がん患者に対するエリスロポエチンまたはダルベポエチン使用の安全性はどのくらいですか?

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欧米では癌患者において化学療法に伴う貧血に対しESAが使用されます

欧米におけるESAの適応は、腎性貧血に加え、(固形)癌患者の化学療法又は放射線療法における貧血があります。一方、日本においては、エリスロポエチンが腫瘍進展又は局所再発のリスクが増加する可能性があることから、癌患者への使用は適応外(しかし禁忌とはなっていない)です。またネスプ®️(ダルベポエチン アルファ)の添付文書には、以下のような記載があります。

  1. がん化学療法又は放射線療法による貧血患者に赤血球造血刺激因子製剤を投与することにより生存期間の短縮が認められたとの報告がある。
  2. 放射線療法による貧血患者に赤血球造血刺激因子製剤を投与することにより、腫瘍進展又は局所再発のリスクが増加したとの報告がある。
  3. プラセボを投与されたがん化学療法による貧血患者に比べて赤血球造血刺激因子製剤の治療を受けた患者で血栓塞栓症の発現頻度が高いことが臨床試験にて示されたとの報告がある。
  4. がん化学療法又は放射線療法を受けていないがんに伴う貧血患者に赤血球造血刺激因子製剤を投与した臨床試験で、プラセボを投与した患者に比べて死亡率が高いことが示されたとの報告がある。

実際のリスクはどの程度なのか?この疑問について答えらしき研究結果がありましたので、ご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

2012年のコクランレビューの結果によれば、癌患者における貧血の予防または治療に対するESAの使用により、赤血球輸血の必要性を減少させた一方で、血栓塞栓イベントおよび死亡リスクを増加させました。

ESA治療によりQoLを改善する可能性が示唆されるエビデンスもありましたが、確定的ではありませんでした。ESAが腫瘍コントロールに影響を及ぼすかどうか、またどのように影響を及ぼすかは不明のままです。

ここからは推測となりますが、癌患者かつ血栓塞栓イベントリスクの高い患者においては、ESAを使用しない方が良いのかもしれません。しかし、輸血回数の減少により予後が改善する報告もあるため、一概にESAを癌患者に使用しない方が良いとは結論付けられないと考えます。ここから先は、エビデンスを踏まえつつ個別化治療が求められると捉えています。

どのような患者でESA使用を考慮しても良いのか、エビデンス集積が待たれます。

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✅まとめ✅ ESAは赤血球輸血の必要性を減少させるが、血栓塞栓イベントおよび死亡リスクを増加させる。しかしESAが生活の質および腫瘍の進行に及ぼす影響については不明であり、より多くのデータが必要である

根拠となった論文の抄録

背景:癌および癌治療に伴う貧血は、悪性疾患の治療において重要な臨床的要因である。治療法としては、組換えヒト赤血球造血刺激剤(ESA)や赤血球輸血がある。

目的:癌患者における貧血の予防または治療に対するESAの効果を評価する。

検索方法:これは2004年に最初に発表されたコクランレビューの更新である。Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、MEDLINE、EMBASEなどのデータベースを検索した。検索期間は、最初のレビューは1985年1月1日から2001年12月12日まで、最初の更新は2002年1月1日から2005年4月4日まで、そして今回の更新は2011年11月までとした。また、その分野の専門家や製薬会社にもコンタクトを取った。

選定基準:抗がん剤治療を受けている癌患者と受けていない癌患者の貧血管理に関するランダム化比較試験で、ESAの使用(必要に応じて輸血も併用)を比較したもの。

データ収集および分析:複数のレビュー著者が試験の質を評価し、データを抽出した。1人のレビュー執筆者が品質評価とデータ抽出を行い、2人目のレビュー執筆者が正確性をチェックした。

主な結果:今回のシステマティックレビューの更新には、20,102人が参加した試験91件が含まれている。
■ 赤血球輸血の相対リスクを有意に低下させた(リスク比(RR)0.65、95%信頼区間(CI)0.62~0.68、試験70件、n=16,093)。
■ ESA群の参加者は対照群に比べて平均で1単位の輸血量が少なかった(平均差(MD)-0.98、95%CI -1.17 ~ -0.78、試験19件、n=4,715)。
■ 血液学的反応*は、ESAを受けた参加者でより頻繁に観察された(RR 3.93、95%CI 3.10~3.71、試験31件、n=6,413)。
  *筆者注釈:血小板反応、赤血球反応及び好中球反応のいずれか
■ QOL(Quality of Life:生活の質)を改善する可能性があるという示唆的な証拠があった。
有効試験期間中の死亡率を増加させるという強い証拠があり(ハザード比(HR)1.17、95%CI 1.06~1.29、試験70件、n=15,935)、ESAが全生存期間を減少させるといういくつかの証拠があった(HR 1.05、95%CI 1.00~1.11、試験78試験、n=19,003)。
血栓塞栓性合併症のリスク比は、対照群と比較してESAを投与された患者で増加した(RR 1.52、95%CI 1.34~1.74;試験57試験、n=15,498)。
高血圧リスク(固定効果モデル RR 1.30、95%CI 1.08~1.56;ランダム効果モデル RR 1.12、95%CI 0.94~1.33、試験31件、n=7,228)および血小板減少・出血(RR 1.21、95%CI 1.04~1.42、試験21試験、n=4,507)も増加する可能性がある。
腫瘍反応に対する効果を支持する証拠は不充分であった(固定効果 RR 1.02、95%CI 0.98~1.06、試験15件、n=5,012)。

著者らの結論:ESAは赤血球輸血の必要性を減少させるが、血栓塞栓イベントおよび死亡リスクを増加させる。ESAがQoLを改善する可能性が示唆される証拠がある。ESAが腫瘍制御に影響を及ぼすかどうか、またどのように影響を及ぼすかは不明のままである。
死亡および血栓塞栓性イベントのリスクの増加は、各患者の臨床状況および嗜好を考慮に入れた上で、ESA治療の潜在的な利点とのバランスをとるべきである。
これらの薬剤が生活の質および腫瘍の進行に及ぼす影響については、より多くのデータが必要である。
ESAの血栓形成への影響および腫瘍増殖への潜在的な影響の細胞・分子メカニズムと経路を明らかにするためには、さらなる研究が必要である。

引用文献

Erythropoietin or darbepoetin for patients with cancer
Thomy Tonia et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2012 Dec 12;12:CD003407. doi: 10.1002/14651858.CD003407.pub5.
PMID: 23235597 DOI: 10.1002/14651858.CD003407.pub5

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