はじめに
薬の効果を検証する際にランダム化比較試験の実施が求められています。これは「エビデンスレベルが高いため」という説明が多くなされていますが、やや抽象的な表現であると考えられます。
そこで、なるべく具体的な例をあげて、ランダム化比較試験の優れている点と、注意点について解説していきます。
ランダム化比較試験を知る前に
新薬の開発過程について
ランダム化比較試験の前に、新薬の開発過程についてご紹介します。
例えば、新規の高血圧治療薬(以下、新薬候補薬A)を新しく開発する場合、臨床試験は以下のような過程を踏みます。臨床試験の前にシード探索(医薬品の候補成分の探索)や基礎研究(ヒトではなく細胞や動物を使用)が実施されますが、ここでは割愛します。
通常、医薬品として厚生労働省に承認されるためには、基礎研究の他、第1相(Phase 1, フェーズ1)試験〜第3相試験を実施し、研究結果を解析した後、申請資料をまとめて厚生労働省へ申請します。特に第3相試験では、多くの患者を対象に新薬候補薬Aの有効性・安全性を検証することから “より正確に” 試験を実施することが求められます。
この “より正確に” という表現について、どのように、具体的に臨床試験を実施すれば良いのか、手順書があります。これをガイドラインと呼びます。日本では、このガイドラインとして、医薬品規制調和国際会議で決定されたICH-E9(臨床試験のための統計的原則)が用いられています。
ICH-E9(臨床試験のための統計的原則)策定の目的とは?
このICH-E9は欧州、米国、そして日本が国際会議で議論し決定されます。医薬品は多くの国で承認されますが、各国で同じような臨床試験が実施されると、臨床試験へ参加した被験者が不必要に多く集められる可能性があります。ICH-E9は、新薬の研究開発のために実施される臨床試験を繰り返さないために必要であり、国際的な基準で策定されました。
次回以降、このICH-E9(臨床試験のための統計的原則)の具体的な内容に触れ、ランダム化比較試験について解説していきます。
その前に、まずは試験デザインの特徴と、各試験デザインに入り込むバイアス(偏り)について、次回解説していきます。
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