抗原の検査結果が陽性であることに基づいている。二次解析では、SARS-CoV-2感染者をさらに重症度別に層別化した。

主要アウトカムおよび指標:主要アウトカムは、母体死亡または妊娠高血圧症候群、産後出血、SARS-CoV-2以外の感染症に関連する重篤な病的状態の複合であった。主な副次的アウトカムは帝王切開による出産であった。

結果:対象患者 14,104例(平均年齢 29.7歳)のうち、2,352例がSARS-CoV-2感染症、11,752例がSARS-CoV-2検査で陽性ではなかった。SARS-CoV-2検査結果が陽性でない患者と比較して、SARS-CoV-2感染は主要アウトカムと有意に関連していた(13.4% vs. 9.2%; 差は 4.2% [95%CI 2.8%〜5.6%]; 調整相対リスク [aRR] 1.41 [95%CI 1.23〜1.61])。5例の妊産婦死亡はすべてSARS-CoV-2群であった。SARS-CoV-2感染は帝王切開出産と有意な関連はなかった(34.7% vs. 32.4%; aRR 1.05 [95%CI 0.99〜1.11] )。SARS-CoV-2検査結果が陽性でない人と比較して、中等度以上のCOVID-19 重症患者(n=586)は、主要アウトカム(26.1% vs. 9.2%; 差は 16.9% [95%CI 13.3%〜20.4%]; aRR 2.06 [95%CI 1.73〜2.46] )および主な副次的アウトカムの帝王切開分娩(45.4% vs. 32.4%; 差は 12.8% [95%CI 8.7%〜16.8%]; aRR 1.17 [95%CI 1.07〜1.28])が、軽度または無症状の感染(n=1,766)は主要アウトカムと有意な関連を示さなかった(9.2% vs. 9.2%;差0%[95%CI -1.4%~1.4%]; aRR 1.11[95%CI 0.94~1.32])または帝王切開出産(31.2% vs. 32.4%; 差 -1.4%[95%CI -3.6%~0.8%];aRR 1.00[95%CI 0.93~1.07])とは、有意な関連を示さなかった。

結論と関連性:米国の17病院で妊娠中および出産後の人を対象にした後向き研究の結果、SARS-CoV-2感染は、母体死亡または産科合併症による重篤な病的状態の複合転帰のリスク上昇と関連していた。

引用文献

Association of SARS-CoV-2 Infection With Serious Maternal Morbidity and Mortality From Obstetric Complications
Torri D Metz et al. PMID: 35129581 PMCID: PMC8822445 (available on 2022-08-07) DOI: 10.1001/jama.2022.1190
JAMA. 2022 Feb 22;327(8):748-759. doi: 10.1001/jama.2022.1190.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35129581/

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