2型糖尿病と冠動脈疾患を有する患者の全死亡率に対するβ遮断薬の効果はどのくらいですか?(事後解析; Diabetes Obes Metab. 2017)

medication pills isolated on yellow background 02_循環器系
Photo by Anna Shvets on Pexels.com

糖尿病患者におけるβ遮断薬の有効性はリスクを上回るのか?

現在のガイドラインでは、冠動脈疾患(CHD)患者にβ遮断薬を使用することが推奨されています。しかし、心筋梗塞の既往のない安定したCHD患者や左室駆出率の低下した心不全患者において、生存率の向上を裏付ける証拠はありません。また、β遮断薬には低血糖や体重増加のリスクがあることから、糖尿病とCHDを有する患者ではβ遮断薬のデメリットがメリットを上回る可能性があるとされています。

とはいえ、どのような併存疾患を有する糖尿病患者で利益が最大化するのかは不明です。そこで今回は、心筋梗塞及び左室駆出率低下心不全(HFrEF)の既往がある場合とない場合におけるβ遮断薬の効果を検証した試験結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

心筋梗塞/左室駆出率低下心不全(HFrEF)の既往がある場合とない場合の安定したCHDを有する2型糖尿病患者2,244例を対象とした本試験結果によれば、心筋梗塞/HFrEF患者の全死亡率は、β遮断薬投与群が非投与群に比べて有意に低かったが、心筋梗塞/HFrEFを発症していない患者の全死亡率には有意な差は認められませんでした。

β遮断薬投与患者全死亡率の調整後ハザード比(95%CI)
心筋梗塞/HFrEF患者0.60(0.37〜0.98)、P=0.04
心筋梗塞/HFrEFを有していない患者0.91(0.76〜1.32)、P=0.64

心筋梗塞/HFrEF患者のうち、CHDに対する集中的な内科的治療のみを受けた患者の全死亡率は、β遮断薬を服用している患者の方が、服用していない患者よりも有意に低いことが示されました(調整後HR 0.45、95%CI 0.23〜0.88、P = 0.02)。しかし、CHDに対する早期再灌流療法を受けた患者の死亡率は、β遮断薬による影響が認められなかった(調整後HR 0.81、95%CI 0.40〜1.65、P = 0.57)。

心筋梗塞/HFrEFを有さない患者の主要な心血管イベントのリスクは、β遮断薬治療を受けている者と受けていない者の間で有意な差はみられませんでした。

コメント

糖尿病患者におけるβ遮断薬使用は、低血糖症状をマスクしたり、体重を増加させる等を引き起こすことが知られています。一方で、冠動脈疾患を有する患者においては、β遮断薬の有益性が示されています。したがって、冠動脈疾患を有する糖尿病患者におけるβ遮断薬のリスクベネフィットを評価する必要があります。

さて、今回の試験結果によれば、心筋梗塞/HFrEF患者の全死亡率は、β遮断薬投与群が非投与群に比べて有意に低いことが明らかになりました。一方、心筋梗塞/HFrEFを発症していない患者の全死亡率には有意な差は認められませんでした。

つまり、心機能が低下している冠動脈疾患を有する糖尿病患者においては、β遮断薬を使用したほうが良いかもしれません。ただし、本試験は事後解析であることから、あくまでも仮説生成的な結果です。他の試験結果も参照したほうが良いと考えます。

photo of gray cat looking up against black background

✅まとめ✅ 糖尿病とCHDを有する患者において、β遮断薬の使用は、心筋梗塞/HFrEFを有する患者の全死亡率を低下させるのに有効であったが、心筋梗塞/HFrEFを有しない患者には有効ではなかった。

根拠となった論文の抄録

目的:糖尿病と冠動脈心疾患(CHD)を有する患者において、β遮断薬の使用が死亡率と主要心血管系イベントの発生率に影響を与えるかどうかを評価する。

材料と方法:Bypass Angioplasty Revascularization Investigation 2 Diabetes試験のデータを用いて、心筋梗塞/左室駆出率低下心不全(HFrEF)の既往がある場合とない場合の安定したCHDを有する2型糖尿病患者2,244例を対象にCox比例ハザード解析を行い、全死亡に対するβ遮断薬の影響を評価した。

結果:心筋梗塞/HFrEF患者の全死亡率は、β遮断薬投与群が非投与群に比べて有意に低かったが(調整後ハザード比[HR] 0.60、95%信頼区間[CI] 0.37〜0.98、P=0.04)、心筋梗塞/HFrEFを発症していない患者の全死亡率には有意な差はなかった(調整後HR 0.91、95%CI 0.76〜1.32、P=0.64)。
心筋梗塞/HFrEF患者のうち、CHDに対する集中的な内科的治療のみを受けた患者の全死亡率は、β遮断薬を服用している患者の方が、服用していない患者よりも有意に低かった(調整後HR 0.45、95%CI 0.23〜0.88、P = 0.02)。しかし、CHDに対する早期再灌流療法を受けた患者の死亡率は、β遮断薬を服用している患者の方が有意に低いわけではなかった(調整後HR 0.81、95%CI 0.40〜1.65、P = 0.57)。
心筋梗塞/HFrEFを有さない患者の主要な心血管イベントのリスクは、β遮断薬治療を受けている者と受けていない者の間で有意な差はなかった。

結論:糖尿病とCHDを有する患者において、β遮断薬の使用は、心筋梗塞/HFrEFを有する患者の全死亡率を低下させるのに有効であったが、心筋梗塞/HFrEFを有しない患者には有効ではなかった。

引用文献

Effects of β-blockers on all-cause mortality in patients with type 2 diabetes and coronary heart disease
Tetsuro Tsujimoto et al.
Diabetes Obes Metab. 2017 Jun;19(6):800-808. doi: 10.1111/dom.12878. Epub 2017 Feb 17.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28094466/

関連記事

【冠動脈疾患を有する2型糖尿病患者における心血管アウトカムに対するメトホルミンあるいはグリピジドの効果はどのくらいですか?】

【糖尿病における貧血は心血管疾患および全死亡の危険因子となりますか?】

【2型糖尿病患者における心血管イベント予防のためのSGLT2阻害剤およびGLP1アゴニストの効果はメトホルミン投与しなくても得られますか?】

コメント

タイトルとURLをコピーしました