PCI後のSAPTはアスピリンよりクロピドグレルを選択した方が良い?(Open-RCT; HOST-EXAM試験; Lancet 2021)

black and white people bar men 02_循環器系
Photo by Gratisography on Pexels.com
この記事は約7分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

PCI後の血栓予防戦略はどのように行うのか?

虚血性心疾患により冠動脈に虚血が生じた場合、経皮的冠動脈ステント留置術(PCI)が治療選択肢となります。PCI実施後には血栓リスクが増加することから、抗血小板薬2剤療法(DAPT)が行われます。DAPTの実施期間については議論の分かれるところではありますが、概ね6〜12ヵ月であり、その後はDAPTのうち1つを継続する抗血小板薬単剤療法(SAPT)を生涯行います。

しかし、SAPTにおいて、どの薬剤を選択すれば良いのかについては結論が得られていません。

そこで今回は、アスピリンとクロピドグレルの単剤療法の有効性と安全性を直接比較した医師主導の非盲検RCT、HOST-EXAM試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

本試験では、2014年3月26日から2018年5月29日の間に、5,530例の患者が登録されました。

5,438例(98.3%)の患者を、クロピドグレル群(2,710例[49.8%])またはアスピリン群(2,728例[50.2%])にランダム割り付けされました。

主要評価項目の確認は、5,338例(98.2%)で完了し、24ヵ月間の追跡調査においてクロピドグレル群で152例(5.7%)、アスピリン群で207例(7.7%)に発生しました。

主要評価項目
(全死亡、非致死的MI、脳卒中、ACSによる再入院、BARC出血タイプ3以上)
クロピドグレル群5.7%(152/2,710例)
アスピリン群7.7%(207/2,728例)

☆ハザード比 0.73、95%CI 0.59~0.90、p=0.0035

☆ARR 2.0%、NNT 50

コメント

本試験の対象は、薬剤溶出性ステント(DES)による経皮的冠動脈形成術(PCI)後6~18ヵ月間、臨床イベントを起こさずに二重抗血小板療法(DAPT)を維持した患者です。

SAPTとして、アスピリン100mgとクロピドグレル75mgを比較したところ、24ヵ月の間に発生した主要評価項目は、クロピドグレル群で152例(5.7%)、アスピリン群で207例(7.7%)だったことから、ハザード比 0.73(95%CI 0.59~0.90)とクロピドグレルがアスピリンよりも有意に優れていました。

ただし主要評価項目は、全死亡、非致死性心筋梗塞、脳卒中、急性冠症候群による再入院、BARC(Bleeding Academic Research Consortium)出血タイプ3以上の複合です。どの項目が群間差に寄与したのかについて抄録からだけでは不明です。特に本試験は非盲検ですので、再入院で群間差が認められたのかについて注意する必要があります。また米国心臓病学会(ACC.21)によれば、CYP2C19遺伝子多型については検証してないとのことですので、試験の限界としては、非盲検、複合アウトカム、ソフトアウトカム、患者背景における未知の交絡の残存が考えられます。

とはいえ、医師主導の直接比較試験であり、臨床上、非常に重要かつ貴重な研究結果です。24ヵ月以降の延長試験であるHOST-EXAM extend studyを実施中とのことですので、続報に期待したい。

food people woman summer

✅まとめ✅ DESを用いたPCI後の慢性維持期間におけるクロピドグレル(75mg)単剤療法は、アスピリン(100mg)単剤療法と比較して、全死亡、非致死性心筋梗塞、脳卒中、急性冠症候群による再入院、BARC出血タイプ3以上の複合リスクを有意に低下させた

根拠となった試験の抄録

背景:冠動脈ステント留置術を受けた患者における慢性維持期間中の最適な抗血小板単剤療法は不明である。我々は、この集団におけるアスピリンとクロピドグレルの単剤療法の有効性と安全性を直接比較することを目的とした。

方法:韓国の37の研究施設で、医師主導の前向きランダム化非盲検多施設試験を行った。対象は20歳以上で、薬剤溶出性ステント(DES)による経皮的冠動脈形成術後6~18ヵ月間、臨床イベントを起こさずに二重抗血小板療法を維持した患者とした。虚血性および大出血性合併症のある患者は除外した。
患者は、クロピドグレル75mgを1日1回投与する単剤治療薬と、アスピリン100mgを1日1回投与する単剤治療薬を24ヵ月間、ランダムに割り付けた(1:1)
主要評価項目は、全死亡、非致死性心筋梗塞、脳卒中、急性冠症候群による再入院、BARC(Bleeding Academic Research Consortium)出血タイプ3以上の複合とした(intention-to-treat集団)。本試験はClinicalTrials.gov, NCT02044250に登録されている。

調査結果:2014年3月26日から2018年5月29日の間に、5,530例の患者を登録した。5,438例(98.3%)の患者を、クロピドグレル群(2,710例[49.8%])またはアスピリン群(2,728例[50.2%])にランダムに割り付けた。
主要評価項目の確認は、5,338例(98.2%)で完了し、24ヵ月間の追跡調査においてクロピドグレル群で152例(5.7%)、アスピリン群で207例(7.7%)に発生した(ハザード比 0.73[95%CI 0.59~0.90]、p=0.0035)。

解釈:DESを用いた経皮的冠動脈インターベンション後の慢性維持期間におけるクロピドグレル単剤療法は、アスピリン単剤療法と比較して、全死亡、非致死性心筋梗塞、脳卒中、急性冠症候群による再入院、BARC出血タイプ3以上の複合リスクを有意に低下させた。
経皮的冠動脈インターベンション後に無期限の抗血小板単独療法を必要とする患者において、クロピドグレル単独療法はアスピリン単独療法よりも将来の有害な臨床イベントの予防に優れていた。

引用文献

Aspirin versus clopidogrel for chronic maintenance monotherapy after percutaneous coronary intervention (HOST-EXAM): an investigator-initiated, prospective, randomised, open-label, multicentre trial – The Lancet
Bon-Kwon Koo et al. PMID: 34010616 DOI: 10.1016/S0140-6736(21)01063-1
Lancet. 2021 May 14;S0140-6736(21)01063-1. doi: 10.1016/S0140-6736(21)01063-1. Online ahead of print.
— 続きを読む www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)01063-1/fulltext

関連記事

【PCI後の虚血性アウトカムに及ぼす遺伝子型を考慮した経口P2Y12阻害薬選択の効果はどのくらいですか?】

【PCI後のACS患者においてチカグレロルとクロピドグレルどちらが良さそうですか?】

【PCI後の冠動脈疾患患者におけるクロピドグレル治療にはPPIを併用した方が良いですか?】

コメント

タイトルとURLをコピーしました