常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に対するトルバプタンの長期的な効果は?(代用のアウトカム; 日本のコホート研究; Kidney International Reports 2021)

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常染色体優性多発性多嚢胞腎(ADPKD)に対するトルバプタンの長期的な効果は?

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は、両側の腎臓に嚢胞ができ、それらが年齢とともに増え、かつ大きくなっていく遺伝性の疾患です。嚢胞が増えて大きくなると、腎機能が低下していきます。さらに腎臓以外の臓器にも障害(合併症)が生じる全身の疾患です。

ADPKDでは身体の成長につれて、腎臓の嚢胞が少しずつ作られますが、30〜40歳代まではほとんど症状がないと報告されています。ただし、腎臓の他に肝臓にも嚢胞(肝嚢胞)ができることがあり、嚢胞の感染や疼痛、腹部膨満などの一因となり、症状が認められてから検査でADPKDであることが判明することもあります。とはいえ、遺伝性の疾患であることから、両親が疾患を有していれば早期に検査・診断されることが予測されます。嚢胞以外には、高血圧、心臓弁膜症、脳動脈瘤などの合併症が見られることもあります。

ADPKDでは、嚢胞が増えて大きくなると、腎臓の大きさは数倍になり、正常な腎臓の組織が圧迫され、腎機能が低下していきます。したがって、60歳までに約半数の患者において、腎代替療法として透析療法が必要な末期腎不全になります。ただし、腎機能低下のスピードは個人差が大きく、患者の中には生涯、腎機能が保たれる場合もあります。

ADPKDの根本的な治療法はありません(2021年12月現在)。進行を遅らせる治療としては、バソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタンがあります(2014年3月承認)。トルバプタンは、嚢胞増大を助長するとされるバソプレシンの作用を抑制することで、プラセボと比較して、腎嚢胞の増大と腎機能の低下を有意に抑制することが報告されています。しかし、ADPKDに対するトルバプタンの長期継続投与の効果は不明です。

そこで今回は、杏林大学コホートのADPKD患者118例を対象とし、トルバプタン投与により、総腎容積(TKV)、TKVスロープ、推定糸球体濾過率(eGFR)がどのように変化するか長期に渡り検証した日本のコホート試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

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Graphical abstract. https://www.kireports.org/article/S2468-0249(21)01559-X/fulltext?dgcid=raven_jbs_aip_emailより引用

治療前のレトロスペクティブ期間は中央値で1.8年、治療中のプロスペクティブ期間は中央値で4.0年でした。

5年間の治療期間中、log10(TKV)の1年あたりの傾きは治療前より減少し(P<0.0001)、推定身長調整TKV成長率(eHTKV-α、%/年)はベースラインより減少しました(P<0.0001)。eGFRの低下は、女性では改善されましたが(P<0.0001)、男性では改善されませんでした(P=0.6321)。

5年間の治療期間中、ベースラインから治療開始年までのeHTKV-αの減少率が中央値(2.94%)以上のグループは、減少率が2.94%未満のグループに比べて、eGFRが有意に良好な状態を維持しました。

自由水域クリアランスは、治療法にかかわらず、男性の方が女性よりも高いことが示されました。

コメント

ADPKD患者においては、腎機能低下により60歳までに患者の約50%で透析導入が必要とされています。これを防ぐために腎容積の増大の抑制および腎機能(eGFR)の低下を抑制することが求められます。

さて、本試験結果によれば、中央値4年のトルバプタン治療により、治療前と比較して、ADPKD患者の総腎容積(TKV)、TKVスロープの増大を抑制することが示されました。推定糸球体濾過率(eGFR)の低下については、トルバプタン投与により、女性においてのみ抑制が認められましたが、男性では認められませんでした。今回の試験は単施設かつ治療の前後比較だけであることから、調整しきれていない交絡の影響があると考えられます。また透析導入や心血管イベント、死亡リスクについての検証は行われていません。より臨床上重要なアウトカムについての検証が待たれます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ADPKD患者におけるトルバプタンの中央値4年の投与は、治療前と比較して、男女ともに総腎容積の増大率を低下させた。

根拠となった試験の抄録

背景:常染色体優性の多嚢胞性腎臓病に対するトルバプタンの長期継続投与の効果は不明である。そこで、3年以上の継続投与試験を行った。

方法:杏林大学コホートから299例の患者を対象とし、総腎容積(TKV)≧750ml、TKVスロープ≧5%/年、推定糸球体濾過率(eGFR)≧15mL/min/1.73m2の179例をトルバプタンの適応とした。179例の患者のうち、118例の患者が研究に同意した。

試験結果:治療前のレトロスペクティブ期間は中央値で1.8年、治療中のプロスペクティブ期間は中央値で4.0年であった。
5年間の治療期間中、log10(TKV)の1年あたりの傾きは治療前より減少し(P<0.0001)、推定身長調整TKV成長率(eHTKV-α、%/年)はベースラインより減少した(P<0.0001)。eGFRの低下は、女性では改善されたが(P<0.0001)、男性では改善されなかった(P=0.6321)。
5年間の治療期間中、ベースラインから治療開始年までのeHTKV-αの減少率が中央値(2.94%)以上のグループは、減少率が2.94%未満のグループに比べて、eGFRが有意に良好な状態を維持した。自由水域クリアランスは、治療法にかかわらず、男性の方が女性よりも高かった。

結論:トルバプタンの投与により、男女ともにTKVの成長率は4年間で低下した。男性におけるeGFRの傾きに対するトルバプタンの効果が有意でなかったのは、男性ホルモンによる膀胱形成の促進と、eGFRの非線形軌跡における縦断的変化の分析が困難であったためと考えられる。初年度のeHTKV-αの減少量が大きいことは、腎臓の予後が良好であることと関連していた。トルバプタンの投与にかかわらず、バソプレシンを介した水再吸収は、男性よりも女性の方がより活性化されていた。

引用文献

Long-term outcomes of longitudinal efficacy study with tolvaptan in autosomal dominant polycystic kidney disease
Eiji Higashihara et al. Published: December 07, 2021 DOI: https://doi.org/10.1016/j.ekir.2021.11.034
Kidney International Reports 2021.
ー 続きを読む https://www.kireports.org/article/S2468-0249(21)01559-X/fulltext?dgcid=raven_jbs_aip_email

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