片頭痛に対する経口予防薬の開発が進んでいる
片頭痛はアンメットニーズが高い領域です。これまで経口薬による予防治療が行われてきましたが、片頭痛発作を充分に抑制することはできませんでした。そこで開発されたのが低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬ですが、現在は注射しかありません。いずれの注射製剤も投与間隔は約1ヵ月ですので、そこまで患者負担は大きくないかもしれません。しかし、なるべく侵襲性の低い治療経路が望まれています。
Atogepant(アトゲパント)は、経口の低分子CGRP受容体拮抗薬であり、片頭痛の予防的治療法として研究されています。今回ご紹介するのは、アトゲパントの第3相二重盲検試験であるADVANCE試験の結果をご紹介します。
試験結果から明らかになったことは?
合計2,270例の参加者がスクリーニングされ、910例が登録され、873例が有効性の分析対象となりました。214例がアトゲパント10mg群に、223例がアトゲパント30mg群に、222例がアトゲパント60mg群に、214例がプラセボ群に割り付けられました。ベースライン時の1ヵ月あたりの片頭痛の平均日数は、4群で7.5~7.9日でした。
1ヵ月あたりの片頭痛の平均日数 | 12週間のベースラインからの変化 | プラセボとの平均差 |
アトゲパン10mg群 | -3.7日 | -1.2日 (95%CI -1.8 ~ -0.6) P<0.001 |
アトゲパン30mg群 | -3.9日 | -1.4日 (95%CI -1.9 ~ -0.8) P<0.001 |
アトゲパン60mg群 | -4.2日 | -1.7日 (95%CI -2.3 ~ -1.2) P<0.001 |
プラセボ群 | -2.5日 |
12週間のベースラインからの変化は、アトゲパン10mg群で-3.7日、アトゲパン30mg群で-3.9日、アトゲパン60mg群で-4.2日、プラセボ群で-2.5日でした。
ベースラインからの変化におけるプラセボとの平均差は、アトゲパント10mgで-1.2日(95%信頼区間[CI] -1.8 ~ -0.6)、アトゲパント30mgで-1.4日(95%CI -1.9 ~ -0.8)、アトゲパント60mgで-1.7日(95%CI -2.3 ~ -1.2)でした(プラセボとのすべての比較においてP<0.001)。
副次評価項目の結果は、AIM-D Performance of Daily ActivitiesスコアとAIM-D Physical Impairmentスコア(10mg投与時)を除いて、アトゲパントがプラセボを上回りました。
主な有害事象は、便秘(アトゲパントで6.9~7.7%)および吐き気(アトゲパントで4.4~6.1%)でした。重篤な有害事象としては、アトゲパント10mg群で喘息と視神経炎がそれぞれ1例ずつ認められました。
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経口の低分子CGRP受容体拮抗薬であるAtogepant(アトゲパント)の開発が進んでいます。今回の予防的治療により、1ヵ月あたりの片頭痛の平均日数7.5~7.9日が約半分に減りました。治療効果としては大きいと考えられます。
今後はアトゲパント治療的投与による効果検証が求められます。今後の報告に期待。
✅まとめ✅ アトゲパントの1日1回の経口投与は、12週間にわたり片頭痛の日数および頭痛の日数を減少させるのに有効であった。
根拠となった試験の抄録
背景:Atogepant(アトゲパント)は、経口の低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗薬であり、片頭痛の予防的治療法として研究されている。
方法:第3相二重盲検試験において、月に4~14日の片頭痛を有する成人を1:1:1:1の割合でランダムに割り付け、アトゲパント経口剤(10mg、30mg、60mg)またはプラセボを1日1回、12週間投与した。
主要評価項目は、12週間の平均片頭痛日数のベースラインからの変化でした。
副次的評価項目は、1ヵ月あたりの頭痛日数、3ヵ月平均の片頭痛日数がベースラインから50%以上減少したこと、QOL(生活の質)、AIM-D(Activity Impairment in Migraine-Diary)のスコアなどとした。
結果:合計2,270例の参加者がスクリーニングされ、910例が登録され、873例が有効性の分析対象となった。214例がアトゲパント10mg群に、223例がアトゲパント30mg群に、222例がアトゲパント60mg群に、214例がプラセボ群に割り付けられた。
ベースライン時の1ヵ月あたりの片頭痛の平均日数は、4群で7.5~7.9日であった。12週間のベースラインからの変化は、アトゲパン10mg群で-3.7日、アトゲパン30mg群で-3.9日、アトゲパン60mg群で-4.2日、プラセボ群で-2.5日であった。
ベースラインからの変化におけるプラセボとの平均差は、アトゲパント10mgで-1.2日(95%信頼区間[CI] -1.8 ~ -0.6)、アトゲパント30mgで-1.4日(95%CI -1.9 ~ -0.8)、アトゲパント60mgで-1.7日(95%CI -2.3 ~ -1.2)であった(プラセボとのすべての比較においてP<0.001)。
副次評価項目の結果は、AIM-D Performance of Daily ActivitiesスコアとAIM-D Physical Impairmentスコア(10mg投与時)を除いて、アトゲパントがプラセボを上回った。
主な有害事象は、便秘(アトゲパントで6.9~7.7%)および吐き気(アトゲパントで4.4~6.1%)であった。重篤な有害事象としては、アトゲパント10mg群で喘息と視神経炎がそれぞれ1例ずつ認められた。
結論:アトゲパントの1日1回の経口投与は、12週間にわたり片頭痛の日数および頭痛の日数を減少させるのに有効であった。有害事象は便秘と吐き気であった。片頭痛予防のためのアトゲパントの効果と安全性を明らかにするためには、より長期かつ大規模な試験が必要である(資金提供:Allergan社、ADVANCE ClinicalTrials.gov番号 NCT03777059.)。
引用文献
Atogepant for the Preventive Treatment of Migraine
Jessica Ailani et al. PMID: 34407343 DOI: 10.1056/NEJMoa2035908
N Engl J Med. 2021 Aug 19;385(8):695-706. doi: 10.1056/NEJMoa2035908.
— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34407343/
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