日本人の非弁膜症性心房細動患者におけるエドキサバンの長期的な安全性と有効性は?(観察研究; ETNA-AF-Japan試験; J Arrhythm. 2021)

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日本人心房細動患者に対するエドキサバンの長期的な安全性・有効性は?

ランダム化臨床試験の結果、心房細動(AF)患者の脳卒中予防において、ワルファリンに対する直接経口抗凝固薬(DOAC)のアドバンテージが示されています(PMID: 19717844PMID: 21870978PMID: 21830957PMID: 24251359)。その結果、日本循環器学会ガイドライン(PMID: 24965079)、日本循環器学会・日本不整脈心電学会合同ガイドライン(不整脈薬物治療ガイドライン2020年版)、欧州不整脈心電協会ガイドライン(PMID: 29562325)では、非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の虚血性脳卒中予防の第一選択抗凝固療法として、ワルファリンに優先してDOACを推奨することとなりました。しかし、ガイドラインでは、これらの新薬による治療の臨床経験を記録し、リスクとベネフィットのバランスの観点から許容できることを確認するためには、その性能を長期にわたってモニタリングする必要があるとしています。

DOACの一つであるエドキサバンは、1日1回服用で、直接かつ可逆的に第Xa因子を阻害します。本剤は、心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の予防を適応症としており(PMID: 25034361DAILYMEDSmPCPMDA)、剤形は、錠剤と口腔内崩壊錠の2種類があります。エドキサバンの有効性と安全性については、主要検証試験である第3相試験ENGAGE AF-TIMI 48(Effective aNticoaGulation with factor xA next GEneration in Atrial Fibrillation-Thrombolysis In Myocardial Infarction 48)」の結果で確認されています(PMID: 24251359)。このランダム化比較試験の組み入れ基準および除外基準は厳格であったため、研究対象には治療の潜在的な受益者がすべて含まれているわけではありませんでした。したがって、実臨床におけるエドキサバンの長期使用の安全性と有効性の調査が求められていました。

そこで今回は、非弁膜症性心房細動を有する患者を対象に、エドキサバンのルーチン臨床試験として開始され、2年間で1万人以上の患者を対象に、虚血性脳卒中/全身性塞栓症および出血エピソードの発生を評価したETNA-AF-Japan試験(Edoxaban Treatment in routiNe clinical prActice in patients with nonvalvular Atrial Fibrillation;試験番号:ETNA-AF-Japan;UMIN000017011)の結果をご紹介します。

ETNA-AF-Japanの結果は、心房細動患者、特に高齢の患者に対する最善の治療方法を決定するのに役立つと考えられます。特に、70万人以上が心房細動と推定され、人口の4分の1以上が65歳以上(2015年国勢調査による)である日本では、本知見が有用であると期待されています(J Arrhythm. 2012PMID: 18691774)。

試験結果から明らかになったことは?

合計11,569例が登録されました。安全性データ解析セットを構成する11,111例(女性、40.6%)について、平均年齢74.2±SD10.0歳、体重60.0±12.7kg、クレアチニンクリアランス(CLcr)63.9±25.8mL/min、CHADS2スコア2.2±1.3でした。参加者の大多数(86.3%)が添付文書情報に従ってエドキサバンを投与されていました。平均治療期間は561.9±261.2日でした。

ETNA-AF-Japan試験
平均治療期間561.9±261.2日
安全性データ解析セット11,111例
各事象年間発生率(95%信頼区間)
・全出血イベント5.60%(5.25%〜5.98%
・大出血イベント1.02%(0.88%〜1.18%
・虚血性脳卒中(TIAを除く)
または全身性塞栓症
1.08%(0.93%〜1.25%

全出血イベントおよび大出血イベントの年間発生率(95%信頼区間)は、それぞれ5.60%(5.25%〜5.98%)および1.02%(0.88%〜1.18%)でした。虚血性脳卒中(一過性脳虚血発作TIAを除く)または全身性塞栓症の年間発生率は1.08%(0.93%〜1.25%)でした。

多変量解析の結果、低体重、低CLcr、消化管出血歴、貧血、抗血小板薬使用は大出血と関連し、虚血性脳卒中またはTIA歴、血管疾患、抗血小板薬使用は虚血性脳卒中(TIAを除く)または全身性塞栓症と関連することが明らかとなりました。

コメント

DOACの登場により、非弁膜症性心房細動患者(NVAF)の標準治療がビタミンK拮抗薬(ワルファリン)からDOACにシフトしています。DOACに限ったことではありませんが、大規模臨床試験において試験参加者は組入基準が厳格に定められており、実臨床の患者像を全て反映できているわけではありません。そのため実臨床におけるDOACの安全性・有効性の評価が求められます。

さて、本試験結果によれば、エドキサバンの平均治療期間561.9±261.2日における各イベントの年間発生率は、全出血イベント5.6%、大出血イベント1.02%、虚血性脳卒中または全身性塞栓症1.08%でした。プラセボやワルファリンとのヒックではないため、あくまでもエドキサバン使用時の各イベントの年間発生率を把握するのが目的となります。これまでの臨床試験と比較すると、日本人高齢NVAF患者におけるエドキサバン使用は、安全性・有効性が同様であるように捉えられます。また、本試験の平均年齢は74.2(SD10.0)歳ですので、これまで行われた大規模臨床試験よりも比較的高齢ですので、この集団における安全性・有効性データが示されたことは、重要な知見であると考えられます。他のDOACについても検証してほしいところです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 日本人高齢NVAF患者に対するエドキサバン使用により、年間発生率は全出血イベント5.6%、大出血イベント1.02%、虚血性脳卒中または全身性塞栓症1.08%であった。

根拠となった試験の抄録

背景:非弁膜症性心房細動(NVAF)患者における虚血性脳卒中予防の第一選択薬として、直接経口抗凝固薬(DOACs)が推奨されている。しかし、エドキサバンの安全性と有効性については、実臨床における長期的なモニタリングが必要である。

方法:ETNA-AF-Japan(試験番号:UMIN000017011)は、前向き多施設観察研究(日本における市販後調査の一部)である。虚血性脳卒中予防のためにエドキサバンを投与予定のNVAF患者を2015年4月13日から2017年9月30日の間に登録した。

結果:合計11,569例が登録された。安全性データ解析セットを構成する11,111例(女性、40.6%)について、年齢、体重、クレアチニンクリアランス(CLcr)、CHADS2スコアはそれぞれ(平均±SD)74.2±10.0歳、 60.0±12.7kg、 63.9±25.8mL/分、 2.2±1.3であった。大多数(86.3%)がパッケージの添付文書情報に従ってエドキサバンを投与された。
平均治療期間は561.9±261.2日であった。全出血イベントおよび大出血イベントの年間発生率(95%信頼区間)は、それぞれ5.60%(5.25%〜5.98%)および1.02%(0.88%〜1.18%)であった。虚血性脳卒中(一過性脳虚血発作TIAを除く)または全身性塞栓症の年間発生率は1.08%(0.93%〜1.25%)であった。多変量解析の結果、低体重、低CLcr、消化管出血歴、貧血、抗血小板薬使用は大出血と関連し、虚血性脳卒中またはTIA歴、血管疾患、抗血小板薬使用は虚血性脳卒中(TIAを除く)または全身性塞栓症と関連することが明らかとなった。

結論:これらの結果は、日本人のNVAF患者におけるエドキサバンの長期にわたる良好な安全性と有効性プロファイルを、臨床の場で証明するものである。

キーワード:抗凝固薬、心房細動、直接作用型経口抗凝固薬、エドキサバン、市販後製品調査

引用文献

Safety and effectiveness of edoxaban in Japanese patients with nonvalvular atrial fibrillation: Final report of a two-year postmarketing surveillance study (ETNA-AF-Japan)
Takeshi Yamashita et al. PMID: 33850579 PMCID: PMC8021991 DOI: 10.1002/joa3.12520
J Arrhythm. 2021 Feb 24;37(2):370-383. doi: 10.1002/joa3.12520. eCollection 2021 Apr.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33850579/

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