β3刺激薬ミラベグロン使用による心血管リスクはどのくらいですか?(ナラティブレビュー; 最終更新2021年5月)

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ミラベグロンによる心血管リスクはどの程度なのか?

β3刺激薬であるミラベグロン(ベタニス®️)の添付文書では、禁忌として「重篤な心疾患を有する患者」が設定されています。これは国内臨床試験で脈拍数の増加が認められたため、症状悪化の可能性が否定できないことからのようです。

ベタニス®️錠 添付文書より引用

しかし、この「重篤な心疾患」の定義は曖昧であり、心拍数増加以外にどのような心血管に関連するイベントを引き起こすかについては充分に検討されていません。

そこで今回は、ミラベグロン使用に関連する心血管イベント発生を検証したいくつかの試験結果をご紹介します。

文献情報

※下部の関連記事についても合わせてご参照ください。

論文1:メタ解析 過活動膀胱患者13,396例、論文13件の統合結果(2018年)

解析対象となったのは、ミラベグロン(25mg/50mg)または比較対象の抗ムスカリン薬(ソリフェナシン2.5mg/5mg/10mg、トルテロジン徐放4mg)を単剤で1回以上投与された患者、またはプラセボを投与された患者13,396例でした。本研究では、血圧の変化とCV有害事象に着目し解析されました。

ベースラインの心血管(CV)リスクファクターは、その後のCV有害事象に不均衡な影響を及ぼしていました。これらの有害事象の頻度は、過活動膀胱治療薬(0.4%~1.5%)とプラセボ(0.9%)で同程度でした。血圧のベースラインからの変化は過活動膀胱治療薬とプラセボで同等であり、CV有害事象のリスク増加をもたらさなかった。多変量解析では、ベースラインのCVリスクファクター(不整脈歴、冠動脈疾患歴、脳卒中・一過性脳虚血発作歴)は、本試験におけるその後のCV有害事象と有意に関連していたが、過活動膀胱治療薬は関連していなかった。

論文2:MILAI II試験 過活動膀胱患者647例、52週間にわたってミラベグロンを追加投与した結果(2019年)

患者647例のうち、570例(88.1%)が女性で、平均年齢 65歳でした。ベースライン時のCV既往歴と試験期間中のCV関連の併用薬の使用は、各群間でバランスが取れていました。

全般的な薬剤使用に関連するCV有害事象の発生率は8.1%以下、薬剤使用関連の有害事象(TEAE)の発生率は6.2%以下でした。最も多かったTEAEは、心電図のT波振幅の減少、心電図のQT延長、心室性期外収縮でした。全体として、治療に関連している可能性のある36件のCV系のTEAEが報告されましたが、その発生率は各群とも同程度でした。ベースライン後の最悪のバイタルサインと心電図については、時期と治療群のいずれにおいても関連性は認められませんでした。

論文3:MATCH試験の事後解析 日本人及び韓国人(男性のみ)過活動膀胱患者566例、12週間にわたってミラベグロンを追加投与した結果(2021年)

心血管系に関する治療上の緊急有害事象は患者6/566例から報告されましたが、治療に関連した重篤な治療上の緊急有害事象は1件のみでした(タムスロシン+プラセボ群の不安定狭心症)。

タムスロシン+プラセボ群では高血圧(2例)および血圧上昇(1例)が報告されましたが、タムスロシン+ミラベグロン群では血圧に関連した治療上の緊急有害事象はありませんでした。血圧にはベースラインからの臨床的に意味のある変化はなく、脈拍数の変化も小さかったとのこと(タムスロシン+ミラベグロン群で+1.2bpm)。高齢患者では、正常範囲内ではあるが、タムスロシン+プラセボよりもタムスロシン+ミラベグロンの方が脈拍数の増加が多く認められました

論文4:第4相PLUS試験 過活動膀胱患者706例、4週間のタムスロシン投与後に12週間にわたってミラベグロンを投与した結果(2021年)

安全性解析セットには、タムスロシン+ミラベグロン352例とタムスロシン+プラセボ354例が含まれました。全体的なTEAEの頻度はタムスロシン+プラセボの方が高かったが、薬物関連のTEAEの発生率はタムスロシン+ミラベグロンの方が高買ったようです。

ほとんどのTEAEの重症度は軽度または中等度でした。薬剤関連の重篤なTEAEは3例(タムスロシン+ミラベグロン群2例:脳梗塞を伴う急性心筋梗塞および弁膜症タムスロシン+プラセボ群1例:ラクナ梗塞)に認められました。

高血圧、頭痛、鼻咽頭炎が主なTEAEでした。特別な関心を持つTEAEはほとんど報告されませんでした。最も多かったのは尿閉で、タムスロシン+ミラベグロン群2例がカテーテル挿入を必要としたようです(いずれも投与中止には至らなかった)。血圧や脈拍に大きな変化はなく、心電図のパラメータも両群で同様でした。

コメント

いずれの試験も、やや試験期間が短い印象です。したがって、より長期の試験における心血管安全性試験の実施が求められると考えられます。現時点において、少なくとも52週間(1年)のミラベグロン使用においては、心血管イベントのリスク増加は、プラセボと比較して認められないようです。血圧や脈拍の継続的なモニタリング、そして併用禁忌薬に注意すれば、そこまでリスクが増加することは考えにくい印象です。ただし、同種同効薬であるビベグロン(ベオーバ®️)は、相互作用が少なく、重篤な心疾患を有する患者への使用制限がありません。さらに薬価も数円程度の差ですので、ミラベグロンを使用する意義は少ないように考えられます。

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✅まとめ✅ ミラベグロン使用による心血管イベントのリスク増加はなさそう。

引用文献

  1. White WB et al. Cardiovascular safety of mirabegron: analysis of an integrated clinical trial database of patients with overactive bladder syndrome. J Am Soc Hypertens. 2018 Nov;12(11):768-778.e1. doi: 10.1016/j.jash.2018.08.001. Epub 2018 Aug 10. PMID: 30181042.
  2. Katoh Tet al. Cardiovascular safety of antimuscarinic add-on therapy in patients with overactive bladder who had a suboptimal response to mirabegron monotherapy: A post hoc analysis from the Japanese MILAI II study. Low Urin Tract Symptoms. 2020 Jan;12(1):68-80. doi: 10.1111/luts.12286. Epub 2019 Sep 30. PMID: 31571403; PMCID: PMC7004007.
  3. Katoh T et al. Cardiovascular safety of mirabegron add-on therapy to tamsulosin for the treatment of overactive bladder in men with lower urinary tract symptoms: A post hoc analysis from the MATCH study. Low Urin Tract Symptoms. 2021 Jan;13(1):98-107. doi: 10.1111/luts.12339. Epub 2020 Sep 25. PMID: 32975024; PMCID: PMC7821249.
  4. Herschorn S et al. Mirabegron Vs Placebo Add-on Therapy in Men With Overactive Bladder Symptoms Receiving Tamsulosin for Underlying Benign Prostatic Hyperplasia: A Safety Analysis From the Randomized, Phase 4 PLUS Study. Urology. 2021 Jan;147:235-242. doi: 10.1016/j.urology.2020.09.040. Epub 2020 Oct 10. PMID: 33045287.
  5. Nitti VW et al. Mirabegron for the treatment of overactive bladder: a prespecified pooled efficacy analysis and pooled safety analysis of three randomised, double-blind, placebo-controlled, phase III studies. Int J Clin Pract. 2013 Jul;67(7):619-32. doi: 10.1111/ijcp.12194. Epub 2013 May 21. PMID: 23692526; PMCID: PMC3752932.
  6. Tadrous M et al. Association of Mirabegron With the Risk of Arrhythmia in Adult Patients 66 Years or Older-A Population-Based Cohort Study. JAMA Intern Med. 2019 Jul 15;179(10):1436–9. doi: 10.1001/jamainternmed.2019.2011. Epub ahead of print. PMID: 31305875; PMCID: PMC6632155.
  7. ベタニス®️錠 25mg, 50mg医薬品添付文書
    https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2590014F1021_1_12/

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