ランダム化比較試験とは?② 〜ランダム化比較試験のメリット〜

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研究の種類

臨床試験の種類は大きく分けて3種類あります。

  • 介入試験:非ランダム化比較試験、ランダム(無作為)化比較試験
  • 観察試験:コホート研究
  • 症例対象研究、症例集積研究、症例報告

新薬の承認申請において、なぜランダム化比較試験の実施が求められるのか?今回の記事で解説していきます。

各試験におけるバイアスの種類とランダム化比較試験のメリット

科学的検証における最も重要な課題として「バイアスを如何に取り除くのか」があります。このバイアスとは何でしょうか?

バイアスとは、介入・暴露と患者の転帰の関係の強さを歪めてしまうものです。大きく分けて選択バイアス、情報バイアス、交絡の3つに分類されます。

症例報告・症例集積研究におけるバイアス

例えば、コーヒーを1日5杯以上摂取する1人が肺がんになったとしましょう。この場合、偶然に肺がんを発症した可能性を否定できません。このような報告を症例報告と呼びます。

この場合、選択バイアス、情報バイアス、交絡、すべてのバイアスが入り込みます。

特定の「1人」の報告ですので、偶然に選ばれた可能性、肺がんという疾患が先行していることによる情報収集に偏りが生じる可能性、またコーヒーに注目していることから他の原因へ目を向けることが困難となります。

いずれにせよ、この症例報告からは、「コーヒーを1日5杯以上摂取すると肺がんになるかどうか不明」ということです。

いくつかの症例を集めた場合もバイアスが生じます。例えばコーヒー好きな肺がん患者10例の報告があったとしましょう。これを症例シリーズや症例集積研究と呼びますが、個々の患者の特性が一致しているのかどうか、コーヒーの摂取量が個々の患者で一致しているのかどうか、カフェインレスのコーヒーを摂取していたかどうか、喫煙者であるかどうかなど、様々な要因が考えられます。つまり患者背景にばらつきが生じている可能性があります。したがって、コーヒー摂取以外の原因により、たまたま肺がんとなった人もいる可能性があるため、「コーヒー摂取と肺がんの関係は不明」ということになります。

観察研究におけるバイアス

コーヒーを1日5杯以上摂取する集団500例で肺がんリスクが3倍になったとしましょう。この場合のバイアスには何があるのでしょうか?

ここでも500例に偏った結果である可能性を否定できません。なぜなら、最初からコーヒーに注目しているため、実はコーヒー以外が肺がんの直接の原因となった要因を特定しづらくなっています。具体的には、コーヒーが好きな集団は同時に愛煙家である可能性が残っています。今回の例は、喫煙と肺がんの因果関係がこれまでの研究結果から明らかにされているため、やや強引な表現となっている可能性を否定できません。とはいえ、観察研究の結果からは「コーヒーを1日5杯以上摂取すると肺がんになるかどうかは、やはり不明」ということになります。この場合、コーヒー摂取と肺がんリスク増加を相関関係、喫煙と肺がんリスク増加を因果関係コーヒー摂取と肺がんリスク増加における喫煙のことを交絡因子と呼びます。

※喫煙による肺がんリスク増加については、さまざまな研究結果を経て導き出された結論ですが、ここでは詳細に触れません。

非ランダム化比較試験におけるバイアス

症例報告や観察研究など自然事象を観察する場合、特定できていない交絡因子を排除できないことから、相関関係の強弱までしか述べられません。そこで、介入研究の登場です。

では先程の例を用い、コーヒーを1日5杯以上摂取する群と摂取しない群、任意に2つの群に分けたとしましょう。その結果、コーヒー摂取群の方が肺がんリスク増加が認められたとしましょう。この場合はどうでしょうか。コーヒーの摂取が肺がんの原因と言えるのでしょうか。答えはNOです。2群に分けた際に、もともと肺がんになりやすかった患者がコーヒー摂取群に分けられたのかもしれません。

ここまでのことから、臨床試験を実施するにあたり、試験実施者、試験対象者、試験デザインにより、それぞれバイアスが入りやすいことがわかります。因果関係を明らかにするためには、特に交絡因子を排除できるかどうかが重要となります。

ランダム化比較試験におけるバイアスとメリット

ここまで臨床試験に入り込みやすいバイアス(選択バイアス、情報バイアス、交絡)に触れてきました。なかでも交絡因子を排除できるかどうかが、因果関係を述べる上で重要となりそうです。そこで登場するのがランダム化比較試験です。ランダム化比較試験は、特定できていない未知の交絡因子を排除することができます。これがランダム化比較試験の最大のメリットです(詳細については、次回の記事で触れます)。一方で、試験デザインに注意しないとバイアスが入り込んでしまいます。つまり、ランダム化比較試験も無敵というわけではありません。きちんとデザインされたランダム化比較試験が、介入と転帰における因果関係を述べる上で重要ということになります。

バイアスを可能な限り排除できるランダム化比較試験を実施する上で必要なことは?〜臨床試験のための統計的原則(ICH-E9)〜

前回の記事で紹介した「臨床試験のための統計的原則(ICH-E9)」について触れていきます。この文書によれば、試験デザインに求められるのは「ランダム化」、「盲検化(ブラインド、マスク)」、「並行群間比較試験」、「多施設共同試験」です。他にも組入基準・除外基準、サンプルサイズやIntention-to-treat解析などの注意点がありますが、ここでは、あくまでも試験デザインにとどめます。

なぜ、これらのデザインが求められるのか?次回の記事で説明していきます。

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