急性冠症候群を有する2型糖尿病患者のMACEに対する標準治療へのアパベタロン追加の効果はどのくらいですか?(DB-RCT; BETonMACE試験; JAMA. 2020)

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ブロモドメインおよびエクストラターミナール阻害剤の開発が進んでいる

エピジェネティクスとは、環境に応じてクロマチンが化学的に変化し、転写に影響を与える過程を指す。ブロモドメインおよびエクスターミナルタンパク質は、アセチル化されたリジン残基を検出して結合し、クロマチンと転写装置の間の分子足場を形成するエピジェネティックな「リーダー」の一種です。

ブロモドメインとエクストラターミナルタンパク質の導入は、炎症、酸化、補体の活性化、血栓形成など、動脈硬化の不適応な反応を引き起こす遺伝子の発現を促進する可能性があります。 これらの阻害剤は、ブロモドメインとエクストラターミナルタンパク質の2つのブロモドメインに結合し、クロマチンから移動させることで、不適応な遺伝子の発現を抑制することができます。

非選択的なブロモドメインおよびエクストラターミナール阻害剤は、ブロモドメイン1および2に同等に結合し、がん適応症のために開発されています。 Apabetalone(アパベタロン)は、ブロモドメイン2に選択的に結合する経口のブロモドメインおよびエクストラターミナル阻害剤であり、アテローム血栓症に特に関連している可能性があります。

患者798例を対象とした3件のプラセボ対照第2相試験のプール解析では、特に2型糖尿病、高感度C反応性プロテイン濃度の上昇、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール濃度の低下など、ブロモドメインおよびエクストラターミナル活性の上昇を伴う病態を有する患者において、アパベタロンの主要な心血管有害事象の減少が示唆されました(PMID: 29027131)。

そこで今回は、急性冠症候群を最近(治療開始前7〜90日以内)発症し、2型糖尿病、HDLコレステロール値が低い患者において、標準治療に加えて、アパベタロンとプラセボを比較し、心血管イベントが減少するかどうかを検証したBETonMACE試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化された2,425例の患者(平均年齢62歳、女性618例[25.6%])のうち、2,320例(95.7%)が主要評価項目を完全に確認できました。

中央値26.5ヵ月の追跡期間中に274件の主要エンドポイント(心血管死亡、非致死性心筋梗塞、脳卒中のいずれかが最初に発生するまでの時間)が発生しました。

アパベタロン投与群
(1,212例)
プラセボ投与群
(1,206例)
主要エンドポイント
(心血管死亡、非致死性心筋梗塞、脳卒中)
125例(10.3%)149例(12.4%)
 心血管死亡45例(3.7%55例(4.6%)
 非致死性心筋梗塞77例(6.4%94例(7.8%)
 脳卒中17例(1.4%)17例(1.4%)
総死亡61例(5.0%)69例(5.7%)
ハザード比(95%CI)0.82(0.65〜1.04)、P=0.11

プラセボよりもアパベタロンに割り付けられた患者の方が、肝酵素値の上昇(35[2.9%] vs. 11[0.9%])などの理由で試験薬を中止した患者が多く認められました(114[9.4%] vs. 69[5.7%])。

コメント

ブロモドメイン2およびエクストラターミナール阻害剤であるアパベタロンは、プラセボと比較して、主要評価項目(心血管死亡、非致死性心筋梗塞、脳卒中のいずれかが最初に発生するまでの時間)を減少できませんでした。内訳を見てみると、血管死亡及び非致死性心筋梗塞の発生は、アパベタロンで少なかったようです。

念のためサンプルサイズの計算を確認したところ、必要な例数は2,400必要な主要エンドポイントイベントは250件であることが示されています(α=0.05、検出力 80%)。したがって、例数も主要エンドポイントのイベント発生数も充分です。このサンプルサイズの計算では、プラセボ群の18ヵ月時点での主要評価項目の累積発生率を10.5%と仮定し、より保守的なHRを0.70と仮定したようです(18ヵ月後のアパベトロン群の主要エンドポイントの発生率は7.47%と仮定)。実際に認められた18ヵ月後のKaplan-Meier推定イベント発生率は、アパベタロン群で7.8%、プラセボ群で9.7%でした。

つまり、プラセボ群に組み入れられた集団の心血管イベントのリスクが低かった可能性があります。層別解析により、どのような患者でアパベタロンの利益が最大化できるのか明らかにできるかもしれません。2021年に事後解析の結果が報告されていますので、こちらについては、次回ご紹介します。

ちなみに第2相プラセボ対照試験のプール解析では、アパベトアロンの良好な効果は、2型糖尿病(ハザード比[HR] 0.43、P=0.02)、高感度CRPレベルの上昇(HR 0.38、P=0.02)、または低HDLコレステロール(HR 0.43、P=0.01)を有する患者において最も顕著であることが示唆されています。

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✅まとめ✅ 急性冠症候群の最近の発症、2型糖尿病、および低HDLコレステロール値を有する患者において、選択的ブロモドメインおよびエクストラターミナル蛋白質阻害剤であるアパベタロンを標準治療に追加しても、主要な心血管有害事象のリスクは有意に減少しなかった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:ブロモドメインとエクストラターミナルタンパク質は、遺伝子転写のエピジェネティックな制御因子である。Apabetalone(アパベタロン)はブロモドメイン2を標的とした選択的なブロモドメインおよびエクストラターミナルタンパク質阻害剤であり、アテローム血栓症に関連する経路に好影響を与える可能性があると考えられている。また、第2相試験の結果から、良好な臨床効果が示唆されている。

目的:アパベタロンが主要な心血管イベントを有意に減少させるかどうかを検証する。

試験デザイン、設定および参加者:13ヵ国190施設で実施されたランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験。直前の7~90日間に急性冠症候群を発症し、2型糖尿病を有し、高密度リポ蛋白コレステロール値が低い患者を登録対象とした。試験への組み入れは2015年11月11日に開始し、2018年7月4日に終了し、追跡は2019年7月3日に終了とした。

介入:患者は、標準治療に加えて、アパベタロン100mgを1日2回経口投与する群(n=1,215)と、マッチングプラセボを投与する群(n=1,210)にランダムに割り付けられた(1:1)。

主要評価項目と測定法:主要評価項目は、心血管死亡、非致死性心筋梗塞、脳卒中のいずれかが最初に発生するまでの時間の複合とした。

結果:ランダム化された2,425例の患者(平均年齢62歳、女性618例[25.6%])のうち、2,320例(95.7%)が主要評価項目を完全に確認できた。中央値26.5ヵ月の追跡期間中に274件の主要エンドポイントが発生した;アパベタロン投与群では125例(10.3%)、プラセボ投与群では149例(12.4%)であった(ハザード比 0.82[95%CI 0.65〜1.04]、P=0.11)。プラセボよりもアパベタロンに割り付けられた患者の方が、肝酵素値の上昇(35[2.9%] vs. 11[0.9%])などの理由で試験薬を中止した患者が多かった(114[9.4%] vs. 69[5.7%])。

結論と関連性:急性冠症候群の最近の発症、2型糖尿病、および低HDLコレステロール値を有する患者において、選択的ブロモドメインおよびエクストラターミナル蛋白質阻害剤であるアパベタロンを標準治療に追加しても、主要な心血管有害事象のリスクは有意に減少しなかった。

試験の登録:ClinicalTrials.gov Identifier: NCT02586155。

引用文献

Effect of Apabetalone Added to Standard Therapy on Major Adverse Cardiovascular Events in Patients With Recent Acute Coronary Syndrome and Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial
Kausik K Ray et al. PMID: 32219359 PMCID: PMC7101505 DOI: 10.1001/jama.2020.3308
JAMA. 2020 Apr 28;323(16):1565-1573. doi: 10.1001/jama.2020.3308.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32219359/

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