心房細動患者の心血管アウトカムに対する早期のリズムコントロール vs. レートコントロール(後向き人口ベースコホート研究; J Am Heart Assoc. 2021)

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リズムコントロールを開始するタイミングはいつが良いのか?

心房細動は、脳卒中や心不全による死亡や罹患のリスクを高め、QOL(生活の質)を低下させることが報告されています(PMID: 30686041PMID: 32860505PMID: 29666179)。代表的なAFFIRM(Atrial Fibrillation Follow-up Investigation of Sinus Rhythm Management)試験を含む、リズムコントロールとレートコントロールを比較した過去のランダム化試験では、死亡率および脳卒中発症率に関して、治療ストラテジー間に有意差はないことが報告されています(PMID: 18565859PMID: 12466507PMID: 12466506)。同様に、リズムコントロールとレートコントロールを比較した5件のランダム化試験のメタ解析では、レートコントロールが有利と考えられるが、全死亡のリスクに有意差はないことが示されました(PMID: 15710787)。

一方、最近の研究では、1年以内に診断された心房細動患者では、リズムコントロールは通常の治療よりも心血管系の有害転帰のリスクが低いことが明らかにされています(PMID: 33283207PMID: 33975876)。EAST-AFNET 4(Early Treatment of Atrial Fibrillation for Stroke Prevention Trial)試験では、早期にリズムコントロールを受けるようにランダムに割り付けられた患者は、心血管系の原因に起因する死亡、脳卒中、HFまたは急性冠症候群の悪化による入院のリスクが低く、また、心血管の原因と脳卒中に起因する死亡の個々の構成要素のリスクも低いと明らかにしました(PMID: 33283207)。

基本的に、心房細動の負荷が減少した状態で洞調律を回復・維持することは、脳卒中、心不全、その他の心血管疾患のリスクを低減し、良好な予後をもたらすと期待されています(PMID: 25792720PMID: 32427022)。しかし、どの程度早い時期にリズムコントロールを開始すべきか、また、早期のリズムコントロールによってどのような心血管疾患の転帰が改善されるかは不明です。

そこで今回は、リズムコントロールとレートコントロールの治療開始時期による心血管系転帰の比較検討を行った韓国の後向き人口ベースコホート研究の結果をご紹介します。本試験では、2011年から2015年に韓国国民健康保険サービスのデータベースから新たにリズムコントロール(抗不整脈薬またはアブレーション)またはレートコントロールを行ったAF患者22,635例を含んでいました。

試験結果から明らかとなったことは?

リズムコントロール開始時期脳卒中の発生リスク
(ハザード比[HR])
6ヵ月以内HR 0.76
(95%CI 0.66〜0.87
1年以内HR 0.78
(95%CI 0.66〜0.93
5年以内HR 1.00
(95%CI 0.45〜2.24

心房細動診断後1年以内に開始されたリズムコントロールは、レートコントロールと比較して、脳卒中リスクを減少させました。心房細動診断後の特定の時点で開始されたリズムコントロールの点推定値は以下の通りである。6ヵ月(ハザード比[HR] 0.76、95%CI 0.66〜0.87)、1年(HR 0.78、95%CI 0.66〜0.93)、および5年(HR 1.00、95%CI 0.45〜2.24)である。

リズムコントロール開始時期心不全による入院リスク
(ハザード比[HR])
6ヵ月以内HR 0.84
(95%CI 0.74〜0.95
1年以内HR 0.96
(95%CI 0.82〜1.13
5年以内HR 2.88
(95%CI 1.34〜6.17

心房細動の診断から6ヵ月以内にリズムコントロールを開始すると、心不全による入院のリスクが低下した。6ヵ月(HR 0.84、95%CI 0.74〜0.95)、1年(HR 0.96、95%CI 0.82〜1.13)、5年(HR 2.88、95%CI 1.34〜6.17)。
心筋梗塞および心血管死のリスクは、治療のタイミングにかかわらず、リズムコントロールとレートコントロールの間で差はなかった。

コメント

心房細動患者の長期アウトカムに対するリズムコントロールとレートコントロールの比較が行われています。これまでの研究結果から、心血管アウトカムや死亡リスクについては差がないものの、副作用の関連から無症候性の心房細動患者においては、基本的にはレートコントロールが選択されているように考えられます。しかし、近年の研究結果から、リズムコントロールの有用性が見直されています。

さて、本試験結果によればレートコントロールの開始と比較して、1年以内のリズムコントロール開始により脳卒中の発生リスクの低下、6ヵ月以内の開始により心不全による入院リスクの低下が示されました。いずれの場合も、リズムコントロールの開始時期が遅れるにつれて、アウトカムの発生リスクの増加傾向が示されています。心房細動治療において、早期にはリズムコントロールが、維持期にはレートコントロールへの切り替えが良いのかもしれません。しかし、治療の切り替えについては、エビデンスが不充分な部分であると考えられます。さらに本試験は後向きコホート研究の結果であることから、心不全による入院や脳卒中リスクの高い患者集団でレートコントロールが早期に使用されていた可能性があります。卵が先か鶏が先かを明らかにするためには追試が必要であると考えます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 最近心房細動と診断された患者において、リズムコントロールを早期に開始することは、レートコントロールよりも脳卒中および心不全関連入院のリスクが低くなるかもしれない。

根拠となった試験の抄録

背景:最近心房細動と診断された患者において、リズムコントロールは通常の治療よりも良好な心血管予後と関連している。本研究では、治療開始時期によって層別化した脳卒中、心不全、心筋梗塞、心血管死の発生率に対するリズムコントロールとレートコントロールの効果を検討した。

方法:2011年から2015年に韓国国民健康保険サービスのデータベースから新たにリズムコントロール(抗不整脈薬またはアブレーション)またはレートコントロールを行ったAF患者22,635例を含む後ろ向き人口ベースコホート研究を実施した。傾向重複加重が用いられた。

結果:心房細動診断後1年以内に開始されたリズムコントロールは、レートコントロールと比較して、脳卒中リスクを減少させた。心房細動診断後の特定の時点で開始されたリズムコントロールの点推定値は以下の通りである。6ヵ月(ハザード比[HR] 0.76、95%CI 0.66〜0.87)、1年(HR 0.78、95%CI 0.66〜0.93)、および5年(HR 1.00、95%CI 0.45〜2.24)である。
心房細動の診断から6ヵ月以内にリズムコントロールを開始すると、心不全による入院のリスクが低下した。6ヵ月(HR 0.84、95%CI 0.74〜0.95)、1年(HR 0.96、95%CI 0.82〜1.13)、5年(HR 2.88、95%CI 1.34〜6.17)。
心筋梗塞および心血管死のリスクは、治療のタイミングにかかわらず、リズムコントロールとレートコントロールの間で差はなかった。

結論:最近心房細動と診断された患者において、リズムコントロールの早期開始は、レートコントロールよりも脳卒中および心不全関連入院のリスクが低いことが示された。その効果は、リズムコントロールの治療開始が遅くなるほど減弱した。

引用文献

Comparative Effectiveness of Early Rhythm Control Versus Rate Control for Cardiovascular Outcomes in Patients With Atrial Fibrillation
Daehoon Kim et al. PMID: 34889116 DOI: 10.1161/JAHA.121.023055
J Am Heart Assoc. 2021 Dec 10;e023055. doi: 10.1161/JAHA.121.023055. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34889116/

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