NSAIDs使用者の潜伏性消化管出血のリスク低減における酸抑制剤 vs. その他の粘膜保護剤(後向きコホート研究; Sci Rep. 2019)

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NSAIDs誘発出血に対する消化管保護剤(防御因子増強薬)の効果はどの程度なのか?

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、鎮痛・抗炎症・解熱効果があるため、世界中で最も広く処方されている薬剤の一つです。しかし、NSAIDsの様々な利点や良好な有効性にもかかわらず、その使用は消化管(GI)出血や穿孔を含む消化管の粘膜損傷につながる可能性があります。NSAID使用者における臨床的に重要な上部GI出血の発生率は、1~2.5/100人年と推定されています(PMID: 9402773PMID: 15974563)。最新のエビデンスによると、NSAIDは上部消化管出血に加えて、下部消化管出血のリスクも上部消化管出血と同程度に高めることが示唆されています(PMID: 1499936PMID: 19446262PMID: 9149053)。

ヘモグロビン値の2g/dL以上の低下は、臨床的にGI粘膜の損傷の指標として示唆されており、これまでいくつかの研究でGI出血のエンドポイントとして評価されてきました(PMID: 22804104)。したがって、ヘモグロビン値の2g/dL以上の低下は、上部および下部のGIイベントを含む、GI管全体のNSAIDによる粘膜損傷の潜在的なマーカーとなりえます。

消化管保護剤(gastroprotective agents, GPAs)には主に、プロトンポンプ阻害剤(PPI)やヒスタミン-2受容体拮抗剤(H2RA)などの酸抑制剤があり、主に上部消化管障害に対する保護作用があります。酸抑制剤以外のGPAsであるミソプロストール、レバミピド、eupatilinなどは、GI保護のメカニズムが異なります。さらに、いくつかの研究では、ミソプロストールとレバミピドがNSAID関連の腸管障害に有効であると報告されていますが、そのメカニズムは依然として不明なままです(PMID: 20924615PMID: 7918931PMID: 18188417)。

NSAID使用者がGPAs、特にレバミピドやミソプロストールを併用した場合のGI出血のリスクを評価した大規模研究はありません。そこで今回は、PPIやH2RA以外のGPAがNSAID関連の潜伏性GI出血の予防に有効かどうかを検討した大規模コホート研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

1ヵ月以上NSAIDを使用した変形性関節症または関節リウマチの患者9,133例が対象となりました。ヘモグロビン値の2g/dL以上の低下がGI傷害の指標とされました。

潜伏期消化管(GI)出血のハザード比
(95%CI)
PPI0.30(0.20〜0.44)
H2RA0.35(0.29〜0.43)
ミソプロストール0.47(0.23〜0.95)
レバミピド0.43(0.35〜0.51)
eupatilin0.98(0.86〜1.12)

中央値で27(範囲 4.3~51.3)週間の追跡期間中に、患者1,191例(13%)に潜伏性GI出血が発生しました。多変量解析により、GPAsを併用している患者と服用していない患者を比較したところ、潜伏期GI出血のハザード比(HR、95%信頼区間[CI])は、PPI、H2RA、ミソプロストール、レバミピド、eupatilinで、それぞれ0.30(0.20〜0.44)、0.35(0.29〜0.43)、0.47(0.23〜0.95)、0.43(0.35〜0.51)、0.98(0.86〜1.12)でした。

PPIとの併用に比べて、H2RA、ミソプロストール、レバミピド、eupatilinの併用は、潜伏GI出血のHR(95%CI)がそれぞれ1.19(0.79〜1.79)、1.58(0.72〜3.46)、1.44(0.96〜2.16)、3.25(2.21〜4.77)でした。

Figure 1
Figure 1.本文より引用

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個人的には意外な結果でした。データベースを利用した後向き研究の結果であることから、あくまでも相関関係ですが、レバミピドやミソプロストールなどの粘膜保護剤は、H2RAやPPIと同様にNSAID使用者の消化管傷害リスクを低減する可能性が示されました。

これまでの報告から、活動性の胃潰瘍患者など、消化管出血のリスクが高い患者においては、H2RAやPPIなどの酸抑制薬による効果は、防御因子増強薬よりも高いことが示されています。しかし、今回の患者集団のように出血リスクが比較的低い患者においては、防御因子増強薬で充分なのかもしれません。

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✅まとめ✅ レバミピドやミソプロストールなどの粘膜保護剤や酸抑制剤は、NSAID使用者のGI傷害のリスクを低減するのに有効であることが示唆された

根拠となった試験の抄録

目的:ヒスタミン-2受容体拮抗薬(H2RA)やプロトンポンプ阻害薬(PPI)などの酸抑制剤は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)使用者の消化管(GI)出血の予防に有効である。
酸分泌抑制剤が広く使用されているにもかかわらず、長期使用によるいくつかの潜在的なリスクについて懸念が残っている。そこで、我々は、NSAIDに関連するGI損傷の予防に、酸抑制療法以外の消化管保護剤(gastroprotective agents, GPAs)が有効かどうかを検討した。

方法:この目的のために、1ヵ月以上NSAIDを使用した変形性関節症または関節リウマチの患者9,133例を対象とした。ヘモグロビン値の2g/dL以上の低下をGI傷害の指標とした。GPAsには、酸抑制剤とその他の粘膜保護剤が含まれていた。酸抑制剤にはPPIとH2RAが含まれていた。その他の粘膜保護剤には、ミソプロストール、レバミピド、eupatilin(ユーパティリン、エパチリン、オイパチリン)が含まれていた。

結果:中央値で27(範囲 4.3~51.3)週間の追跡期間中に、患者1,191例(13%)に潜伏性GI出血が発生した。多変量解析により、GPAsを併用している患者としていない患者を比較したところ、潜伏期GI出血のハザード比(HR、95%信頼区間[CI])は、PPI、H2RA、ミソプロストール、レバミピド、eupatilinで、それぞれ0.30(0.20〜0.44)、0.35(0.29〜0.43)、0.47(0.23〜0.95)、0.43(0.35〜0.51)、0.98(0.86〜1.12)であった。
PPIとの併用に比べて、H2RA、ミソプロストール、レバミピド、eupatilinの併用は、潜伏GI出血のHR(95%CI)がそれぞれ1.19(0.79〜1.79)、1.58(0.72〜3.46)、1.44(0.96〜2.16)、3.25(2.21〜4.77)であった。

結論:今回の結果から、レバミピドやミソプロストールなどの粘膜保護剤や酸抑制剤は、NSAID使用者のGI傷害のリスクを低減するのに有効であることが示唆された。

引用文献

Effectiveness of acid suppressants and other mucoprotective agents in reducing the risk of occult gastrointestinal bleeding in nonsteroidal anti-inflammatory drug users
Tae Jun Kim et al. PMID: 31406189 PMCID: PMC6690955 DOI: 10.1038/s41598-019-48173-6
Sci Rep. 2019 Aug 12;9(1):11696. doi: 10.1038/s41598-019-48173-6.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31406189/

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