妊娠中の2型糖尿病患者におけるメトホルミン使用は安全ですか?(DB-RCT; MiTy試験; Lancet Diabetes Endocrinol. 2020)

crop pregnant woman embracing tummy with husband 05_内分泌代謝系
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メトホルミンは妊婦に禁忌とされているが…

メトホルミン(メトグルコ®️)の添付文書では、妊婦又は妊娠している可能性のある女性に禁忌とされています。この設定根拠としては、動物実験の結果と妊婦の特徴によるものです。

  • 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。
  • 動物実験(ラット、ウサギ)で胎児への移行が認められており、一部の動物実験(ラット)で催奇形作用が報告されている。
  • また、妊婦は乳酸アシドーシスを起こしやすい。

妊娠中の2型糖尿病女性にメトホルミンを使用するケースが増えていることもまた事実ですが、妊娠アウトカムに対するメトホルミン使用の有益性と有害性に関するデータはほとんどありません。

そこで今回は、2型糖尿病の妊婦において、インスリンの標準的な投与法にメトホルミンを追加することが、新生児の罹患率と死亡率に及ぼす影響を調べることを目的に実施された前向き多施設国際ランダム化並行二重盲検プラセボ対照試験(MiTy試験)の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

カナダの25施設とオーストラリアの4施設で実施された前向き多施設国際ランダム化並行二重盲検プラセボ対照試験では、妊娠中の2型糖尿病女性を、インスリンに加えてメトホルミン1,000mgを1日2回投与する群と、インスリンに加えてプラセボを投与する群にランダムに割り付けました。2011年5月25日から2018年10月11日の間に、女性502例を、メトホルミン253例(50%)、プラセボ249例(50%)に割り付けられた。主要アウトカムについて、メトホルミン群の233例(92%)、プラセボ群の240例(96%)で完全なデータが得られました。

インスリン
 +メトホルミン
(1,000mg × 2回/日)
インスリン
 +プラセボ
新生児期の主要複合転帰の発生率40%40%
相対リスク(RR)1.02
(95%CI 0.83~1.26)
P=0.86

新生児期の主要複合転帰において、有意な群間差は認められませんでした(40% vs. 40%、p=0.86、相対リスク(RR)1.02、95%CI 0.83~1.26)。

メトホルミン投与群は、プラセボ投与群と比較して、良好な血糖コントロールを達成し(妊娠34週時のHbA1c、平均血糖値)、インスリンの必要量、体重増加、帝王切開出産が少ないことが明らかとなりました。一方、高血圧症については両群間に有意差は認められませんでした。

プラセボ群と比較して、メトホルミンを投与された乳児の体重は少なく(平均出生体重3,156g[SD 742] vs. 3,375g[742]、差 -218[-353 ~ -82]、p=0.002)、出生体重が97%以上であった乳児、出生時体重4,000g以上が少ないことが示されました。また、メトホルミンを投与された乳児は、脂肪率の測定値が減少し、乳児が在胎不当過小である割合が多かった。

臍帯c-ペプチドについては、両群間に有意差は認められませんでした。

最も多く報告された有害事象は消化器系でしたが、発生数に差は認められませんでした(メトホルミン群38件 vs. プラセボ群38件)。

コメント

妊婦(および授乳婦)に対する安全性評価のための臨床試験は、倫理的側面から実施することが困難です。したがって、in vitroまたは/および動物実験の結果が用いられます。しかし、種差により、同様の結果が得られないことは多々あります。事実、医薬品承認後の市販後臨床試験の結果により添付文書の改定が行われています(タクロリムス、シクロスポリン、アザチオプリンなど)。

メトホルミンは海外で2型糖尿病治療の第一選択薬とされており、日本においても使用量が増えてきています。しかし、妊婦に対する安全性の評価は充分になされていません。

さて、本試験結果によれば、インスリンへのメトホルミン追加により、プラセボの追加と比較して、新生児期の主要複合転帰に差は認められませんでした。また母体の体重とインスリン投与量が減少し、血糖コントロールが改善しました。一方で、脂肪率と乳児サイズの測定値が低下したことにより、体重4,000g以上の乳児数は減少しましたが、在胎不当過小の割合が増加しました。平均出生体重は、メトホルミン群で3,156g(SD 742)、プラセボ群で3,375g[742]、群間差は-218[-353 ~ -82]でした。

体重について、そこまで大きな差はないと考えられますが、ここは見解が分かれるところでしょう。インスリン使用により体重が増加しやすいことを考慮すると、メトホルミン併用により体重増加の抑制、インスリン使用量の減少、血糖コントロールの改善が得られることは有益であると考えます。

リスクとベネフィットのバランスを図る上で、重要な試験結果であると考えます。

child touching his mother lamb

✅まとめ✅ メトホルミン投与群では、母体の体重とインスリン投与量が減少し、血糖コントロールが改善したことに加え、脂肪率と乳児サイズの測定値が低下したことにより、大きな乳児は減少したが、在胎不当過小の割合が増加した。

根拠となった試験の抄録

背景:妊娠中の2型糖尿病女性にメトホルミンを使用するケースが増えているが、これらの女性の妊娠アウトカムに対するメトホルミン使用の有益性と有害性に関するデータはほとんどない。
我々は、2型糖尿病の妊婦において、インスリンの標準的な投与法にメトホルミンを追加することが、新生児の罹患率と死亡率に及ぼす影響を調べることを目的とした。

方法:カナダの25施設とオーストラリアの4施設で実施された前向き多施設国際ランダム化並行二重盲検プラセボ対照試験では、妊娠中の2型糖尿病女性を、インスリンに加えてメトホルミン1,000mgを1日2回投与する群とプラセボを投与する群にランダムに割り付けた。ランダム化は、ウェブベースのコンピュータによるランダム化サービスで行われ、センターと妊娠前のBMI(30kg/m2未満または30kg/m2以上)で1:1の割合で層別化され、ランダムブロックサイズは4と6でした。女性は、2型糖尿病を患い、インスリンを投与されていて、単胎妊娠で、妊娠6週から22週+6日であれば対象となった。参加者には、1日の最初の食事の前、最後の食事の前、そして各食事の2時間後に空腹時血糖値を確認した。インスリンの投与量は、同一の血糖値目標(空腹時血糖値<5.3mmol/L [95mg/dL]、食後2時間血糖値<6.7mmol/L [120mg/dL])を目指して調整された。試験の受診は毎月行い、患者は標準的な臨床治療に必要な1~4週間ごとに受診した。受診時には、血圧と体重が測定され、患者は薬への耐性、入院の有無、インスリン投与量、重度の低血糖イベントについて質問され、グルコメーターの測定値は中央調整センターにダウンロードされた。参加者、介護者、結果評価者は、介入についてマスキングされた。
主要アウトカムは、胎児と新生児の複合アウトカムで、施設とBMIによって層別化したグループ間の相対リスクと95%CIを、intention-to-treat分析を用いた対数二項回帰モデルを用いて算出した。
副次評価項目には、いくつかの関連する母体および新生児の転帰が含まれた。
本試験はClinicalTrials.gov(NCT01353391)に登録された。

調査結果:2011年5月25日から2018年10月11日の間に、女性502例をランダムに割り付け、253例(50%)をメトホルミンに、249例(50%)をプラセボに割り付けた。主要アウトカムについて、メトホルミン群の233例(92%)、プラセボ群の240例(96%)で完全なデータが得られた。
両群間で、新生児期の主要複合転帰に有意な差は認められなかった(40% vs. 40%、p=0.86、相対リスク(RR)1.02、95%CI 0.83~1.26)。
メトホルミン投与群は、プラセボ投与群と比較して、良好な血糖コントロールを達成し(妊娠34週時のHbA1cは41.0mmol/mol[SD 8.5] vs. 43.2mmol/mol[SD -10]、5.90% vs. 6.10%、p=0.015、平均血糖値は6.05[SD 0.93] vs. 6.27[SD 0.90]、差 -0.2[-0.4 ~ 0.0])、インスリンの必要量(1.1単位/kg/日 vs. 1.5単位/kg/日、差 -0.4 [95%CI -0.5 〜 -0.2]; p<0.0001)、体重増加(7.2kg vs. 9.0kg; 差-1.8 [-2.7 〜 -0.9]; p<0.0001)、帝王切開出産が少なかった(メトホルミン群234例中125例[53%] vs. プラセボ群236例中148例[63%]、相対リスク[RR] 0.85 [95%CI 0.73 〜 0.99]; p=0.031)。
高血圧症では両群間に有意な差は認められなかった(メトホルミン群55例[23%] vs. プラセボ群56例[23%]、p=0.93、RR 0.99[0.72~1.35])。
プラセボ群と比較して、メトホルミンを投与された乳児の体重は少なく(平均出生体重3,156g[SD 742] vs. 3,375g[742]、差 -218[-353 ~ -82]、p=0.002)、出生体重が97%以上であった乳児は少なかった(メトホルミン群20例[9%] vs. プラセボ群34例[15%]、RR 0.58[0.34~0.97]、p=0.041)、出生時体重4,000g以上が少なかった(メトホルミン群28例[12%] vs. プラセボ群44例[19%]、RR 0.65[0.43~0.99]、p=0.046)、メトホルミンを投与された乳児は、脂肪率の測定値が減少した(スキンフォールドの平均合計値16.0mm[SD 5.0] vs. 17.4[6.2]mm、差 -1.41[-2.6 ~ -0.2]、p=0.024、新生児の平均脂肪量13.2[SD 6.2] vs. 14.6[5.0]、p=0.017)。メトホルミン群では30例(13%)、プラセボ群では15例(7%)の乳児が在胎不当過小だった(RR 1.96[1.10 〜 3.64]; p=0.026)。
臍帯c-ペプチドについては、両群間に有意な差は認められなかった(メトホルミン群673pmol/L[435]、プラセボ群758pmol/L[595]、p=0.10、平均値の比 0.88[0.72 ~ 1.02])。
最も多く報告された有害事象は消化器系であった(メトホルミン群38件、プラセボ群38件)。

結果の解釈:メトホルミン投与群では、母体の血糖値と新生児の脂肪率にいくつかのメリットが認められた。母体の体重増加とインスリン投与量が減少し、血糖コントロールが改善したことに加え、脂肪率と乳児サイズの測定値が低下したことにより、大きな乳児は減少したが、在胎不当過小の割合が増加した。このような乳児への影響を理解することは、妊娠中にメトホルミンの使用を考えている患者に適切なアドバイスをする上で重要である。

資金提供:カナダ健康研究所、ルネンフェルト・タネンバウム研究所、トロント大学

引用文献

Metformin in women with type 2 diabetes in pregnancy (MiTy): a multicentre, international, randomised, placebo-controlled trial
Denice S Feig et al. PMID: 32946820 DOI: 10.1016/S2213-8587(20)30310-7
Lancet Diabetes Endocrinol. 2020 Oct;8(10):834-844. doi: 10.1016/S2213-8587(20)30310-7.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32946820/

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