2型糖尿病患者におけるインスリン治療は心血管イベントや死亡リスクに影響しますか?(Diabetes Res Clin Pract. 2021; RCTのSR&MA)

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インスリン治療により心血管イベントや死亡リスクが増加する?

糖尿病患者における血糖コントロールにおいて、血糖低下作用の強いスルホニルウレア(SU)剤やインスリンは、他のクラス薬剤と比較して低血糖リスクが高く、心血管イベントや死亡リスクとの関連性が報告されています。

インスリン製剤は、食事摂取タイミングに合わせて投与するボーラスインスリンと、食事に関係なく投与する基礎インスリンに大別されます。血糖降下作用としてはボーラスインスリンの方が強いため、前述のリスク増加は、ボーラスインスリンの方が高い可能性があります。しかし、インスリン製剤別のリスク評価については充分に検証されていません。

今回ご紹介するのは、基礎インスリンと心血管イベント、死亡リスクとの関連性を検証したメタ解析の研究結果です。

研究結果から明らかになったことは?

合計で2,351件の文献が同定され、26研究(患者 24,348例)が含まれました。
ほとんどの研究(69%)でインスリン グラルギンが評価され、インスリンとGLP-1アナログとの比較は57%、メトホルミンとの併用療法は77%で評価されていました。

インスリンは、全死亡率(RR 0.99、95%CI 0.92~1.06)、心血管死亡率(RR 1.01、95%CI 0.91~1.13)、心筋梗塞(RR 1.02、95%CI 0.92~1.15)、または脳卒中(RR 0.87、95%CI 0.68~1.12)の増加とは関連していませんでした。一方、インスリン治療は重症低血糖リスクを増加させました(RR 2.98、95%CI 2.47〜3.61)。

リスク比(95%CI)
全死亡0.99(0.92~1.06)
心血管死亡1.01(0.91〜1.13)
心筋梗塞1.02(0.92〜1.15)
脳卒中0.87(0.68〜1.12)
重症低血糖2.98(2.47〜3.61)
基礎インスリン使用とアウトカム発生リスク

基礎インスリン使用による心血管イベントや死亡リスクの増加は認められませんでした。一方、重症低血糖リスクは明らかに増加していました。これはインスリン製剤の特徴として当然の結果であると捉えています。

GLP-1受容体作動薬と比較し、基礎インスリンでは、心血管イベントの増加は認められないようです。ただし、基礎インスリンは血糖値の乱高下を引き起こしにくいため、心血管イベントへの影響は少ないと考えられます。より血糖値の乱高下を引き起こしやすいボーラスインスリン使用による各アウトカム発生リスクとの関連性について今後、検証する必要があると考えます。

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✅まとめ✅ 2型糖尿病患者における基礎インスリン治療は、心血管イベントや死亡リスクを増加させなかった

根拠となった論文の抄録

目的:2型糖尿病患者におけるインスリン治療に伴う全死亡、心血管死亡、急性心筋梗塞、脳卒中のリスクを評価する。

方法:ランダム化臨床試験(RCT)のメタアナリシスを伴うシステマティックレビューを実施した。EMBASE、Cochrane、PubMedデータベースを検索し、2型糖尿病患者における死亡率または心血管イベントを報告し、基礎インスリン治療と任意の治療を比較したRCTを調べた。データはMantel-Haenzel 相対リスク(RR)で要約した。治療法間の相対リスクの差が20%であることを考慮して、結果の信頼性を評価するために試験逐次分析(TSA)が使用された。PROSPEROレジストリ:CRD42018087336。

結果:合計で2,351件の文献が同定され、26研究(患者 24,348例)が含まれた。ほとんどの研究でインスリン グラルギンが評価され(69%)、インスリンとGLP-1アナログとの比較が行われ(57%)、メトホルミンとの併用療法が評価された(77%)。

インスリンは、全死亡率(RR 0.99、95%信頼区間(CI)0.92~1.06)、心血管死亡率(RR 1.01、95%CI 0.91~1.13)、心筋梗塞(RR 1.02、95%CI 0.92~1.15)、または脳卒中(RR 0.87、95%CI 0.68~1.12)の増加とは関連していなかった。一方、インスリン治療は重症低血糖リスクを増加させた(RR 2.98、95%CI 2.47〜3.61)。

すべての解析で統計的な不均一性は低かった。TSAはこれらの所見を確認した:最適なサンプルサイズ(心筋梗塞)、無益境界(全死因死亡率、心血管死亡率、脳卒中)、害境界(低血糖)に到達した。

結論:2 型糖尿病患者の基礎インスリンによる治療は、心血管イベントや死亡のリスクを増加させない。低血糖リスクが増加しているにもかかわらず、これらの知見は、インスリンが2型糖尿病の治療における安全な選択肢であることを補強している。

引用文献

Efficacy and Safety of Imeglimin Monotherapy Versus Placebo in Japanese Patients With Type 2 Diabetes (TIMES 1): A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled, Parallel-Group, Multicenter Phase 3 Trial – PubMed
Diabetes Res Clin Pract. 2021 Feb 4;173:108688. PMID: 33549676 DOI: 10.1016/j.diabres.2021.108688. Online ahead of print.
—続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33574125/

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