【批判的吟味】COVID-19患者への早期の予防的抗凝固療法は有効ですか?

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COVID-19により凝固系が亢進する?

COVID-19では、ウイルス感染により障害された血管内皮細胞から凝固第VIII因子とvon Willebrand factor(VWF)が放出され、凝固系や血小板凝集が活性化されます。これはCOVID-19の患者において、第VIII因子とVWFの血中レベル増加の報告に基づいており(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32435823/)、COVID-19に対する予防的な抗凝固療法により、COVID-19患者の転機にどのような影響を及ぼすのかについて期待が寄せられています。

今回は、米国で行われたCOVID-19による死亡率と予防的抗凝固療法との関係を検証したコホート研究の結果をご紹介します。

論文の概要

PECOTSSL

P:入院前14日以内にSARS-CoV-2検査で陽性が確認された患者

E:抗凝固療法
  ワーファリン、静脈内ヘパリン、低分子ヘパリン(エノキサパリン,フォンダパリン,ダルテパリン)、直接経口抗凝固薬(アピキサバン、リバロキサバン、ダビガトラン)
  →ヘパリンあるいはエノキサパリンが99%以上

C:抗凝固療法なし

O:primary — 入院後 30 日以内の死亡(院内死亡と退院後死亡)
  secondary — 入院中の死亡率と治療的抗凝固療法の開始

T:予後、米国の全国的コホート研究

S:病院、医療センター、地域の外来診療所など、全国で1200以上のポイントオブケアからなる米国退役軍人省の電子カルテデータ、追跡期間は入院日からアウトカム発生までの最も早い日(最長で30日、2020年8月30日)

S:外挿性がある程度高い可能性

L:入院前30日以内に抗凝固療法を受けていた患者が除外されている、退役軍人であるため一般化が困難なケースがある

批判的吟味

追跡期間は? 
→入院日からアウトカム発生までの最も早い日(最長で30日、2020年8月30日)

脱落率は? 
→該当なし。2020年3月1日から7月31日までに入院した全患者4,297例が対象となり、結果の解析も4,297例で実施されています。

調整された交絡因子は? 
→傾向スコアマッチングでは、年齢、人種、地域、性別、急性心筋梗塞、喘息、がん、脳血管疾患、CKD、COPD、冠動脈疾患、認知症、糖尿病、心不全、高血圧、肝疾患、末梢動脈疾患、治療薬、飲酒、喫煙、BMI、酸素療法、脈拍、収縮期血圧、体温(temperature)、ALT、AST、eGFR、血糖、ヘモグロビン、血小板、白血球、リンパ球、総コレステロール、HDL、中性脂肪
→治療群間の標準化平均差の絶対値を算出し、0.2以下をバランスが取れているとみなされたようです。

結果は?
→COVID-19で入院した患者4,297例のうち、3,627例(84.4%)が入院後24時間以内に予防的な抗凝固療法を受けていた。入院後30日以内に622例が死亡したが、そのうち513例が予防的抗凝固療法を受けていた。死亡のほとんど(510/622例、82%)は入院中に発生した。
→治療の逆確率加重分析を用いたところ、30日目の累積死亡率は、予防的抗凝固療法を受けた患者で14.3%(95%CI 13.1%~15.5%)、受けなかった患者で18.7%(15.1%~22.9%)であった。
→予防的抗凝固療法を受けていない患者と比較して、予防的抗凝固療法を受けた患者では30日死亡リスクが27%減少した(ハザード比 0.73、95%CI 0.66~0.81)。
→予防的抗凝固療法を受けても、輸血を必要とする出血のリスクの増加とは関連しなかった(ハザード比 0.87、0.71~1.05)。

30日死亡

Outcome発生Outcome発生せず
抗凝固療法あり5133,1143,627
抗凝固療法なし109 561 670
6223,6754,297

選択基準

組入基準

2020年3月1日から7月31日までの間に入院し、入院前14日以内にSARS-CoV-2検査で陽性が確認されたすべての患者

除外基準

介護歴がなく(2020年3月1日以前の2年間に少なくとも1回の外来または入院患者と定義)、入院前30日以内に抗凝固療法を受けていた患者(抗凝固療法の使用が蔓延していることの影響を緩和するため)

入院から24時間以内に赤血球輸血を受けた患者(活動性出血または重度の貧血は抗凝固療法の禁忌である可能性があるため)

入院から24時間以内に何らかの転帰を経験した患者

根拠となった論文の抄録

https://pharmacyebmrozero.com/2021/02/16/covid-19予防のための予防的抗凝固療法の早期開始は有/https://pharmacyebmrozero.com/2021/02/16/covid-19予防のための予防的抗凝固療法の早期開始は有/

引用文献

Early initiation of prophylactic anticoagulation for prevention of coronavirus disease 2019 mortality in patients admitted to hospital in the United States: cohort study – PubMed
Early initiation of prophylactic anticoagulation compared with no anticoagulation among patients admitted to hospital with covid-19 was associated with a decreased risk of 30 day mortality and no increased risk of serious bleeding events. These findings provide strong real world evidence to support …
—続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33574135/

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