急性虚血性脳卒中に対する抗凝固剤の有効性と安全性は?(コクランレビュー; Cochrane Database Syst Rev. 2021)

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虚血性脳卒中に対する早期の抗凝固療法の効果は?

脳卒中は、虚血性と出血性に大別できます。世界の早期死亡原因の第3位は脳卒中であることが報告されています。虚血性脳卒中の多くは、脳の動脈を塞ぐ血栓が原因であることから、新しい血栓ができるリスクを減らし、出血のリスクを増やさない抗凝固剤が提供されれば、患者の転帰は改善する可能性が高いと考えられます。

急性虚血性脳卒中に対する抗凝固剤の有効性と安全性について、コクラン共同研究でレビューが実施されています。1995年に発表されて以来、2004年、2008年、2015年に更新されてきました。今回ご紹介する論文は2021年に更新されたものです。

本研究の目的は、急性虚血性脳卒中と推定または確定診断された集団に対する早期の抗凝固療法(発症後14日以内)の有効性と安全性を評価することです。仮説として、早期の抗凝固療法は、抗凝固療法を実施しない場合と比較して、以下のことと関連すると考えられました。

  • 脳卒中発症から数ヵ月後の死亡または日常生活困難のリスク減少
  • 虚血性脳卒中の早期再発のリスク減少
  • 症候性頭蓋内出血および頭蓋外出血のリスク増加
  • 深部静脈血栓症および肺塞栓症のリスク減少

試験結果から明らかになったことは?

本論文では、24,025例が参加した28件の試験が対象でした。試験の質にはかなりのバイアスがあったようです。また、いくつかの試験では、選択バイアス、実行バイアス(主にマスキング)、検出(あるいは測定)バイアス、減少バイアス、報告バイアスのリスクが不明瞭または高いと考えられました。試験された抗凝固剤は、標準的な未分画ヘパリン、低分子ヘパリン、ヘパリノイド、経口抗凝固剤、トロンビン阻害剤でした。

【試験全体】オッズ比(OR)対象となった試験数など
追跡終了時の死亡または依存0.98
(95%CI 0.92~1.03
RCT 12件、参加者22,428例
確実性の高いエビデンス
脳卒中発症後48時間以内に開始(全体の90%以上)

エビデンスの90%以上は、脳卒中発症後48時間以内に開始した抗凝固療法の効果に関するものでした。早期の抗凝固療法が追跡終了時の死亡または依存オッズ低下を示唆するエビデンスはみられませんでした。
☆オッズ比(OR)0.98、95%信頼区間(CI)0.921.03、12件のRCT、参加者22,428例、確実性の高いエビデンス

【脳卒中発症後14日以内に抗凝固療法を開始】オッズ比(OR)対象となった試験数など
治療期間中の全死亡0.99
(95%CI 0.90~1.09
RCT 20件、参加者23,221例
確実性の低いエビデンス
脳卒中発症後48時間以内に開始(全体の90%以上)

同様に、脳卒中発症後14日以内に開始された抗凝固療法が、治療期間中の全死因による死亡のオッズを低下させることを示唆するエビデンスは見つかりませんでした。
☆OR 0.99、95%CI 0.90~1.09、22件のRCT、参加者22,602例、確実性の低いエビデンス

オッズ比(OR)対象となった試験数など
虚血性脳卒中の再発0.75
(95%CI 0.65~0.88
RCT 12件、参加者21,665例
確実性が中等度のエビデンス
症候性頭蓋内出血2.47
(95%CI 1.90~3.21
RCT 20件、参加者23,221例
確実性が中等度のエビデンス
脳卒中発症後48時間以内に開始(全体の90%以上)

早期の抗凝固療法は虚血性脳卒中の再発減少と関連していましたが(OR 0.75、95%CI 0.65~0.88、12件のRCT、参加者21,665例、確実性が中程度のエビデンス)、症候性頭蓋内出血の増加とも関連していました(OR 2.47、95%CI 1.90~3.21、20件のRCT、参加者23,221例、確実性が中程度のエビデンス)。

オッズ比(OR)対象となった試験数など
症候性肺塞栓症0.60
(95%CI 0.44~0.81
RCT 14件、参加者22,544例
確実性の高いエビデンス
頭蓋外出血2.99
(95%CI 2.24~3.99
RCT 18件、参加者22,255例
確実性が中等度のエビデンス
脳卒中発症後48時間以内に開始(全体の90%以上)

同様に、早期の抗凝固療法は症候性肺塞栓症の頻度を減少させたましたが(OR 0.60、95%CI 0.44~0.81、14件のRCT、参加者22,544例、確実性の高いエビデンス)、この利益は頭蓋外出血の増加によって相殺されました(OR 2.99、95%CI 2.24~3.99、18件のRCT、参加者22,255例、確実性が中程度のエビデンス)。

コメント

急性虚血性脳卒中に対する抗凝固剤の有効性と安全性について検討したコクランレビューの最新版です。

さて、本試験結果によれば、脳卒中発症後の早期の抗凝固療法は、虚血性脳卒中の再発や症候性肺塞栓症リスクの減少が示されましたが、死亡リスクの減少は認められませんでした。また、症候性頭蓋内出血や頭蓋外出血のリスクは有意に増加しました。

死亡アウトカム以外については予測通りの結果です。患者背景や薬剤用量により、これらのリスクベネフィットは異なることから、出血性リスクを抑えつつ、重篤なイベントの発生を抑制することで予後良好の実現が治療目標となります。どのような患者で出血リスクが高くなるのか評価した上で、早期に抗凝固療法を開始することは妥当であると考えます。

気にかかるのは試験間のバイアスリスクにばらつきがあったことです。本論文は有料であることから統合された結果の異質性がどの程度であったかは不明です。結果がどのように変化していくのか、引き続き追っていきたいと思います。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 虚血および出血イベントを考慮すると、急性虚血性脳卒中に対する抗凝固剤の日常的使用を支持できない。

根拠となった試験の抄録

背景:脳卒中は、世界の早期死亡原因の第3位である。虚血性脳卒中の多くは、脳の動脈を塞ぐ血栓が原因である。新しい血栓ができるリスクを減らし、出血のリスクを増やさない抗凝固剤が提供されれば、患者の転帰は改善するかもしれない。本論文は、1995年に発表されたコクラン・レビューを、2004年、2008年、2015年に更新したものです。

目的:急性の虚血性脳卒中と推定または確定診断された集団に対する早期の抗凝固療法(発症後14日以内)の有効性と安全性を評価すること。仮説としては、早期の抗凝固療法は、抗凝固療法を行わない方針と比較して、以下のことと関連すると考えられた。

  • 脳卒中発症から数ヵ月後の死亡または日常生活困難のリスクの減少
  • 虚血性脳卒中の早期再発のリスクの減少
  • 症候性頭蓋内出血および頭蓋外出血のリスクの増加
  • 深部静脈血栓症および肺塞栓症のリスクの減少

検索方法:Cochrane Stroke Group Trials Register(2021年8月);Cochrane Database of Systematic Reviews(CDSR);Cochrane LibraryのCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL;2021年、第7号)(2021年8月5日検索);MEDLINE(2014年~2021年8月5日);Embase(2014年~2021年8月5日)を検索した。さらに、進行中の試験登録や関連論文の参考文献リストを検索した。このレビューの前のバージョンについては、Antithrombotic Trialists’ (ATT) Collaborationの登録を検索し、MedStrategy (1995)を参照し、関連する製薬会社に問い合わせた。

選定基準:急性の虚血性脳卒中の患者を対象に、早期の抗凝固療法(脳卒中発症後2週間以内に開始)と対照を比較したランダム化試験

データ収集と分析:2人のレビュー執筆者が独立して、対象となる試験を選択し、試験の質を評価し、データを抽出した。RoB1法とGRADE法を用いて、各アウトカムに関するエビデンスの全体的な確実性を評価した。

主な結果:24,025例が参加した28件の試験を対象とした。試験の質にはかなりのばらつきがあった。いくつかの試験では、選択バイアス、性能バイアス、検出バイアス、退行バイアス、報告バイアスのリスクが不明瞭または高いと考えられた。試験された抗凝固剤は、標準的な未分画ヘパリン、低分子ヘパリン、ヘパリノイド、経口抗凝固剤、トロンビン阻害剤であった。
エビデンスの90%以上は、発症後48時間以内に開始した抗凝固療法の効果に関するものであった。早期の抗凝固療法が追跡終了時の死亡または依存のオッズを低下させることを示唆するエビデンスはなかった(オッズ比(OR)0.98、95%信頼区間(CI)0.92~1.03、12件のRCT、参加者22,428例、確実性の高いエビデンス)。
同様に、脳卒中発症後14日以内に開始された抗凝固療法が、治療期間中の全死因による死亡のオッズを低下させることを示唆するエビデンスは見つからなかった(OR 0.99、95%CI 0.90~1.09、22件のRCT、参加者22,602例、確実性の低いエビデンス)。
早期の抗凝固療法は虚血性脳卒中の再発減少と関連していたが(OR 0.75、95%CI 0.65~0.88、12件のRCT、参加者21,665例、確実性が中程度のエビデンス)、症候性頭蓋内出血の増加とも関連していた(OR 2.47、95%CI 1.90~3.21、20件のRCT、参加者23,221例、確実性が中程度のエビデンス)。
同様に、早期の抗凝固療法は症候性肺塞栓症の頻度を減少させたが(OR 0.60、95%CI 0.44~0.81、14件のRCT、参加者22,544例、確実性の高いエビデンス)、この利益は頭蓋外出血の増加によって相殺された(OR 2.99、95%CI 2.24~3.99、18件のRCT、参加者22,255例、確実性が中程度のエビデンス)。

著者の結論:本レビューの最終版以降、新たに4つの関連研究が発表されたが、結論は一貫している。急性虚血性脳卒中後に早期に抗凝固剤治療を受けた人は、短期的にも長期的にも正味の利益を示さない。抗凝固剤による治療は、脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓症の再発を減少させたが、出血のリスクを増加させた。急性虚血性脳卒中に対して、現在使用可能な抗凝固剤を日常的に使用することを支持するデータはない。

引用文献

Anticoagulants for acute ischaemic stroke
Xia Wang et al. PMID: 34676532PMCID: PMC8530823 (available on 2022-10-22) DOI: 10.1002/14651858.CD000024.pub5
Cochrane Database Syst Rev. 2021 Oct 22;10(10):CD000024. doi: 10.1002/14651858.CD000024.pub5.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34676532/

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