SARS-CoV-2 mRNAワクチン間で心筋炎または心膜炎リスクに違いはあるのか?(デンマーク人口ベースコホート研究; BMJ. 2021)

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SARS-CoV-2ワクチン接種と心筋炎および心膜炎との関連は?

ファーマコビジランスの報告、医療システムのサーベイランス研究、ケースシリーズから、SARS-CoV-2ワクチン接種と心筋炎および心膜炎との関連が示唆されています(CDC2021PMID: 34088762PMID: 34432976PMID: 34477808PMID: 33821210PMID: 34092429PMID: 34025885PMID: 34614328PMID: 34614329)。この関連は、特にmRNAワクチンBNT162b2(コミナティ、ファイザー・ビオンテック社製)およびmRNA-1273(スパイクバックス、モデナ社製)の2回目のブースター投与後に発生すると考えられています。 心筋炎や心膜炎は、最も重症の場合、慢性心不全や死亡に至ることがあり、安全性において重要な懸念事項です。 生物学的メカニズムは明らかではありませんが、同じ有害事象が成人における天然痘ワクチンの使用に起因しています(PMID: 12824210)。

米国疾病管理予防センターと欧州医薬品庁は、サーベイランスデータを用いてこの関連性を調査中ですが(CDC2021EMA)、これまでに完全な集団における関連性を調査した、公に利用可能な対照コホート研究はありません。デンマークでは、予防接種、入院、血液サンプルの検査結果に関するデータを含む、全国規模の人口ベースの登録が行われています。

今回は、これらの登録データを活用し、SARS-CoV-2ワクチンの接種と、心筋炎または心膜炎の病院診断、トロポニン値の上昇を示す血液測定、24時間以上の入院からなる定義済みのエンドポイントとの関連性を調査したデンマークのコホート研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

試験参加者は12歳以上の4,931,775例で、2020年10月1日から2021年10月5日まで追跡調査が行われました。追跡期間中に269例が心筋炎または心膜炎になり、そのうち108例(40%)が12~39歳、196例(73%)が男性でした。

BNT162b2 コミナティ
(ファイザー・ビオンテック社製)
調整ハザード比
(95%CI)
絶対率
/10万接種者
(95%CI)
接種日から28日以内に
心筋炎または心膜炎を発症するリスク
(vs. 未接種者)
1.34
0.90~2.00
1.4
1.0~1.8
 女性のみ3.73
1.82~7.65
1.3
0.8~1.9
 男性のみ0.82
0.50~1.34
1.5
1.0~2.2
 12~39歳1.48
0.74~2.98
1.6
1.0~2.6

BNT162b2(コミナティ、ファイザー・ビオンテック社製) を接種した3,482,295例のうち、48例が接種日から28日以内に心筋炎または心膜炎を発症しました。未接種者と比較した場合の調整ハザード比 は1.34(95%CI 0.90~2.00; 絶対率 1.4/10万接種者、95%CI 1.0~1.8)でした。

女性のみの調整ハザード比は3.73(1.82~7.65)、男性のみの調整ハザード比は0.82(0.50~1.34)であり、それぞれ、接種後28日以内の絶対率は10万人あたり1.3(0.8~1.9)、1.5(1.0~2.2)でした。

12~39歳の調整ハザード比は1.48(0.74~2.98)、絶対率は接種後28日以内の接種者10万人あたり1.6(1.0~2.6)でした。

mRNA-1273 スパイクバックス
(モデルナ社製)
調整ハザード比
(95%CI)
絶対率
/10万接種者
(95%CI)
接種日から28日以内に
心筋炎または心膜炎を発症するリスク
(vs. 未接種者)
3.92
2.30~6.68
4.2
2.6~6.4
 女性のみ6.33
2.11~18.96
2.0
0.7~4.8
 男性のみ3.22
1.75~5.93
6.3
3.6~10.2
 12~39歳5.24
2.47~11.12
5.7
3.3~9.3

mRNA-1273(スパイクバックス、モデルナ社製)を接種した498,814例のうち、接種日から28日以内に心筋炎または心膜炎を発症したのは21例(調整ハザード比 3.92、95%CI 2.30~6.68、絶対率 4.2/10万接種者(2.6~6.4))でした。

女性のみ、男性のみの調整ハザード比はそれぞれ6.33(2.11~18.96)、3.22(1.75~5.93)で、対応する絶対率はそれぞれ接種後28日以内の接種者10万人当たり2.0(0.7~4.8)および6.3(3.6~10.2)でした。

12~39歳の調整ハザード比は5.24(2.47~11.12)、絶対率は接種後28日以内に接種者10万人当たり5.7(3.3~9.3)でした。

コメント

COVID-19 mRNAワクチン接種により心筋炎または心膜炎のリスクが報告されています。しかし、ワクチン間におけるリスクの特徴については充分にされていません。

さて、本試験結果によれば、mRNA-1273(スパイクバックス、モデルナ社製)ワクチン接種は、デンマーク人集団における心筋炎または心膜炎リスクの有意な上昇と関連していました。これは主に12~39歳の集団におけるリスク上昇に牽引されていました。若年の男性層でリスク増加の可能性が示されていることから、これまでの報告と矛盾しません。一方、BNT162b2(コミナティ、ファイザー・ビオンテック社製)ワクチン接種は女性におけるリスク上昇にのみ関連していました。また若年層においてはリスク増加傾向でした。

心筋炎または心膜炎はCOVID-19発症によっても引き起こされる疾患であることから、個々の集団におけるワクチン接種のリスク・ベネフィットを評価する必要があります。今回の大規模なコホート研究のみでは結論づけられませんが、若年の男性集団においてはスパイクバックスよりもコミナティを使用した方が心筋炎または心膜炎リスクは低いのかもしれません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ mRNA-1273(スパイクバックス、モデルナ社製)のワクチン接種は、デンマーク人集団における心筋炎または心膜炎リスクの有意な上昇と関連し、主に12~39歳の個人におけるリスク上昇に牽引されていたが、BNT162b2(コミナティ、ファイザー・ビオンテック社製)のワクチン接種は女性におけるリスク上昇にのみ関連していた。

根拠となった試験の抄録

目的:SARS-CoV-2ワクチン接種と心筋炎または心膜炎との関連性を検討する。

試験デザイン:母集団ベースのコホート研究

試験設定:デンマーク。

試験参加者:12歳以上の4,931,775例、2020年10月1日から2021年10月5日まで追跡調査。

主要評価項目:主要アウトカムである心筋炎または心膜炎は、病院での心筋炎または心膜炎の診断、トロポニン値の上昇、24時間以上の入院を組み合わせたものと定義した。ワクチン接種前の追跡期間は、1回目および2回目ともにワクチン接種日から0~28日の追跡期間と比較し、年齢を基礎としたCox比例ハザード回帰を用いて、性別、併存疾患、その他の潜在的交絡因子で調整したハザード比を推定した。

結果:追跡期間中に269例が心筋炎または心膜炎になり、そのうち108例(40%)が12~39歳、196例(73%)が男性であった。
BNT162b2(Pfizer-BioNTech) を接種した3,482,295例のうち、48例が接種日から28日以内に心筋炎または心膜炎を発症し、未接種者と比較した(調整ハザード比 1.34、95%CI 0.90~2.00; 絶対率 1.4/10万接種者、95%CI 1.0~1.8)。女性のみの調整ハザード比は3.73(1.82~7.65)、男性のみの調整ハザード比は0.82(0.50~1.34)であり、それぞれ、接種後28日以内の絶対率は10万人あたり1.3(0.8~1.9)、1.5(1.0~2.2)であった。12~39歳の調整ハザード比は1.48(0.74~2.98)、絶対率は接種後28日以内の接種者10万人あたり1.6(1.0~2.6)であった。mRNA-1273(モデルナ社製)を接種した498,814例のうち、接種日から28日以内に心筋炎または心膜炎を発症したのは21例(調整ハザード比 3.92(2.30~6.68)、絶対率 4.2/10万接種者 28日以内(2.6~6.4))であった。女性のみ、男性のみの調整ハザード比はそれぞれ6.33(2.11~18.96)、3.22(1.75~5.93)で、対応する絶対率はそれぞれ接種後28日以内の接種者10万人当たり2.0(0.7~4.8)および6.3(3.6~10.2)であった。12~39歳の調整ハザード比は5.24(2.47~11.12)、絶対率は接種後28日以内に接種者10万人当たり5.7(3.3~9.3)であった。

結論:mRNA-1273のワクチン接種は、デンマーク人集団における心筋炎または心膜炎リスクの有意な上昇と関連し、主に12~39歳の個人におけるリスク上昇に牽引されていたが、BNT162b2のワクチン接種は女性におけるリスク上昇にのみ関連していた。しかし、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の心筋炎や心膜炎になる絶対率は、若い年齢層でも低いものであった。これらの知見を解釈する際には、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種の利点を考慮する必要がある。より小さなサブグループ内でのワクチン接種後の心筋炎または心膜炎リスクをさらに調査するために、より大規模な多国間研究が必要である。

引用文献

SARS-CoV-2 vaccination and myocarditis or myopericarditis: population based cohort study
Anders Husby et al. PMID: 34916207 PMCID: PMC8683843 DOI: 10.1136/bmj-2021-068665
BMJ. 2021 Dec 16;375:e068665. doi: 10.1136/bmj-2021-068665.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34916207/

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