出血リスクの高い患者に対するPCI後の二重抗血小板療法は1ヵ月が良い?(RCT; MASTER DAPT試験; N Engl J Med. 2021)

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出血リスクの高い患者におけるPCI後のDAPT

二重抗血小板療法(DAPT)は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後のステント血栓症のリスクを低減させる目的で行われる治療法です。 併用する2剤は、基本的にアスピリンとチエノピリジン系抗血小板薬です。DAPTによる血栓リスク低下効果はありますが、出血リスクを増加させることから、リスクベネフィットを評価する必要があります。

これまでDAPTの実施期間について、多くの検証がなされてきましたが、薬剤溶出性冠動脈ステント留置後かつ出血リスクの高い患者における適切なDAPT期間はいまだ不明です。

そこで今回は、生分解性ポリマーシロリムス溶出冠動脈ステントの留置を受けた1ヵ月後、出血リスクの高い患者についてDAPTを直ちに中止する群(短縮療法)と、さらに少なくとも2ヵ月間継続する群(標準療法)にランダムに割り付けしたMASTER DAPT試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

4,434例のper-protocol集団において、正味の有害事象は短縮療法群で165例(7.5%)、標準療法群で172例(7.7%)に発生しました(差 -0.23%ポイント、95%信頼区間[CI] -1.80 ~ 1.33;非劣性P<0.001)。

心臓または脳の主要な有害事象が発生したのは、短縮療法群で133例(6.1%)、標準療法群で132例(5.9%)でした(差 0.11%、95%信頼区間[CI] -1.29 ~ 1.51;非劣性に関する P=0.001)

Intention-to-treat集団の4,579例のうち、大出血または臨床的に重要な非大出血は、短縮療法群では148例(6.5%)、標準療法群では211例(9.4%)に発生しました(差 -2.82%、95%CI -4.40 ~ -1.24;優越性P<0.001)。

コメント

PCIを受けた患者において、血栓リスク低下と出血リスク増加のバランスを考慮しながらDAPTを実施する必要があります。しかし、いまだ多くの診療ガイドラインでは実施期間について結論が出ておらず、目安として1〜2年実施することが提案されています。さらに、出血リスクの高い患者におけるDAPT実施期間については明文化されていません。

さて、本試験結果によれば、1ヵ月間のDAPTは、さらに2ヵ月間治療を継続することと比較して、有害事象(MACE*も含む)の発生において、非劣性でした。一方、大出血または臨床的に重要な非大出血は有意に少ないことが示されました。しかし、対象群におけるDAPT期間は少なくとも3ヵ月間であることから、これまでに推奨されていた期間より短いため、MACE*の発生率が相対的に少なくなっている可能性があります。出血リスクが高い患者であることから、DAPTを1年以上実施することは困難かもしれませんが、薬剤用量の漸減も考慮し、より長期間のDAPTと比較する必要があると考えられます。

続報に期待。

*Major Adverse Cardiovascular Events:主要心血管イベント

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✅まとめ✅ PCI後の出血リスクの高い患者において、1ヵ月間のDAPTは、正味の有害臨床事象および主要な心臓または脳の有害事象発生に関して、少なくともさらに2ヵ月間治療を継続することと比較して非劣性であり、大出血または臨床的に重要な非大出血の発生率が低かった。

根拠となった試験の抄録

背景:薬剤溶出性冠動脈ステント留置後の出血リスクの高い患者における二重抗血小板療法(DAPT)の適切な期間はいまだ不明である。

方法:生分解性ポリマーシロリムス溶出冠動脈ステントの留置を受けた1ヵ月後に、出血リスクの高い患者を、二重抗血小板療法を直ちに中止する群(短縮療法)と、さらに少なくとも2ヵ月間継続する群(標準療法)にランダムに割り付けた。
3つのランク付けされた主要アウトカムは、正味の有害臨床イベント(総死亡、心筋梗塞、脳卒中、大出血の複合)、主要な心臓または脳の有害イベント(総死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合)、大出血または臨床的に関連性のある非大出血であり、累積発生率は335日目に評価された。最初の2つのアウトカムについては、per-protocol集団における非劣性を、3つ目の結果についてはintention-to-treat集団における優越性を評価した。

結果:4,434例のper-protocol集団において、正味の有害事象は短縮療法群で165例(7.5%)、標準療法群で172例(7.7%)に発生した(差 -0.23%ポイント、95%信頼区間[CI] -1.80 ~ 1.33;非劣性P<0.001)。
心臓または脳の主要な有害事象が発生したのは、短縮療法群で133例(6.1%)、標準療法群で132例(5.9%)であった(差 0.11%、95%信頼区間[CI] -1.29~1.51;非劣性に関する P=0.001)。Intention-to-treat集団の4,579例のうち、大出血または臨床的に重要な非大出血は、短縮療法群では148例(6.5%)、標準療法群では211例(9.4%)に発生した(差 -2.82%、95%CI -4.40 ~ -1.24;優越性P<0.001)。

結論:1ヵ月間の二重抗血小板療法は、正味の有害臨床事象および主要な心臓または脳の有害事象の発生に関して、少なくともさらに2ヵ月間治療を継続することと比較して非劣性であった。また、短縮された治療期間においては、大出血または臨床的に重要な非大出血の発生率が低かった(資金提供:テルモ、MASTER DAPT、ClinicalTrials.gov番号:NCT03023020)。

引用文献

Dual Antiplatelet Therapy after PCI in Patients at High Bleeding Risk
Marco Valgimigli et al. PMID: 34449185 DOI: 10.1056/NEJMoa2108749
N Engl J Med. 2021 Aug 28. doi: 10.1056/NEJMoa2108749. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34449185/

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