食欲不振におけるシプロヘプタジンの有効性と忍容性は?(RCT; Clin Ther. 2021)

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シプロヘプタジンは食欲不振に有効?

抗ヒスタミンおよび抗セロトニン作動薬であるシプロヘプタジンは、食欲増進薬であり、食欲のない小児および成人の体重増加を促進するのに有効であることが報告されています。

シプロヘプタジンが良好な結果をもたらしたことを示す多くの研究があるのにもかかわらず、食欲に対する有効性を記録した研究は限られています。

そこで今回は、韓国成人の食欲不振者を対象に、シプロヘプタジンの有効性と忍容性を評価した試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

食欲スコアの平均(SD)変化量は、プラセボ群の-2.03(0.13)に対し、シプロヘプタジン群では-2.42(0.12)となり、シプロヘプタジン群では統計学的に有意な食欲の増加が認められました。
☆差 +0.38[0.18]、95%CI -0.73 ~ -0.04、P=0.0307

シプロヘプタジン群では、体重および体格指数が有意に増加しました。

最も多かった有害事象は、予測通り傾眠でした。シプロヘプタジンの忍容性は良好であり、重篤な有害事象は1件(大腸炎)で、試験薬との関連性が低い中等度の有害事象に分類されました。

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本邦において、シプロヘプタジンは抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)として、アレルギー性鼻炎や皮膚疾患に伴うそう痒などに使用されています。また適応外として小児の片頭痛や、成人や小児における食欲不振に使用されています。

食欲不振を有する韓国の成人に対して、シプロヘプタジンはプラセボと比較して、食欲スコアの平均変化量の低下が有意に少ないことが明らかとなりました。

差としては0.38(SD 0.18)95%CI -0.73 ~ -0.04であり、この値が実臨床において、どの程度の効果であるかは明らかではないと考えられます。とはいえ、抗ヒスタミン薬は食欲増進作用を有しており、なかでもシプロヘプタジンは、食欲増進効果が高いことが報告されているため、食欲不振患者における選択肢の一つになると考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 食欲不振の健康な成人を対象に、シプロヘプタジンの最小有効量を用いて、プラセボと比較した試験において、シプロヘプタジンは有意に食欲スコアの平均を改善した。

根拠となった試験の抄録

目的:抗ヒスタミンおよび抗セロトニン作動薬であるシプロヘプタジンは、食欲増進薬であり、食欲のない小児および成人の体重増加を促進するのに有効である。シプロヘプタジンが良好な結果をもたらしたことを示す多くの研究にもかかわらず、食欲に対する有効性を記録した研究は限られている。本研究では、韓国の成人の食欲不振者を対象に、シプロヘプタジンの有効性と忍容性を評価した。

方法:食欲不振の19~64歳の患者を、シプロヘプタジンまたはプラセボを8週間投与するようランダムに割り付けた。
主要評価項目は、Edmonton Symptom Assessment Systemの韓国語版で測定した食欲の変化の試験期間開始時から終了時までの群間差とした。
副次的評価項目は、体重、身体計測、体組成、簡易栄養食欲調査票で測定した食欲および毒性への影響であった。患者375例が2群にランダムに割り付けられた(シプロヘプタジン189例、プラセボ186例)。

調査結果:食欲スコアの平均(SD)変化量は、プラセボ群の-2.03(0.13)に対し、シプロヘプタジン群では-2.42(0.12)となり、シプロヘプタジン群では統計学的に有意な食欲の増加が認められた(差 +0.38[0.18]、95%CI -0.73 ~ -0.04、P=0.0307)。シプロヘプタジン群では、体重および体格指数が有意に増加した。
最も多かった有害事象は、予測通り傾眠であった。シプロヘプタジンの忍容性は良好であり、重篤な有害事象は1件(大腸炎)で、試験薬との関連性が低い中等度の有害事象に分類された。

結果から示唆されたこと:食欲不振の健康な成人を対象に、シプロヘプタジンの最小有効量を用いて、プラセボと比較した、最大規模のランダム化二重盲検プラセボ対照臨床試験を紹介した。シプロヘプタジンは、食欲不振の患者さんにとって安全な治療法である。今回の結果は、成人の食欲不振を改善するためにシプロヘプタジンを使用する際の重要な情報となる。高齢者におけるシプロヘプタジンの効果に焦点を当てたさらなるランダム化試験が必要である。

キーワード:食欲抑制、食欲増進、シプロヘプタジン、食欲不振、体重増加

追加情報

エドモントン症状評価システム改訂版(日本語版)
Edmonton Symptom Assessment System Revised Japanese version: ESAS-r-J

エドモントン症状評価システム(ESAS)は、1991年に緩和医療の対象となる患者が頻繁に経験する9つの症状(痛み、だるさ、眠気、吐き気、食欲不振、息苦しさ、気分の落ち込み、不安、全体的な調子)のアセスメントに役立つように開発された評価票。また、ESAS-r(revised: 修正版)には、患者個々の症状をあわせて評価できるように、10番目の症状の欄が空けられている。

がん患者421例におけるESAS(食欲の項目)の実臨床における最小有効差(MCID)は、−0.6(−1.5 〜 0.3)と報告されているが(PMID: 23177724)、明確なカットオフ値は明らかとなっていない。

引用文献

Efficacy and Tolerability of Cyproheptadine in Poor Appetite: A Multicenter, Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Study
Sue Youn Kim et al. PMID: 34509304 DOI: 10.1016/j.clinthera.2021.08.001
Clin Ther. 2021 Sep 8;S0149-2918(21)00297-6. doi: 10.1016/j.clinthera.2021.08.001. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34509304/

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