SARS-CoV-2 オミクロン変異株に対するワクチン接種後の抗体価増加はどの程度?(プレプリント; medRxiv. 2021)

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オミクロン変異体に対するワクチン接種後の抗体価増加は?

近年、SARS-CoV-2のB.1.1.159(オミクロン)変異株が出現し、国際的に拡散し、特に南アフリカで患者数が急増していることから、広く懸念されています(GISAIDPMID: 34845008PMID: 34871545)。この新型ウイルスの病原性はまだ不明ですが、スパイクタンパク質のアミノ酸置換、挿入、欠損の多さ(ウイルスゲノム中の非同義変化約50個のうち32個)が大きな特徴で、大きな選択圧に適応していることが示唆されていますGISAIDPMID: 34871545PMID: 32362314)。SARS-CoV-2の回復期患者やワクチン接種者において、ポリクローナル抗体の標的となる中和エピトープの数は、ウイルスの逃避に対する遺伝的障壁の重要な決定因子です(PMID: 34544114)。単一のモノクローナル抗体はエスケープ変異を起こしやすいのに対し、重複しないエピトープを標的とする組み合わせは、そのような変化に対してより耐性があるとされています(PMID: 32540904PMID: 33112236)。

個々のSARS-CoV-2中和抗体の親和性成熟は、変異体の出現と制御に関連する方法でその特性を劇的に変化させることができます(PMID: 33461210PMID: 34331873PMID: 34126625PMID: 34246326)。抗体可変領域変異の数および抗体の結合親和性は、数ヵ月にわたって増加し、SARS-CoV-2抗原への曝露の性質によって変化することがあります(PMID: 33461210PMID: 34126625PMID: 34246326PMID: 34619745PMID: 33622975)。

そこで今回はOmicron(オミクロン)変異株の特徴と、ワクチン接種後の抗体価増加について検証した結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

実験室でデザインされた中和抵抗性SARS-CoV-2スパイク(PMS20)と同様に、オミクロン スパイク蛋白はWuhan-hu-1と比較して、中和に対して大きな抵抗性を示しました。

回復期の血漿では、PMS20またはオミクロンに対する中和活性の中央値は30〜60倍の欠損でした。mRNAワクチン2回接種を受けた集団の血漿は、Wuhan-hu-1に比べ、PMS20およびオミクロンに対して30〜180倍低い中和活性を示しました。また、既感染者または2回接種者において追加でmRNAワクチンを接種した場合、オミクロンおよびPMS20に対する中和活性がそれぞれ38~154倍、35~214倍上昇した

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新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大しています。これまではSARS-CoV-2 アルファ、そしてデルタによる感染拡大が引き起こされていますが、2021年12月〜2022年1月にはオミクロンが感染の中心となっています。オミクロンは、デルタと比較して、疾患の重症化率が低いものの、感染力が強く患者数の爆発的な増加を引き起こしています。

さて、本試験結果によれば、mRNAワクチン2回接種を受けた集団の血漿は、Wuhan-hu-1に比べ、PMS20およびオミクロンに対して30〜180倍低い中和活性を示しました。デルタとの比較データが欲しいところですが、やはり従来の変異体と比べてワクチン接種により得られる中和活性は低いようです。

既感染者または2回接種者において追加でmRNAワクチンを接種した場合、オミクロンおよびPMS20に対する中和活性がそれぞれ38~154倍、35~214倍上昇することが示されました。とは言え、本試験の結果はプレプリントであること、また実際の感染予防効果については検証されていません。

オミクロンによるCOVID-19患者におけるワクチンの有効性の検証が求められます。続報に期待。

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✅まとめ✅ 既感染者または2回接種者において追加でmRNAワクチンを接種した場合、オミクロンおよびPMS20に対する中和活性がそれぞれ38~154倍、35~214倍上昇した。

根拠となった試験の抄録

背景:SARS-CoV-2のオミクロン亜種は国際的に拡散し、患者数の急増の原因となっている。宿主集団の中和抗体反応が不均質で進化している状況下で、多様な亜種が出現すると、ワクチンや先行感染による防御が損なわれる可能性がある。

方法:Wuhan-hu-1、Omicron(オミクロン)、または実験室でデザインされた中和抵抗性SARS-CoV-2スパイク(PMS20)を持つ偽タイプを用いて、縦断的に収集した169の血漿サンプルで中和抗体価を測定した。血漿は、mRNAワクチンを接種した回復者、またはその後mRNAワクチンを接種しなかった回復者、あるいはmRNAワクチン3回分またはAd26ワクチン1回分を接種したナイーブな人から採取した。サンプルは、最初のワクチン接種または感染から約1、5〜6、12ヵ月後に採取された。

結果:PMS20と同様に、オミクロン スパイク蛋白はWuhan-hu-1と比較して、中和に対して大きな抵抗性を示した。回復期の血漿では、PMS20またはオミクロンに対する中和活性の中央値は30〜60倍の欠損であった。2回接種のmRNAワクチン投与者の血漿は、Wuhan-hu-1に比べ、PMS20およびオミクロンに対して30〜180倍低い中和活性を示した。また、既感染者または2回接種者において追加でmRNAワクチンを接種した場合、オミクロンおよびPMS20に対する中和活性がそれぞれ38~154倍、35~214倍上昇した

結論:オミクロン変異体は、実験室で設計された中和抵抗性スパイク蛋白質と同様の配列変化と中和抵抗性の分布を示し、ヒトの抗体反応を回避するための自然な進化的抵抗がを有していることが示唆された。SARS-CoV-2の中和抗体価は、抗体親和性の成熟を促進するmRNAワクチンのブースターにより、著しく改善された。

引用文献

Plasma neutralization properties of the SARS-CoV-2 Omicron variant
Fabian Schmidt et al. PMID: 34931199 PMCID: PMC8687470 DOI: 10.1101/2021.12.12.21267646
medRxiv. 2021 Dec 13;2021.12.12.21267646. doi: 10.1101/2021.12.12.21267646. Preprint
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34931199/

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