心不全(HFpEF)における病院外での心不全エピソードの悪化が死亡リスクに影響するかもしれない(PARAGON-HFの事後解析; JACC 2021)

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心不全における入院予防の重要性

心不全は疾患名ではなく、心筋梗塞や心臓弁膜症、心筋炎などの心臓のさまざまな病気や高血圧などが原因となり、引き起こされる状態、つまり症候群のことです。心不全では心臓のポンプ機能(全身に血液を送り出す機能)がうまく働かず、全身の血液の循環が滞ってしまいます。超高齢社会を背景に、高齢者の心不全が増えてきています。

治療により改善が認められる患者アウトカムのうち、重要となるのは死亡や心血管疾患の発生抑制ですが、心不全の増悪を繰り返すことで死亡リスクが増加することから、心不全による入院を抑制することも重要となります。特に病院外における心不全増悪を防ぐことが重要です。

サクビトリル/バルサルタンは心機能が低下した心不全(HFrEF)患者に対する心血管イベントの発生抑制効果が示されています。一方で、心機能が保たれた心不全(HFpEF)患者に対しては、対照群との差が認められなかったものの、心不全による入院に対しては、一貫した効果が示されています。

そこで今回は、HFpEF患者を対象にサクビトリル/バルサルタンとバルサルタンの効果を検証したPARAGON-HF試験の事後解析結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jchf.2021.01.014のCentral Illustrationより引用

884件の初回悪化性HFイベントのうち、66件(7.5%)がHFによる緊急受診でした。悪化したHFイベントの初発が緊急受診だった患者は、最初のHFイベントが入院だった患者と比べて、年齢、併存疾患、ベースラインのN-terminal prohormone of B-type Natriuretic peptide、Meta-Analysis Global Group in Chronic Heart Failureのリスクスコアが同程度でした(すべての比較でp>0.05)。

治療環境にかかわらず、HF悪化の初発を経験した患者は、HF悪化を経験しなかった患者に比べて、その後の死亡率の高さが示されました(HF入院:19.2人/100患者・年、95%信頼区間[CI]16.9~21.8、HF緊急受診:10.1人/100患者・年、95%CI 5.4~18.7、死亡率:4.0人/100患者・年、95%CI 3.6~4.4)。

HF悪化の初発を経験した患者
(vs. HF悪化を経験しなかった患者)
HF入院19.2人/100患者・年
(95%信頼区間[CI]16.9~21.8)
HF緊急受診10.1人/100患者・年
(95%CI 5.4~18.7)
死亡率4.0人/100患者・年
(95%CI 3.6~4.4)

HFによる緊急受診を複合エンドポイントに含めると、合計95件のイベントが追加され、イベントの発生に必要な試験期間が短縮されたと考察できます。
事前に設定した複合エンドポイントにHFによる緊急受診者数を加えることで、バルサルタンと比較してサキュビトリル/バルサルタンの治療効果が強化されました(率比 0.86、95%CI 0.75~0.99、p=0.040)。

コメント

心不全(HF)による緊急受診は、急性心不全であると捉えられます。一方、単に入院とする場合は、慢性心不全により、症状が徐々に悪化した場合であると考えられます。今回の試験結果によれば、HF悪化の初発を経験した患者は、HF悪化を経験しなかった患者に比べて、その後の死亡率の高さが示されました。つまり、急性心不全を経験すると死亡リスクが高くなると考えられます。

ただし、事後解析ですので、あくまでも仮説生成的な結果です。また試験によっては、入院の基準が定められていないことも多いため、非盲検の場合にバイアスが入り込みやすくなってしまいます。

心不全におけるアウトカムとして、入院は重要な項目の1つではありますが、試験デザインや患者背景を含めて、慎重に吟味する必要があります。

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✅まとめ✅ HF悪化の初発を経験した患者は、HF悪化を経験しなかった患者に比べて、その後の死亡率が高かった

根拠となった試験の抄録

目的:本研究では、駆出率維持型心不全(HFpEF)を対象とした大規模な国際共同治験において、心不全(HF)の緊急受診の頻度と予後への影響を評価することを目的とした。

試験の背景:駆出率(EF)が低下したHFでは、入院せずに済む悪化したHFのエピソードが一般的であり、予後的にも重要である。

方法:PARAGON-HF(Prospective Comparison of ARNI with ARB Global Outcomes in HF with Preserved Ejection Fraction)では、HFpEF(45%以上)の患者4,796例を、サキュビトリル/バルサルタンとバルサルタンの治療にランダム割り付けし、HFの総入院数と心血管死を主要複合エンドポイントとした。
静脈内利尿剤治療を必要とする緊急の外来患者を前向きに収集し、盲検化された委員会が裁定した。事前に設定した心血管死とHFイベントの悪化(HFの入院と緊急のHF受診を含む)の複合エンドポイントに対する試験治療の効果と、HFイベントの種類がその後の死亡率に及ぼす影響を調べた。

結果:884件の初回悪化性HFイベントのうち、66件(7.5%)がHFによる緊急受診であった。悪化したHFイベントの初発が緊急受診だった患者は、最初のHFイベントが入院だった患者と比べて、年齢、併存疾患、ベースラインのN-terminal prohormone of B-type Natriuretic peptide、Meta-Analysis Global Group in Chronic Heart Failureのリスクスコアが同程度であった(すべての比較でp>0.05)。
治療環境にかかわらず、HF悪化の初発を経験した患者は、HF悪化を経験しなかった患者に比べて、その後の死亡率が高かった(HF入院:19.2人/100患者・年、95%信頼区間[CI]16.9~21.8、HF緊急受診:10.1人/100患者・年、95%CI 5.4~18.7、死亡率:4.0人/100患者・年、95%CI 3.6~4.4)。
HFによる緊急受診を複合エンドポイントに含めると、合計95件のイベントが追加され、イベントの発生に必要な試験期間が短縮されたと考えられる。事前に設定した複合エンドポイントにHFによる緊急受診者数を加えることで、バルサルタンと比較してサキュビトリル/バルサルタンの治療効果が強化された(率比 0.86、95%CI 0.75~0.99、p=0.040)。

結論:HFpEFでは、HFによる入院と同様に、外来で治療されたHFの悪化イベントは予後的に重要である。PARAGON-HFでは、これらのイベントを複合的な主要評価項目に含めることで、バルサルタンと比較したサキュビトリル/バルサルタンの有効性が強調された。
Prospective Comparison of ARNI with ARB Global Outcomes in HF with Preserved Ejection Fraction [PARAGON-HF]; ClinicalTrials.gov.: NCT01920711

引用文献

Worsening Heart Failure Episodes Outside a Hospital Setting in Heart Failure With Preserved Ejection Fraction: The PARAGON-HF Trial | JACC: Heart Failure
Muthiah Vaduganathan et al. PMID: 33839075 DOI: 10.1016/j.jchf.2021.01.014
JACC Heart Fail. 2021 May;9(5):374-382. doi: 10.1016/j.jchf.2021.01.014. Epub 2021 Apr 7.
— 続きを読む www.jacc.org/doi/10.1016/j.jchf.2021.01.014

引用記事

【駆出率の保たれた心不全(HFpEF)患者におけるアンギオテンシン/ネプリライシン阻害薬の効果はどのくらいですか?】

【心不全(HFpEF)患者の腎アウトカムに対するサキュビトリル/バルサルタンの効果はどのくらいですか?】

【STEMI後の心不全患者におけるサキュビトリル/バルサルタン vs. ラミプリル、どちらが優れていますか?】

【心不全HFpEFに対するRAAS拮抗薬の効果はどのくらいですか?】

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