【Up To Date for SGLT2阻害薬】SGLT2阻害薬の安全性比較(ナラティブレビュー; 最終更新年月:2021年5月)

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糖尿病治療には心血管イベントのリスクを増加させない薬剤が求められている?

Type 2 Diabetes - 90% of People with Diabetes have Type 2

米国では新規の抗糖尿病薬の承認申請の際に心血管の安全性評価の実施を求めています。抗糖尿病薬の一つであるナトリウム・グルコース共輸送体2(Sodium Glucose co-Transporter 2, SGLT2)阻害薬は、比較的新しい薬剤クラスであり、糖尿病患者における血糖降下作用だけでなく、一部の薬剤では、心血管イベントを抑制することが報告されています。

2021年現在、日本では6種類のSGLT2阻害薬が上市されています。しかし、心血管の安全性評価を実施した薬剤は限られており、各薬剤の安全性データの集積に差があります。

そこで今回、SGLT2阻害薬の安全性データについて、特に心血管イベントについて検証した試験結果を中心に比較表を作成しました。

SGLT2阻害薬の比較表

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SGLT2阻害薬について、これまでに心血管の安全性試験を実施しているのは、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エルツグリフロジン(日本未承認)です。

特にダパグリフロジンについては、2型糖尿病患者だけでなく、慢性腎臓病(CKD)や心不全(HFrEF)患者を対象にした試験も実施しており、プラセボに対する非劣性だけでなく優越性も認められています。

一方、カナグリフロジンについては、心血管イベントのリスク増加は示されていませんが、下肢切断リスクの可能性が報告されています。ただし、FDAは下肢切断リスクについて、添付文書の黒枠警告を撤回しています。これは市販後調査の結果、下肢切断リスクが大きくないと判断されたためですが、メタ解析の結果では依然としてカナグリフロジンによる下肢切断リスクの増加が示されています。さらに、この下肢切断リスクについて、カナグリフロジン以外のSGLT2阻害薬では認められていません。一方、300万人以上のリアルワールドデータによれば、SGLT2阻害薬による切断リスク増加は認められず、危険因子として下肢動脈閉塞症(PAD)の存在が示されています。

日本の添付文書上で、SGLT2阻害薬間での安全性に大きな差は示されていないような印象です。

とはいえ、血糖降下作用に差がなく、薬価についても大きな差がないため、より安全に使用できる薬剤を選択した方が良いと考えます。

追加情報:米国における抗糖尿病薬の承認申請ガイダインスとその背景

2008年に発表された米国のガイダンスは、ロシグリタゾン(日本未発売)の投与によって心筋梗塞や心血管死亡が増加するという報告が米国で社会的な問題となり、批判の矢面に立たされた米食品医薬品局(FDA)が急ごしらえしたものでした。同ガイダンスに沿って行われた大規模なランダム化比較試験(CVOT)から、一部のSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬で心血管リスクの有意低下という想定外のエビデンスが報告されましたが、幸か不幸か心血管安全性で問題となる薬剤は見いだされていません。CVOTの実施には莫大な費用が掛かる上、ロシグリタゾンの心血管リスク上昇についても後に否定されたため、ガイダンスの改訂が議論されていました。

FDAは2021年3月9日、新規糖尿病治療薬を対象とした心血管安全性評価ガイダンスの改訂案を発表しました。現行の動脈硬化性心血管疾患のリスク評価に特化したものから、有害事象の幅広い評価を目的としたものになっています。

ガイダンス案では、これまでのように全ての新規抗糖尿病薬に対して、ランダム化比較試験による一律的な虚血性心血管イベントのリスク評価を求めていません。その代わりに、第3相試験において少なくとも4,000人・年の規模で被験薬に暴露され、その期間も1500人は1年以上、500人は2年以上であることを求めています。また、糖尿病患者は細小血管症や心血管疾患など多様な疾患を合併していたり高齢者も多いことから、第3相試験に登録する患者は多様な背景因子を反映させることを求めています。具体例としては、ステージ3〜4のCKD患者を500人以上、心血管疾患既往者を600人以上、65歳以上の高齢者を600人以上、これらの背景因子を少なくとも1つ有する患者を1,200人以上などとしています。さらに、これまで通り動脈硬化性心血管疾患については正確に追跡可能なイベント収集を求めた他、開発段階で判明したリスクに対する必要イベント数の増加といった適切な対応、新たな安全性データの収集が必要な場合は第3相試験に進む前に規制当局とコンタクトすること、臨床試験における独立した安全性評価組織を作ることなどを求めています。

こちらのガイダンス案については現在、パブリックオピニオンを求めており、それを踏まえて新しいガイダンスが正式発表される見込みです。しかし、それまでは現行のガイダンスに従うことになります。また新しいガイダンスが施行されるまでの移行期間も考慮すると、実際に施行されるのは3〜5年後になるのではないかと個人的に予想しています。

一方、日本では、このようなCVOTは求められていません。抗糖尿病薬であれば、安全性に懸念がなく、血糖値やHbA1cの低下作用がプラセボよりも優れていれば承認されます。

糖尿病患者において、糖尿病自体が心血管イベントのリスク因子であることは疑いようのない事実です。糖尿病の治療目標は、健康な人と変わらない生活をおくることですので、そのためにも血糖コントロールだけでなく、心血管イベントの発生抑制など、長期にわたる治療戦略が求められます。したがって、心血管イベントを低下させる薬剤があるのであれば、これを選択しない理由はありません。

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