ポリファーマシーを有する高齢者におけるスタチン中止は、心血管アウトカムと死亡率に影響しますか?(後向きコホート研究; JAMA Netw Open. 2021)

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ポリファーマシーと併存疾患の関係性とは?

平均寿命の延長は、間違いなく21世紀における最高の成果の一つです(PMID: 26561272)。同時に、人口の高齢化に伴い、併存疾患を有する患者数が増加しています(PMID: 31601959)。併存疾患とは、複数の健康問題が共存している状態であり、高齢の患者では事実上、生活の質の低下と関連しています(PMID: 19597174)。併存疾患があると、多剤併用(Polypharmacy, ポリファーマシー)が避けられません(PMID: 30540223)。しかし、複数の慢性疾患とポリファーマシーの両方にさらされていると、認知機能障害などのさらなる病的状態や、薬物間の相互作用による副作用など、臨床的に悪影響を及ぼす可能性があります(PMID: 29562543PMID: 17867728)。

このような背景から、ポリファーマシーを最小限に抑え、患者の健康状態を改善するために、薬剤を徐々に減らしたり、中止したりするプロセスである脱処方(deprescribing, 減処方)に注目が集まっています(PMID: 25798731)。しかし、いくつかのランダム化臨床試験によると、脱処方は不適切な薬の使用を減らすように見えるものの、入院や生存率などの臨床エンドポイントに対する効果はまだ不明です(PMID: 21508941PMID: 24566877PMID: 24814043)。

スタチン系薬剤は、欧米諸国で最も広く処方されている薬剤であり、心血管疾患の一次予防および二次予防に極めて重要な役割を果たしています(PMID: 23440795PMID: 20585067PMID: 21989464PMID: 27905702PMID: 23838105)。しかし、様々な理由により、ランダム化臨床試験では、通常、臨床状態の悪い患者が除外されるため、ポリファーマシーを有するような虚弱な患者(poor clinical conditions)に対して、スタチン投与がCV予防の役割を果たしているかどうか、また、どの程度の役割を果たしているかは、まだ不明です(PMID: 25798575)。もちろん、このことは、ポリファーマシーを有する患者におけるスタチン脱処方の意義を予測できないことを意味します。

そこで今回は、ポリファーマシーを有する65歳以上の患者を対象とした後向き大規模コホート研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

後向き集団ベースのコホート研究の対象は、イタリア・ロンバルディア州の65歳以上の住民で、2013年10月1日から2015年1月31日まで、スタチン、血圧降下剤、抗糖尿病薬、抗血小板薬による継続治療を受けていた29,047例を対象とし、2018年6月30日まで追跡調査が行われました。

全コホートには、ポリファーマシーを有する患者29,047例(平均[SD]年齢 76.5[6.5]歳、男性 18,257例[62.9%])が含まれ、そのうち5,819例(20.0%)が他の薬を継続しながらスタチンを中止し、4,010例(68.9%)が比較対照者とマッチしました。

スタチン中止群では、平均(SD)年齢は76.5(6.4)歳、2,405例(60.0%)が男性で、506例(12.6%)がMultisource Comorbidity Score 4または5を有していました。維持群では、平均(SD)年齢は76.1(6.3)歳、2,474例(61.7%)が男性で、482例(12.0%)が多元的共存症スコア4または5を有していました。

スタチン維持群と比較して、中止群の患者は、心不全による入院(HR 1.24、95%CI 1.07〜1.43)およびあらゆる心血管転帰による入院(HR 1.14、95%CI 1.03〜1.26)、あらゆる原因による死亡(HR 1.15、95%CI 1.02〜1.30)、あらゆる原因による緊急入院(HR 1.12、95%CI 1.05〜1.19)のリスクが高いことが明らかとなりました。

スタチン中止群
(vs. 継続群)
心不全による入院HR 1.24
95%CI 1.07〜1.43
心血管転帰による入院HR 1.14
95%CI 1.03〜1.26
あらゆる原因による死亡HR 1.15
95%CI 1.02〜1.30
あらゆる原因による緊急入院HR 1.12
95%CI 1.05〜1.19

コメント

高齢化、これに伴う併存疾患の増加から、ある程度ポリファーマシーとなる状況は想像に難くありません。ポリファーマシーはあくまでも状況、あるいは使用薬剤が多いという状態であり、これ自体が問題となることは少ないと考えられます。過去の報告によれば、ポリファーマシーと潜在的に不適切な処方(PIMs)数の増加と相関しており、このPIMsが有害なアウトカムを引き起こしている可能性があります。

さまざまな薬剤が使用されていますが、中でもスタチンは循環器領域における主要な薬剤の一つではあるものの、75〜80歳を超えるような超高齢者においてはスタチン使用を中止しても予後への影響が少ないことがランダム化比較試験で報告されています。しかし、一般的な集団における影響は明らかとなっていません。

さて、本試験結果によれば、イタリアの平均年齢76.5歳の集団において、スタチン使用の継続は、使用中止と比較して、心不全による入院、全心血管アウトカムによる入院、全死亡、全緊急入院のリスクが有意に高いことが明らかとなりました。

個人的には、リスク増加の程度はそこまで大きくない印象です。また後向き研究であることから、他の交絡因子の影響があるのではないかと考えています。具体的には、使用薬剤数、薬剤用量、喫煙、服薬アドヒアランスなどです。スタチン使用中止によるアウトカムへの影響は、まだ充分に検討されていません。続報に期待。

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✅まとめ✅ 他の薬物療法を維持しながらスタチンを中止することは、維持する場合と比較して、致死的および非致死的な心血管アウトカムの長期的リスクの増加と関連していた。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:ポリファーマシーは高齢者の大きな健康問題である。処方解除は不適切な薬の使用を減少させる可能性があるが、臨床的なエンドポイントへの影響はまだ不明である。

目的:ポリファーマシーを有する高齢者コホートにおいて、他の薬剤を維持したままスタチン系薬剤の使用を中止することの臨床的意味を評価する。

試験設計、設定および参加者:このレトロスペクティブな集団ベースのコホート研究では、イタリア・ロンバルディア州の65歳以上の住民で、2013年10月1日から2015年1月31日まで、スタチン、血圧降下剤、抗糖尿病薬、抗血小板薬による中断のない治療を受けていた29,047例を対象とし、2018年6月30日まで追跡調査を行った。データは、イタリア・ロンバルディア州の医療利用データベースを用いて収集した。データ解析は2020年3月~11月に実施した。

曝露:コホートメンバーを追跡調査し、スタチンを中止した患者を特定した。この群のうち、スタチン中止後の最初の6か月間に他の治療法を維持した患者を、スタチンも他の薬剤も中止しなかった患者と1:1で傾向スコアマッチングした。

主要アウトカムと評価:スタチンを中止した患者と維持した患者のペアを、最初の中止から2018年6月30日まで追跡調査し、スタチン中止に関連する致死的および非致死的転帰のハザード比(HR)および95%CIを推定した。

結果:全コホートには、ポリファーマシーを有する患者29,047例(平均[SD]年齢 76.5[6.5]歳、男性 18,257例[62.9%])が含まれた。そのうち、5,819例(20.0%)が他の薬を継続しながらスタチンを中止し、4,010例(68.9%)が比較対照者とマッチした。
スタチン中止群では、平均(SD)年齢は76.5(6.4)歳、2,405例(60.0%)が男性で、506例(12.6%)がMultisource Comorbidity Score 4または5を有していた。維持群では、平均(SD)年齢は76.1(6.3)歳、2,474例(61.7%)が男性で、482例(12.0%)が多元的共存症スコア4または5を有していた。スタチン維持群と比較して、中止群の患者は、心不全による入院(HR 1.24、95%CI 1.07〜1.43)およびあらゆる心血管転帰による入院(HR 1.14、95%CI 1.03〜1.26)、あらゆる原因による死亡(HR 1.15、95%CI 1.02〜1.30)、あらゆる原因による緊急入院(HR 1.12、95%CI 1.05〜1.19)のリスクが高かった。

結論と関連性:ポリファーマシーを受けている患者を対象とした本研究では、他の薬物療法を維持しながらスタチンを中止することは、致死的および非致死的な心血管アウトカムの長期的リスクの増加と関連していた。

引用文献

Cardiovascular Outcomes and Mortality Associated With Discontinuing Statins in Older Patients Receiving Polypharmacy
Federico Rea et al. PMID: 34125221DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2021.13186
JAMA Netw Open. 2021 Jun 1;4(6):e2113186. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2021.13186.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34125221/

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